第9話 三人のチートスキル



テーブルの上に召喚されたおにぎり六個。

なぜ、コンビニのおにぎりが召喚できたのか。たぶん、召喚されるまでコンビニにいたからだろう。

しかも、俺が召喚したコンビニのおにぎりは、俺が購入しようとしていたものだ。


「エビマヨに、ツナマヨ、明太マヨに昆布とサケ、そして、チキンライスか。

レジに持っていったものばかりだな……」


一つ一つおにぎりを手に取って、確認していると、片山と水澤さんが近づいてきた。


「高坂君! すごい! すごい召喚魔法だよ!」

「ホントにすげぇ! 高坂、お前チートじゃないか? この能力はよぉ!」


二人とも、もろ手を挙げて称賛してくれている。

確かに、異世界で地球の物が召喚できるとなると、かなり便利だよな。


「高坂君、他にも召喚できるのかい?」

「そうですね、どんなものでもできると思います」

「それなら……『ちょい待ち!』」


水澤さんが、召喚してもらおうと名前を言う前に片山が待ったをかけた。

何か、召喚してもらいたいものでもあるのか?


「なあ、今思ったんだが……」

「何だい? 片山君。

何か、召喚してほしい物でもあるのかい?」

「高坂の召喚魔法で、召喚魔石を召喚したらどうかと……」

「!! そうだよね! 召喚魔石を召喚すれば、元の世界に帰れるよね!

高坂君、どうかな?」


確かに、俺の召喚魔法は神の召喚魔法。

説明にもあったように、ありとあらゆるものを召喚できるはず。

ならば、俺たちを元の世界に戻すことができる『召喚魔石』を召喚すれば、お金もかからず元の世界に帰れるはずだ。


クッ、なぜもっと早く気づかなかったのか……。


俺は、テーブルの上のおにぎりを水澤さんに渡すと、手をかざして呪文を唱える。

心に思うは、召喚魔石だ。


【召喚!】


召喚魔法陣がテーブルの上に現れるものの、何も召喚されずにステータスボードだけが出現する。


「え?」

「ど、どうしたんだい?」

「何も現れないぞ?」


どうやらこのステータスボード、俺にしか見えないようだ。


「ちょっと待ってください……」

「ん?」

「……」


俺は、現れたステータスボードを見ると何か文字だけが書かれている。

これは、ログボードとでもいうのかな。


「……知識に無いものは、召喚することができません?」

「ん? どういうことだい、高坂君」

「いえ、どうやら召喚できなかった理由がここに出ているんです」

「ここに?」


水澤さんも片山も、俺の指差す先を見ているが、何も見えていないようだ。

ステータスボードのようなものが出現して、注意書きがあることを教える。


「……と言うことは、高坂君の知識が無いものは召喚できないってことなのか」

「いいアイディアだと思ったが、そううまくはいかないか……」


二人とも、少しがっかりしている。

でも、俺が知識として学べば、召喚できるってことなのか。

ならば明日にでも魔石屋に行って、召喚魔石を見せてもらえれば召喚できるか?



「それにしても、高坂君の召喚魔法はすごいねぇ」

「それに比べて、俺のスキルは……」

「片山君のスキルは、どんなものなんだい?」


水澤さんは、少し落ち込む片山に何かアドバイスをしようとしているのか?

どんなスキルでも、必ずやり方次第でチートになりそうだからな……。


「俺のスキルは、完全地図ってやつです。

自分のいる空間の地図を、詳しく表示することができるんです」

「ということは、隠し部屋なんかも?」

「あ~、表示できるみたいです。

後、敵を表示することもできるみたいです」


それ、十分チートスキルじゃないのか?

自身がいる空間を、完全に把握することができる能力。

しかも、敵も表示できるとなれば死角が無くなるってことでは?


「片山君、十分チート能力じゃないか!

敵が表示できるなんて、死角が無くなるってことじゃないか」

「……そうか、そう言われれば……」

「二人ともすごいよね~。

それに比べて、私のスキルは平凡かな~」

「水澤さんは、どんなスキルなんです?」


カードマスターのスキルか。

どんなスキルだろうか?


「私のスキルは、カードドロップだよ。

一日八回の、制限付きなんだよね……」

「一日八回、カードを引くことができるんですか?」

「うん、そう」


一日八回ということは、三時間に一回か。

カードは、アイテムだったり魔法だったり助っ人だったりするらしい。


まるで、カードゲームのアニメをリアルにしたようなスキルだ。


「水澤さん、それって十分チートですよ?」

「え? ホントかい?」

「考えてもみてくださいよ。

いざという時のために、いつもカードを引いて溜めておけば、いざという時はカード使いたい放題じゃないですか!」

「そ、そうか! そういう考えも……あ、ダメだ……」


スキルの説明を見たようで、ガッカリする水澤さん。

何か、制限があったのか?


「どうしたんです?」

「カードの枚数制限があるようなんだよ。

所持できるカードは、三十枚までらしい。

それ以上は、引くこともできないみたいだ……」

「そんな制限があるんですね……」


でも、カードを使えば再びカードを引くことができるんじゃないか?

と考えたが、アイテムカードならまだいいけど、助っ人カードだと呼び出しにくいか。


三人で、それぞれのスキルの使い方を考えていると、ドアがノックされる。

そして、声が掛けられた。


『よろしいでしょうか?』

「はい、どうぞ」

『失礼します』


そう返事をされて、ドアが開く。

するとそこには、執事服を着た男が一人立って一礼してきた。


「みなさま、もうすぐご夕食の時間です。

食堂にご案内するために、お迎えにあがりました」

「もうそんな時間なんですね。

それじゃあ行こうか、片山君、高坂君」

「はい」

「ですね」


俺たちは、三人連れ立って執事さんについて行く。

どんな夕食が出るか、楽しみだ。






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