第8話 召喚魔法を使った



「セシリア隊長!

その方たちが、隊に入る召喚された異世界の方たちですか?」

「あ、テレーゼ!

そうだよ、この六人が新しく加わる異世界人たち。

後で、みんなが揃ったときに紹介しようと思ってたんだよ~」

「それなら、食堂に集まるように言っておきます」

「よろしくね~」


レイピアのような剣を腰に差した女剣士が、玄関から出て来てセシリアと会話する。

そして、俺たちを見て新しく隊に入ることを訪ねた。

二人の会話を聞いていると、俺たちはすでに隊に入ることが決まっていたみたいだな……。


「マリー、ミシェルを呼んできて。

異世界人のみんなを、部屋に案内してもらうから」

「それなら、私がご案内いたしましょう。

セシリア様は、執事長に帰還した旨をお伝えください」

「……分かった。

それじゃあ、マリー、よろしくね」


セシリアとシャーリーの二人は、玄関から屋敷の中に入っていく。

そして、オルブランとレオンの二人は、護衛騎士としてセシリアを追いかけていった。


……別れ際、レオンが三人の女性たちに投げキッスをしたが、隣のオルブランに注意されていた。

護衛騎士として、まじめにやれってことだろうな……。



セシリアたちがいなくなり、玄関にマリーと俺たちだけになる。


「では、皆様の部屋にご案内いたします。

その後、お夕食まで部屋でくつろいでいても構いませんし、食堂へ降りてもらっても構いません。

それからおトイレは、各部屋についていますのでそちらをご利用ください」


そう言って、俺たちを屋敷の中に案内していく。




▽    ▽    ▽




俺たち異世界人に割り当てられた部屋は、二部屋の大部屋で男女に別れていた。

俺は、片山と水澤さんの二人と一緒の部屋になる。


部屋に入り、見渡すとベッドが三つ。

部屋の端に机が三つ並べられていて、椅子も三つあった。

また、三人で使える丸いテーブルもあり、話し合いの時には使えそうだ。


「片山君、高坂君、ベッドはどの位置を選ぶ?」

「俺、真ん中でいいですか?

窓の側がいいんで……」

「じゃあ、高坂君は?」

「それじゃあ、トイレ側の右側を……」

「いいのかい?

夜とか、トイレに起きて物音がうるさくなりそうだけど……」

「大丈夫です」

「じゃあ、私が左端のベッドだね。

でも、荷物といっても何もないんだけどね……」


そうだ、俺たちに荷物はない。

召喚されてから、買い物に行く前にすぐ、ここに連れてこられたので何もない。

それに、町の中も乗っていた馬車の窓から見ただけだ。


着替えすらないんだよな……。

町で購入するにもお金が必要だし、支給してくれるのかもわからないんだよな。


俺は、自分のベッドに腰を下ろすとステータスカードを取り出す。


「ん? 高坂君、どうしたんだい?

ステータスカード何か出して……」

「ああ、自分のスキルを確認しようと思いまして。

異世界物のラノベや漫画、アニメだと、召喚された異世界人たちは必ず、自分のスキルを確認していたみたいなので……」

「確かに! 召喚された人たちは、確認していたね。

私も確認しておこう」

「……俺も確認するか」


俺たちは、それぞれのベッドに腰を下ろしてステータスカードを確認していく。


ステータスカードに記入されているのは、ステータスボードで出たステータスそのまま表示されているらしい。

ということはこういう時、スキルなどの説明があるはずなんだけど……。


俺は、ステータスカードのスキル欄を指で触る。

すると、カードの表示内容が変わった。


「お」

「ん? 何かあった?」

「はい、ステータスカードのスキル欄を指で触ると『おお、変わった!』」


水澤さん、説明する前に自分で試して驚いている。

片山も、水澤さんの真似をして驚いていた。


まあ、とにかく今は、俺のスキルの説明を見ないと。

え~と、俺のスキルは召喚魔法(劣)だったよな……。


というか、(劣)って何だよ!

俺が劣と出ている場所を指で触ると、詳細が表示される。


[劣化版のこと]


……もっと詳しいことは書かれてないのか?

そう思って、召喚魔法の方を指で触ると表示された。


[神の召喚魔法(劣化版)]


……えっと、何これ?

俺の召喚魔法は、神の召喚魔法の劣化版ということか?

ていうか、神の召喚魔法って何だよ!


[神の召喚魔法とは、この世のあらゆるものを召喚できる召喚魔法。

生き物だろうが、珍しい物だろうが、ありとあらゆるものが召喚できる。

ただし、高位の存在を召喚するには神にならないと使えない]


……えっと、この世のありとあらゆるものを召喚できるということは、チートスキルだな。

それも本来は、神が使う召喚魔法みたいだ。

それを俺に与えるにあたり、劣化版にしたってことか?


ありとあらゆるものを召喚できる……。

ありとあらゆるもの……。


「ん~、使ってみれば分かるか」

「ん? 高坂君、どうしたの?」

「いえ、俺のスキルを使ってみようかと……」

「召喚術を?」

「いえ、召喚魔法をです」

「へ?」

「ん?」


水澤さんと片山が、首を傾げている。

頭の上に、?マークが出ているのが見えるようだ。


俺は、ベッドから降りると、部屋のテーブルまで移動して召喚魔法を使おうとする。

手をテーブルの上でかざして、目を瞑り、心の中で呼び出す物を思い浮かべて、召喚と叫んだ。


【召喚!】


すると、テーブルの上に魔法陣が出現して、その魔法陣の上にコンビニのおにぎりが六個出現した。


「何か出た?!」

「こ、こ、こここ、高坂君!!」

「……これが、召喚魔法か。

確かに、何でも呼び出せるみたいだ……」


俺は、テーブルの上に現れたコンビニのおにぎりを見ながら呟く。

召喚魔法を見ていた片山と水澤さんは、テーブルまで近づいて来て、出現したおにぎりを見て驚いていた。







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