【KAC20244】ささくれ占い

属-金閣

第1話 偶然の出会い?

「ここよ」

「おお~凄いわね。さすが今大人気スポット!」


 私は友人の赤竜レッドドラゴンに話題の占いの街に連れて来てもらった。

 占いの街は小規模の街である。周囲には様々な占い師がいたり、館があったりし各所行列が出来ていた。また、占いブームということもあり飲食の出店などが現在は出店したりしていた。


「ハルカ、久しぶりに来たと思ったら占いなんて興味あったの?」

「今はあるの! へ~凄いね、アカちゃん」

「ちょ、その名前で呼ばないでよ。ここでは赤竜レッドドラゴン

「あ、ごめん。でも、ヒーラーでその名前ってどうなの?」

「うっるさい。あんただって、昔漆黒のブラック――」


 そこまで口にしたところで、私は赤竜レッドドラゴンの口を両手で塞いだ。

 私はすぐさま謝罪し手を離した。

 赤竜レッドドラゴンも小さくため息をつき、それ以上昔の事は口にしなかった。


「で、どこも大行列だけどどこ行くの?」

「う~ん。赤竜レッドドラゴンは何か気になる場所ある?」

「いや、私は特に。あんまり占い興味ないし」

「え~麗しき乙女が占い興味ないとかないでしょ。あっちではあんなにモテモテなのにさ」

「ここでリアルな事はタブーでしょ。もう今日付き合わないよ」

「嘘嘘、ごめんって。終わったら討伐クエスト付き合うからさ」


 再び赤竜レッドドラゴンがため息をつく。

 そのまま二人は占い街をとりあえず一周するのだった。


「で、どこにするか決めたのハルカ?」


 私は広場で座りながら腕を組み悩む。

 リアルの占いブームがこっちでも起こっており、どこも行列かつ有名占い師もいたりで料金がどこも高かった。

 こっちのお金は売ってなかったドロップ品を売れば何とか準備はできる。

 だけども、占いの種類が少ないのである。


 ゲーム内なのでリアルネームを使うのは怖い。なので、姓名判断などはほぼない。

 あってもプレイヤーネームでの判断してるくらいだ。

 生年月日を使う占い関係もあるが、それをやりたい訳でもない。

 この世界の定番は、タロットである。


 名前や生年月日も関係なく自身に関して占えるためだ。

 確かにタロット占いも興味がない訳ではない。

 しかし、今私が一番受けたい占いは――。


「手相なんだよね」

「この世界で手相? 無理じゃない?」

「だよね~。はぁ~どっかにあったりしないかな」


 ゲームキャラに手相までは作れない。というか、そこまでやれるものはないだろう。

 この占いの街でも手に関する占いは一切見かけなかった。


 ハルカはやりたい占いがないので、このまま赤竜レッドドラゴンと討伐クエストを受けに戻ろうとした時だった。

 ある裏路地にポツンと座り、占いの看板を出しているのを見つける。

 通り際の一瞬であったが、その看板に手相と書かれていたのを目にし急いで戻るハルカ。

 突然のUターンに赤竜レッドドラゴンも驚き、後を追った。

 一方ハルカはその占いの前で止まり、机に手をつき少し乗り出し気味に問いかるのだった。


「あの! ここ手相見れるんです?」


 突然の来客にそこのベールを被った占い師も驚いたのか、ポカーンとハルカを見つめるのだった。

 そこへ赤竜レッドドラゴンが追いつく。


「おいハルカ、急にどうしたんだよ?」

赤竜レッドドラゴン! 見て見て! 手相占い出来るところだよ」


 赤竜レッドドラゴンはハルカがはしゃぎながら指さす方へ視線を向ける。

 そこには手相と書かれた看板が確かにあった。


「書いてはあるが、本当に出来るとは限らないだろ。しかもこんな誰も来ない場所にいる占い師だぞ」

「うっ……でも、可能性はゼロじゃないでしょ」

「ポジティブだな、ハルカ」


 ハルカは赤竜レッドドラゴンから再び占い師へと視線を戻す。

 占い師をよく見ると女性であった。目の前の机の上に丸い水晶が一つあるだけという質素な占い場だった。


「さ、先ほどは失礼いたしました。突然のお客様に驚いてしまいまして」

「いえいえ。私もテンションが上がってしまって、すいません。それで、ここでは本当に手相が占えるんですか?」

「その、正確には手相ではなくそれに近い『ささくれ占い』をしているんです」

「「『ささくれ占い』?」」


 二人は同時に声を出した。

 その占い師は、アカトンボと名乗りある方法で現実世界の対象者自身が手の甲を写真に収め、それを見ながらささくれ占いをすると述べた。


 ささくれにも意味があるらしい。

 よく聞くのは、ささくれがあると親不孝といわれるである。

 あれに関しては、生活習慣の乱れや栄養の偏り・不足によりささくれはできるもの。

 それを親の言うことを聞かず不摂生な生活や夜更かしをしているということで親不孝と言われているらしい。また家事をしてればささくれはできにくいので、家の手伝いをしてないと見えるのでそう言うともあるらしい。


 アカトンボが行うささくれ占いは、各指にできるささくれから体や精神名を占うというものであった。

 そして、それを行うためのある方法とは最近追加された機能を使うことであった。

 それは仲間にしたモンスターをMRとして現実世界に映し出し写真を撮れる機能である。

 その際に、自身の手を映り込ませ写真を撮る。

 そしてそれをアカトンボに見せながら占いを受けるというものだった。


 手相とは違い、各指のささくれ具合を見るだけなのでものすごく鮮明に映ってなくても大丈夫なのだとか。また、ささくれならば手相のような線ではないため、対象者もこうなっていると話しやすい事から状況が分かるらしい。


「モンスターに関しては私の方からお貸しします。それで写真を撮るだけです」

「なるほど」

「一応注意ですが、部屋を映すとかはやめてください。できるだけ、ベットの上や壁を映しながら撮ってください」

「しっかりとそういうところは注意するんだな」

「当然です。まあ、疑いたくなる気持ちは分かります。やってる場所や、方法が方法ですので。受けるかどうかは、お客様の自由ですので。あ、一応占いに関しての情報は一切他言しないという契約もした上でやりますので」


 その契約はアカトンボ側だけが他者に他言しないというものであった。こちら側には占いをする方法を他言しないという契約のみである。

 料金も周辺の占い師よりも安く提示されていた。


「それじゃ私お願いしたいで!」

「ハルカ!? そんな即決?」

「うん。アカトンボさん、悪い人じゃなさそうだし」

「……ハルカがそういうなら」


 そしてハルカは契約をアカトンボを行った後、モンスターを一時的に借りた。その後、一時的にログアウトし写真を撮って戻って来た。

 ハルカはモンスターを返すと同時に、手の甲が映った写真も見せた。


 アカトンボの前の机を挟みハルカが正面に座る。その後ろに赤竜レッドドラゴンが腕を組み立っていた。

 ハルカが渡した写真は、綺麗な華奢な手と借りたモンスターが写っていた。

 しばらく写真を見た後、アカトンボは写真を机の上に置いた。


「では、占い結果をお伝えします」

「はい!」


 わくわくした表情でハルカが返事をする。

 アカトンボは写真に写る手の部分だけを拡大し、話を始めた。


「ハルカさんには、親指と中指にささくれができかけています。基本的には綺麗な指なので大きく何か問題を抱えている状態ではありません。ですが、少し気にかかる事や迷いが少し見られますね」


 ハルカは真剣な顔でそれを聞き続けた。


「そうですね……嫌なら答えなくていいのですが、兄妹がいらっしゃるのでは?」

「っ! ……はい。います」

「最近、兄妹間で何か言われたり何かあったりしませんでしたか?」


 その問いかけにハルカはハッとした表情をする。


「この親指にあるささくれ具合は、親や兄妹の間で何かある時に出来るものとされています。親に関する場合は、もう少し分かりやすく大きくささくれが出来るのですが、ハルカさんの場合は小さくできかけに近い。なので、兄妹関係ではと思ったのです」


 アカトンボは具体的な事までは分からないと述べる。

 その上で、変に深入りしない方がおススメとアドバイスを告げるのだった。

 そして続けて、中指にできかけのささくれについて話し始めた。


「最近何か学業や仕事などで迷いがありませんか?」

「……はい。凄いですね、ささくれ占い」

「ありがとうございます。詳しい事までは分かりませんが、ささくれ具合から一人で悩む事はおススメしません。このなり方は、よく一人で解決しようとする方や相談が迷惑かもと思っている人によくみられます」


 そしてアカトンボは、重く考え過ぎずに気をするせる相手なら迷惑とも捉えれないとアドバイスを告げるのだった。

 その後、基本的にささくれがないのは栄養面では問題ないし、生活習慣もそこまで悪くないと述べた。


「簡単になりますが、これでささくれ占いは終了です」

「ありがとうございます。その、今日貴方にみてもらえて良かったです」

「それはなによりです」


 ハルカはアカトンボに料金を支払い、その場を後にするのだった。

 その時ハルカの表情は明るく満足した顔をしていた。

 赤竜レッドドラゴンはハルカについていく前に、アカトンボに対し軽く礼をしその場を後にするのだった。

 アカトンボは誰もいなくなかったのを確認すると、大きく机に突っ伏した。

 

「ふはー何とかバレずにやりきったー」


 アカトンボは突っ伏した体を起こし、ベールを脱ぐ。

 そのまま占いの看板などをアイテムボックスにしまい、着替えて大通りに出た。


「(私が出来るのはここまで。あとは、お姉ちゃん次第かな)」


 その後、アカトンボは未読のメッセージの確認する。

 そこに弟からまた面倒なメッセージがあるのに気づき、大きくため息をつき歩いていくのだった。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ――現実世界のとあるカフェにて。

 二人の女性がまったりとした時間を過ごしていた。

 対面に座る二人の間に机があり、そこに占いが特集された雑誌のページが開かれていた。


「で、遥。どうだった占い」

「ん? あー良かったよ。ささくれ占いとか初めてだったし」

「そう。それなら良かった」


 しばらく沈黙が続き、店内の音楽と周囲の話声だけが響く。

 そして遥が少しカフェラテを飲み、口を開く。


「ねえ、アカちゃん。今日泊りに行っていい?」

「っ! 急に何」

「ダメ?」


 遥のお願いに少し吹き出しそうになったアカちゃんこと、赤崎はため息をついた。


「分かったよ」

「やったー。アカちゃんとお泊り会だ! お菓子パーティーしようね」

「今度撮影あるし、夜のお菓子はパス」

「え~ちょっとくらいいいじゃん。一緒に大学生ライフを満喫しようよ~」

「それとこれは違うから無理」

「いいじゃん、ちょっとだけ」

「無理なのもは無理なの」


 そのまま、仲の良い二人の微笑ましいやり取りは続くのだった。

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