第2話 召喚者たち
「この女の職種は、錬金術士です!」
そう報告が行われると、壁沿いにいるローブを着た男たちが騒ぎ出す。
今までのような、職種を聞いて囁くのとは違いかなり大きな声で騒いでいる。
「錬金術士だと?」
「錬金術士といえば、魔法薬が作れる職種だったよな?!」
「だとしたら、例の薬を作れるのではないか?」
「いやいや、召喚したばかりだ。
そんな、高度な薬を作ることはできない。
育てていかなければ……」
「ならば、お荷物騎士隊などに育てられるのか?」
「ここは、他の騎士隊にも『黙れ!!』」
吹き抜けの部屋、いっぱいに響く怒鳴り声。
二階の、ベランダにいる男が発したようだ。
「これは、セシリア騎士隊の救済召喚である!
ここにいる異世界人たちはすべて、セシリア騎士隊に編入される!」
大きな声で、上から怒鳴る男。
それに納得がいかないのか、壁沿いにいたローブの男の一人が意見した。
「お待ちくださいホグラン様!
錬金術士といえば、魔法薬が作れる唯一の職種です。
アリシア様を、お救いすることができる『黙れ!!!』」
再び意見を遮るように、二階の男が怒鳴った。
それにしても、アリシア様?
ローブの男の言い方から、かなり上の人らしい。
そして、そのアリシア様を救うことができる職種、ね……。
それと俺たちは、セシリア騎士隊に入れられるらしいが、騎士隊?
そういえば、さっきからローブの男たちから聞くお荷物騎士隊って……。
ん~、まだ分からないことが多いな。
「今回の召喚は、アリシア様の子とは関係ない!
何度も言うが、この召喚はセシリア騎士隊の救済召喚である!!」
「……お騒がせして、申し訳ありません」
「続けろ」
ギロリと睨まれ、ローブの男は委縮して謝罪した。
そして、二階の男はローブの女に続けるように言う。
ローブの女は一礼して、最後の召喚者の男の前に移動して詠唱を始める。
ずっと見ていたが、あの詠唱は鑑定の詠唱なのかもしれないな。
ということは、この世界の鑑定は魔法なのか?
「この男の職種は、カードマスターです!」
最後の召喚者の職種が発表されたが、カードマスター?
カードマスターって何だ? どんな職種なんだ?
こういう時こそ、壁際の連中の出番だろう……。
「カードマスター……。
レーマン殿、カードマスターとは何ですか?」
「カードマスターとは、魔物やアイテムなどをカードに封じることで、持ち運びを便利する職種ですな」
「……それだけなのですか?」
「もちろん、それだけではありません。
カードに封じた魔物は、テイムした魔物の様に操ることができるとか。
ただ、カードマスターという職種自体が希少で、あまり情報がありません」
「物知りなレーマン殿でも、分からないことがあるのですか……」
「それはそうですよ。
私も、知らないことは結構あるんですよ」
カードマスターか……。
ん? カードマスターといわれた男の表情がおかしいな。
何か、言いたそうにしているが躊躇している。
職種を告げたローブの女が、二階に向かって一礼すると壁の端に移動する。
そして、上から大声で俺たちに言ってくる。
「召喚された異世界人たちは、そこの扉から隣の部屋へ移動しろ!
召喚の間にいる魔術師たちは、後片付けを!
ではこれにて、セシリア騎士隊の救済召喚を終わる!!」
そう言った後、指を鳴らした。
すると、停止魔術で止められていた男が動き出す。
「かはっ!」
「だ、大丈夫か片山君……」
「ハァ、ハァ、……大丈夫です、水澤さん」
片山という男を支える、水澤という男。
どちらも、コンビニの制服を着ているから仕事仲間か。
俺は気になって二階を見るが、あのホグランという男はもういなかった。
救済召喚という仕事が終わったから、帰ったということか……。
俺が考えていると、右側にある扉が中から開き、一人のメイド服を着た女が現れた。
そして、一礼をして俺たち召喚者に話しかけてくる。
「召喚者の皆様は、こちらの部屋に移動してください。
召喚された理由などを、ご説明いたします」
「……やっと説明してくれるのか」
「片山君……」
「行きましょう、水澤さん」
「ああ……」
まずは、片山と水澤という男が移動し、その二人に続いてポーターの女、次がガンナーと錬金術師の女が移動していき、最後に俺が移動する。
▽ ▽ ▽
メイドの案内で、部屋の中に入るとそこは食堂のようだった。
長い机があり、白いテーブルクロスがかけられていて、十脚以上の椅子が並べられている。
「こちらの椅子に座って、お待ちください。
今、説明してくれるものが来ますので……」
並んでいる椅子に座るように促され、俺たちは部屋に入ってきた順番に座る。
俺たちが座ったことを確認して、メイドは俺たちが入ってきた扉を閉めた。
その後は、その扉の前で立ったままだ。
俺は、椅子に座って部屋の中を見渡す。
テレビで見た、貴族の宮殿の食堂みたいな場所だな。
長いテーブルの真ん中に、花瓶に入った花が飾ってある。
そうやって部屋の中を見渡していると、俺たちの前にある扉が勢いよく開く!
そして、かなり立派な鎧を着た女の騎士が入ってきた。
「遅れてしまってすまない!
何を話そうか、いろいろ考えていたら遅れてしまった!」
「セシリア隊長、落ち着いてください」
女騎士の後に、部屋に入ってきた女剣士が声をかける。
最初が騎士鎧を着ている女で、次は軽鎧を着た女。
どちらも剣は持っていなかったが、姿でそう判断した……。
「セシリア様、シャーリー様、まずはお座りください」
「そ、そうだなマリ―。
シャーリー、座って話をしなければな!」
「そうですね……」
俺たちの後ろにいるメイドが、入ってきた二人に声をかける。
その声を聞いて、入ってきた二人はテーブルをはさんで、俺たちの前にあった椅子に座った。
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