『KAC20244』名前はさ、さくれではありません。

シーラ

第1話


学校のカフェにて、ゆっくり席で寛いでいるとヤツが寄ってきた。


「薬指にささくれ出来てる。」


そう指差してきたヤツは、ニヤニヤと笑っている。いつもからかってくるので、心底腹が立つ……と言いたいが。


「コレ、よく効くから塗っておきな。」


ハンドクリームを渡してきた。何だかんだで、ズボラな自分の面倒をみてくれるのは有り難いと思っている。


「……変な匂い。」


「だから効く。塗っておけ。」


大人しく手に塗っていると、ヤツはじっと見てくる。その視線が優しくて。思わず睨み付けてしまう。変な事を考えていそうだ。


「この前の返事をさぁ。さ、くれないか?」


「………あ?」


「ささくれ立っていた私の心を癒してくれるのは、お前だけなんだ。さぁ、さ、くれよ。」


「……馬鹿じゃね?」


「何度でもささ、くれないのような夕日に言うよ。私の気持ち。」


ヤツは両手を広げてアピールしてきた。ここはカフェだぞ。人の好奇の視線が気にならなくのか!やめろや。と言っても聞かないだろう。


ここは他人行儀ですごそう。


「お前をさ。さくれの事が好きなんだ。」


「『さくや』だ。そういう所が嫌なんだよ。」


ヤツはフムと顎に手をやると、ニヤリと笑ってきた。


「脈あり。返事は近いうちにささ、くれそうだ。」


「………勘弁してくれ。」


もう、カフェで寛げなくなった。誰か、どうにかしてくれ。

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