ささくれにはこれが一番
明弓ヒロ(AKARI hiro)
ささくれは無理に引っ張ると悪化するのでやめましょう
悪龍が住む洞窟で、悪龍と勇者一行(勇者、剣士、魔法使い)が対峙した。
「悪龍よ、もう人々を苦しめるのはやめろ」
「チョコザイな。お前らなど、わしの無敵のスキルの前ではありんこ同然だ」
悪龍が勇者一行をあざ笑った。
「こんな奴に何を言っても無駄だ。さっさとこいつを斬って、この戦いに終止符を打つ! 俺の目にも止まらぬ居合技『一瞬一閃一斬』を受けて見よ」
剣士が一瞬で間合いをつめて悪龍の懐に飛び込み、必殺の刀を抜こうとした。
「ワシのスキルは無敵だ。裂けよ!」
悪龍がスキル『ささくれ』を発動した。
「うわー!」
剣士の人差し指にささくれが走り、痛みで動きが止まった。その一瞬を逃さず、悪龍の爪が剣士を返り討ちにした。
「次は私よ」
魔法使いが伝説の杖を高く掲げた。
「この世の全ての精霊たちよ。生きとし生けるすべての命たちよ。我が魂を依り代として悪龍を滅ぼしたまえ」
魔法使いが究極魔法『メギドの炎』の呪文を唱え始めた。
「天、地、人、空、海……」
「チョコザイな。わしにそのようなままごとが通じるか。裂けよ!」
悪龍がスキル『ささくれ』を発動した。
「痛ー!」
魔法使いの中指にささくれが走り、呪文の詠唱が途絶えた。その一瞬の隙に、悪龍の口から放たれた地獄の業火が魔法使いを飲み込んだ。
「これで残ったのは勇者、お前ひとりだ。剣も振るえず、呪文も唱えられないお前に勝ち目はないぞ」
悪龍が爪で引き裂き、炎で焼き尽くそうと勇者を睨みつけた。
「悪龍よ。俺はお前を倒しに来たのではない。お前を治しに来たのだ」
「なんだと!」
「お前が『ささくれ』に苦しんでいるのはわかっている。あまりの痛さに、同じ苦しみを皆にも味わせようと逆恨みしていることも」
悪龍の指には痛そうな『ささくれ』ができていた。
「今、俺が治してやる。ちょっとしみるが我慢しろ」
勇者は悪龍の指に『水ばんそうこう』を塗ってやった。
傷みから解放された悪龍は改心し、世界の守護者となったという。
ささくれにはこれが一番 明弓ヒロ(AKARI hiro) @hiro1969
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