第6話 ステータス表示



名前 高坂 隆

年齢 17

職種 召喚士

スキル 異世界言語理解

    召喚魔法(劣)



ん? これだけ?

HPとかMPとか、力など細部にわたって表示されないのか?

それに、数字表記もないし……。


以外とシンプルな、ステータス表示だ。


「……あの、これだけですか?」

「ん? 何か、思っていたのと違うってこと?

どんなことが表示されているかは分からないけど、名前、年齢、職種、所持スキルが表示されているでしょ?

後、どこかの組織や団体。例えば、私たちの騎士隊に所属すれば、所属が表示されるし、所持スキルが増えればそれも表示される。

陛下に表彰されて、勲章なんかを授与すれば、賞歴という項目が増えるし、神様から加護や寵愛を表示されることもあるよ」


なるほど、このステータスは増えるってことなのか……。

所持スキルが増えるって言っていたし、後から覚えることもできるのか。


「シャーリー、アレをみんなにあげて」

「分かりました」


そう返事をして、女剣士のシャーリーが何もないはずの空中に手を突っ込んで、カードの束を取り出した。

俺たちはその行動を、驚いて凝視してしまう。


「ん? これは、空間魔法の一つの『アイテムボックス』だよ。

サトウさんも、持っているスキルでしょ?」

「あ、ああ、そういえば……」

「それに、魔法屋でスクロールを購入すれば覚えることもできるし、教えてもらうこともできる。

魔法は基本、後から覚えることが多いんだよ。

最初から持っている魔法は、特殊なものが多いし……」


シャーリーが、カードを俺たちに配っている間に魔法について説明してくれる。

なるほど、魔法屋ね……。


俺たちは、目の前に配られたカードを手に取り、裏表を確認しながら眺める。

白紙のカードだが、何に使うのだろうか?


「今配ったカードを、表示されたステータスボードに重ねてくれるかな?」

「……重ねると、どうなるんですか?」

「そのカードは、魔法のカードでね?

みんなのステータスを、そのカードにコピーするんだ」

「コピー……」


躊躇するみんなをしり目に、俺は自分のステータスボードにカードを重ねる。

すると、カードが一瞬光り、ステータスボードに表示されていたステータスが、カードに表示された。


「おお……」


俺が重ねて何ともなかったことで、他のみんなもカードを重ねる。

俺で、安全確認したのかよ。


みんなのカードが光ったところで、セシリアが説明を続ける。


「ステータスをカードに写し取ったことで、所属という項目が増えているはずだよ。

確認してみて?」

「所属?」

「えっと……」

「あ、ステータスボードじゃなくて、カードの方ね。

魔法のカードだから、表示も最新のものにどんどん変わっていくからね」

「カード……ん?」

「あ、所属の表示が増えてる、けど……」


所属 セシリア騎士隊?

何だ、これ。


「そこに、私の騎士隊の名前が表示されているでしょ?

君たちの衣、食、住、安全は、私の騎士隊が保障することになるの」

「皆さんが、元の世界に帰れる時まで、私たちが面倒をみますので。

これから、よろしくお願いします」


そう言って、セシリアとシャーリーは座ったまま頭を下げた。

困惑しているのは、俺たちだ。

なぜ、俺たちの身柄が彼女たちの騎士隊に置かれるのか、全く分からない。


「あの、この所属は決定事項なんですか?」

「え? う、うん。……私たちの騎士隊じゃあ、不安かな?」

「いや、不安とかじゃなくて、何故決まっているのか……」


その質問を聞いて、セシリアは気づいたようで説明してくれた。


「あ、そうか。

今回の召喚は、私たちの騎士隊のテコ入れのために行われたからです。

騎士隊設立以来、なかなか成果が上がらないことで私の実家が動いたんです。

それで、今回の異世界人召喚をすることになったの」

「そして、皆様が召喚されました。

ですから、みなさんは隊長の騎士隊が面倒をみることになるのですよ」


テコ入れ?

このメンバーが、テコ入れになるのか?


「な、な」

「ん?」


隣に座っている片山さんが、肘をついてきた。

相談事か?


「どうする? このまま、あいつらの騎士隊でお世話になるのか?」

「ん~」


考えるふりして、他の召喚された人たちを見ると、全員俺の方を見ている。

何? 俺の意見で決めようというの?


「……俺は、騎士隊所属でいいと思うけど」

「何で?」

「まず、俺たちに選択の余地なんてないだろ?

この世界は全く知らない世界だ。ということは、どこに何があるのか。

この世界の法律や物の値段、食事など分からないことだらけだろ?」

「……確かにそうだな」

「そうね、このまま自分たちで、元の世界に帰るために動けるかと言ったら無理ね」

「うん」


セシリアとシャーリーは、俺たちの話し合いを黙って見ている。

どういう結論を出すかを、待っているんだろう。


「ならば、騎士団に所属しておいて、いろいろ学んで帰るためのお金を稼ぐしかないだろう?」

「お金?」

「元の世界に帰るためには、召喚魔石が必要だって聞いただろ?

それは、魔石屋で売っていてかなりの値段だってことだ。

騎士団の年間予算の半分と言っていたし……」

「そうでした……」

「じゃあ、騎士団に所属していろいろ学びながら、帰るためのお金を稼ぐってことでいい?」

「オッケー」

「うん」


俺たちも、頷いて了承する。

俺たちの意見をまとめた佐藤さんが、セシリアに話して騎士隊所属となった。

セシリアとシャーリーは、安堵したように胸をなでおろした。


でも、救済召喚と言っていたから、元々俺たちに拒否することはできなかったはずなのに、ちゃんと意見を聞いてくれるセシリアは、いい騎士隊の隊長なのかもな。


俺は、手元にあるカードを見ながらニヤニヤしてしまう。

そう、俺は今これから異世界で起きることにワクワクしてしまっていたのだ……。






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