13 和三郎は歌姫の夢を見るか

「質問!

仏様は西からドガチャカと来るわけだけど、そういうことするのは仏様だけ? ほかにそういう事例はない? サンタクロースが集団でドガチャカ来るとか、インドだったらカーリー神の巨像がドガチャカ踊りだすとか。そうだなあ……メキシコ辺りだったら、骸骨集団がドガチャカ来るとか」

「そんなシンドバッドじゃないので神様踊りませんよ。それに骸骨もアルゴ探検隊じゃあるまいし、大体龍の牙がないから……あ」

「なんでそんなに探検隊に詳しいんだよ、さてはヒルヒル、隠れステラ・スターファンだろ」

「う、『スター・ウォーズ』の柳の下の泥鰌的な立ち位置なふりをしつつ、実は70年代SF映画へのオマージュてんこ盛りで、骸骨剣士的立ち位置でロボットゴーレムが登場するんですけど……いやいや、

それよりもメキシコの骸骨ですよ」

「死者の日ディア・デ・ムエルト」

「メキシコ版お盆ですね。この時期に死者が帰ってくるので、いろいろイベントをするんですけど。そのイベントの中に本当に死者が混じっていることが報告されてました」

「ドガチャカはしないんだ」

「町全部総出でドガチャカやってますから。その中に本物が混じってて、直近で亡くなった人を連れて行くというような、そういう例が報告されています」

「ほんとに俺が配属されたのは警視庁の組織なの? 地球防衛団じゃないんだからさ。俺、超能力使えないし」

「祓の神を呼んでる時点で説得力無しです」


ああ、そうだった祓の詞をソラで詠唱しちゃってた。次元の壁を取っ払って、一時的にヒルヒルが神様の権能を使えるようにする。それができてしまったのもあれなんだけど、そもそもなんで俺は祓いの詞を知っていたのか? 警察官としてのリアクションじゃないよな。仏様が人を襲うとか、破魔矢射るのに義肢交換するとか、あとるるーのリンがゴブリンだとか、異常事態てんこもりなのに、意外に対応してしまっている。特別な組織でオカルト現象特化のクレーム係でもしてたのかというくらいの適応ぶりだ。


今だって、目の前の空中に阿弥陀如来が浮かんでいるんだけど、別にそんなに驚いていない。逆に対処方法がなんかないか探ってる。そこで行き着いたのが認識のお話なわけで。しかも発想の根幹が「禁断の惑星」のイドの怪物だよ。伝説巨神の元ネタだよ。カミューラ・ランバンの仇も取っちゃうよ!


「御仏アブダクションってさ、なぜに仏様の姿であるのか? 意味不明の存在だって認識はみんなしてるじゃない。どうも本物の仏様ではないと薄々勘づいている。でも仏様だって認識している。それはなんでだろう? 徳の高い坊さんを狙ってやってくる仏様集団ってことだけどさ、これ逆なんじゃない?

徳が高いと己惚れてる坊さんが、死の間際に変な毒電波出して仏様を生み出してる」

「え? じゃあ自作自演に我々は付き合わされていたと」

「そういう可能性もあるんじゃないかなあと。連れてってほしくって、呼んでるというか生み出しているみたいなさ。坊さんの毒電波だから仏様がやってくる。徳の高いボカロPだったら、初音ミクが葱背負って歌って踊ってマジカルミライになっちゃうとかさ」

「リンちゃん、レンちゃん、ルカ姉さん引き連れてやってくるのかあ。そうかそうか。じゃあ、徳の高いモー娘。ファンは歴代モーニング娘。夢の競演とかもできちゃうのか。大島優子と神二十五!」


ヒルヒルがなんだかとっても嬉しそうに笑っている。ヒルヒルってひょっとして……。


「御仏アブダクションって、日本だと仏教準拠案件だけど、メキシコの死者復活とか、そんな感じで各国バリエーションがあるんじゃないかね。呼びつけたやつの認識を変換してやると、無敵の仏様がか弱い子羊に変わっちゃったりしないかな。

シュタイフのチーキーベア二十五みたいに」

「なぜにシュタイフ?」

「え、可愛いじゃん。チーキーベア」

「もしそうだったとして、呼び出した本人は死んじゃってます。どうやって変換するんですか」

「ああ。そうか。我々も仏様だっていう認識に引きずられちゃってるから、そこを変えなくちゃいけないんだけど……どうしたらいいのかな?」

「くそっ! モー娘。は無理かあっ」

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