第7話 騎士隊隊舎



召喚神殿を出て王城の正門から馬車に乗せられ、俺たちは王都の中を移動している。

セシリア曰く王都はかなり広いそうで、近場に用事がない時はほぼ、馬車での移動になるらしい。


乗合馬車なる、交通手段を使うそうだ。

で、俺たちは騎士団専用の移動馬車を使って移動している。


「それで、俺たちはどこに向かっているんだ?」


乗り心地の悪い馬車に乗せられ、片山は少し機嫌が悪いようだ。

セシリアに目的地を聞いているが、顔の表情が怖い。

だが、セシリアは笑顔で答えてくれる。


「私たちの騎士隊舎に向かっているのよ。

騎士隊の他の隊員に、みんなを紹介しないとね」

「他の隊員?」


セシリアの言う他の隊員とは何か、佐藤さんが聞く。


「騎士隊は、大小、百近くあるけど、構成メンバーは決まっているわ。

まずは、騎士隊の隊長である騎士。

次に、騎士隊長の護衛を務める剣士。

それから、騎士の郎党や一族の若者から選出された従騎士。

後は、槍兵に、弓兵、あと魔術師。

そして、騎士隊の雑務などを担当する従者たちよ」

「へぇ~」

「騎士隊って、結構大所帯なのね……」


シャーリーが説明してくれて、熊谷さんが感心していた。

でも確かに武内さんが言うように、結構人数がいるんだな。


俺の知識だと、騎士隊には戦う騎士や剣士だけが集まっていると考えていた。

まあ、よくよく考えてみれば、騎士や剣士だけで隊が維持できるわけがないんだよな……。


「それじゃあ、シャーリーさんは?」

「私は、セシリアの従姉妹にあたる従騎士です。

セシリアが騎士隊を設立するということで、セシリアのお母様から打診を受けて隊に入ったのです」

「そう! シャーリーには、設立当初から本当にお世話になっているわね~」


佐藤さんが、シャーリーさんのことを聞くと、セシリアの従姉妹で従騎士ということを教えてくれる。

セシリアの母親からの打診か……。


「それなら、御者をしているメイドさんは?」

「マリーのこと?

マリーは、私の専属メイドだったのよ」

「今は、この騎士隊の従者の一人ね」

「へぇ~」


水澤さんが、この馬車の御者をしているメイドさんのことを質問する。

それにしてもメイドさんの名前、初めて聞いたな。


「それで? セシリア隊長の騎士隊には何人いるの?」

「え~と、騎士隊長の私、護衛剣士の二人。従騎士は、シャーリーを入れて四人ね」

「はい。後は、槍兵の二人、弓兵の五人、魔術師の三人。

そして、マリーを入れた従者の八人です」

「……それって、騎士隊としては多いの?」

「いいえ、少ないですね。

一番多い騎士隊は、三百人からいますから」

「さ、三百人?!」

「それ、騎士隊と言えるの?

もう隊じゃなくて、団じゃない、団」


セシリアとシャーリーの説明に、熊谷さんが驚き、武内さんが呆れる。

そしてそこへ、片山が横槍を入れる。


「いや、軍隊で言えば三百人は大隊扱いだ。それも、少ない人数でだったはず。

そして、セシリア騎士隊は俺たちを入れてやっと小隊規模になる」

「……詳しいわね」

「かじった程度の知識だけどな……」


片山が、かじった程度ではあるが知識を披露する。

それに、武内さんが感心したらしい。


でも、ここは異世界で騎士隊の話だ。

地球の軍隊の話ではないから、当てはまるとは思えないけど……。


「まあそれは、地球の軍隊での話だよ片山君。

ここは異世界、この世界にはこの世界のルールがある。

騎士隊の人数も、その一つだろう」

「……確かにそうですね」

「ふ~ん……」


一番の年長者である水澤さんが、片山の意見を訂正する。

店員仲間でもある水澤さんの意見だから、受け入れたってところかな。


「あ、見えてきたよ!」


窓から外を見ていたセシリアが、自分たちの騎士隊舎が見えてきたことを教えてくれる。

俺たちも、馬車にある窓から外を見る。

すると、大きな建物が見えてきた。


あれが、セシリア騎士隊の隊舎か……。




▽    ▽    ▽




隊舎に到着して、馬車から降りると目の前に大きな建物が見える。

だが、少し古いように感じてしまう。

周りにある屋敷と見比べても、古いと言っても過言ではないだろう。


「ようこそ、召喚されし者たち。

ここは、騎士隊の隊舎区画にあるセシリア騎士隊の隊舎だ」

「オルブラン! レオン!」


声をかけてきた方を見ると、二人のイケメン剣士がいた。

いや、一人はイケオジか。


「隊長、彼女たちが新しい隊員ってことか?」

「そうだよ!

こちらから、クマヤ、タケウチ、サトウ、カタヤマ、ミズサワ、コウサカだ」


セシリア隊長に紹介され、一礼して挨拶する。

すると、若いイケメンの金髪剣士が前に出て、熊谷さんたち女性三人の前で挨拶する。

気持ちいいぐらいの、男たちスルーだった。


「初めまして、可愛い女性たち。

俺は、レオン・ステールト。セシリア騎士隊の護衛騎士をしています。

これからは、君たち三人も俺が守りたいがよろしいかな?」

「へ?」

「うっ」

「へぁ?!」


あの笑顔、絶対歯の一部がキランと光ったんじゃないか?

驚く熊谷さんに、気持ち悪いものを見た反応の武内さん。そして、少し赤くなる佐藤さんと、三者三様の反応だった。


セシリア隊長やシャーリーは、レオンの挨拶を気にしていない様子。

おそらく、いつものことなんだろう。

もう一人のイケオジは、ニヤニヤ笑って見ているだけだ。


「あいつのことはほっとけ、いつものことだ。

それよりも、俺はオルブラン・コルレン。セシリア騎士隊で護衛騎士をしている。

よろしくな!」

「よろしく!」

「よろしくお願いします」

「よろしく」


片山から順番に、握手を交わしていく。

イケオジだが、オルブランさんは常識人のようだ。

それに、護衛騎士にしてはあのイケメンとは違って、貫禄があるんだよね……。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る