第8話 DAWN 8

美鈴の眼光は鋭さを増した。いつもとは違う声に、その友人は「ハ?」とあっけととられた。そして、その顔から汗が一滴頬を伝って、こぼれ落ちた。


 握る手は、骨がきしむ音が漏れそうに、次第に強さを増す。


「いっ……。」


 友人は、苦痛の表情を全面に浮かび上がらせる。美里は、その姿を見て、いつもとは違う美鈴の様子を感じ取った。

 次の瞬間である。


「コラーッ!」


 と教室の外で怒号が聞こえ、勢いよく教室のドアを開けた。体育教師の、眞島雄二先生である。昭和から語り継がれたその迫力は、今もなお健在である。

「美里―ッ!保健体育のレポートを提出してないだろう!お前だけだからな!なめとんのか!」

「あっ!いっけね!忘れてたー。今すぐ、出しまーす!」

「体育教官室まで来い!」

 とガシャンと扉を閉める。

美里は、美鈴に「おい、どけよ!」と浴びせると、美鈴は振り返って、


「……ご、ごめん……。」

 と美鈴は、弱々しい声で返答した。そして、いつの間にか、美鈴は、その友人の手を離していた。友人も、「んだよぉ……。」と小声で、手首をさすりながら、元の場所に戻ろうとする。「とりま……、飯でも食おうぜ。」と友人たちは、美鈴に興味がなくなったかのように、元の席で、お昼を楽しもうとする。美里は、急いで、体育教官室に行き、その場を跡にした。


……?……。


美鈴は、何が起こっていたのかわからないが、腹痛はなお続いていたため、美鈴も教室を出て、その場を跡にした。


……なんか、一瞬だけ記憶が飛んだ気が……



 美鈴は、思い出していた。記憶が飛んだことを。美鈴は、アレの日と過度なストレスから、気を失いそうになっただけと考えていた。

 しかし、そんな事が学校で何回も起きたらと想像すると、背筋が凍る思いだった。何せ、それは美鈴の憶測であり、記憶が飛ぶ原因がわかってないのだから。不安で一杯である。しかし、美鈴は、母に相談すると、ただでさえ不安の塊が、余計に増幅するようで、想像するだけで、憂鬱な気分になっていた。 

 しかし、自分自身で選んだ道でもあるがゆえ、美鈴自身も何とか、この三年間やり抜こうという決意のもとにいた。


「じゃあ、行ってくる!」


と母に告げて、学校へと向かった。

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