第83話 反乱の首謀者
「よし! ここはパール達とスラ吉に任せて俺達は王城に向かうぞ! シャノン、倒れているローグ達も連れていくから動かしても良い程度の回復を頼む!」
「わかりましたがアルフさん、どうしてローグも一緒に?」
「そこで真の黒幕と決着を付けるためさ。こいつらの証言も必要となるだろう――」
俺の説明にシャノンは理解を示し、ローグ、フォーガス、ラリサの治癒魔法を施した。
とはいえ指示した通り動かしても支障がない程度の回復だ。
奴らは身動が取れないだろう。
まぁ、スラ吉に
あとはガイゼンの《
「……防御だけじゃなく、オレの盾にはこういう使い方もあるのかよ。アルフ、お前さんの発想力にはいつも驚かされるぜ」
「ガイゼンが
俺の褒め言葉に、ガイゼンは「よせやい」と照れている。
面頬の兜越しでどんな表情かわからないけどね。
それから城壁へと板を渡し、俺達はルミリオ王城へと向かった。
「アルフレッド、よくやってくれた! なんとお礼を言って良いのやら……本当にキミ達には感謝の念が尽きない!」
城壁を渡り王城の屋上に辿り着くと、ハンス王子と数名の騎士達が出迎えてくれた。
無事そうだが、しばらく見ないうちに少し痩せたような気がする。
なんでも兵量が尽きてから四日間ほどまともに飲まず食わずだったらしい。
「いえ、俺達は自国民として当然の行動を取ったまでです。もう少し早く駆けつけられれば良かったのですが……」
「そんなことはないさ。寧ろあれほどの暴動を鎮静化させた【集結の絆】に敬意と尊敬の念を抱いている……キミらこそ我が国の誇りだ!」
やたら持ち上げてくれる、ハンス王子。
原作では
それだけでもチームで戦うことを目指す、俺のやり方に間違いがなかったということだ。
「恐縮です殿下。それより負傷と疲労している者がおりましたら、シャノンが回復することが可能です」
「そうか、それは有難いよ。実は父上が最も疲労困憊で衰弱していたんだ……助かるよ」
父上? フレート王か?
ついさっきまでローグと舌戦を繰り広げていたのにな……実は結構な無理をしていたのか。
「わかりました。シャノン、先に向かってくれ」
「はい、アルフさん」
シャノンは騎士の案内で王城へと入って行く。
ハンス王子は俺達の背後で浮遊するローグ達に視線を向けていた。
「……ローグ達を捕らえたのか? しかし、よく勝てたものだ……流石、聖剣グランダーに選ばれし男だね」
「仲間達の協力があったからこそです。私一人では到底及べないバケモノでしょう。ですが、奴が蓄えた力を全て吸収することで、既に脅威は去りました。もうローグはただの
「吸収? ああ、そうか……王城で反乱軍を取り込んでいるスライムだね。私もタニングの都で彼に助けられたからね。しかし、キミらもオルセア神聖国の修行を得て、また強くなったんじゃないか?」
「はい、おかげ様で。難攻不落だった『ラダの塔』を制覇し、【集結の絆】全員が聖武器を手にすることができました」
「おお、それが浮遊する大楯か? キミらを行かせて正解だったな……まぁ積もる話は後にしよう。私もキミ達に立ち会ってもらわねばならないことがある」
そう言うとハンス王子自らが、俺達を王城の中に招き案内してくれた。
長い渡り廊下からドレスを纏った少女が走ってくる。
「アルフレッド様ぁ!」
ティファ王女だ。
思いの外元気なのは、既にシャノンによって回復してもらったからだろう。
「ティファ! 無事で良かった……」
つい呼び捨てで呼んでしまった。
あっ、考えたらちょいやばいかも。
いくら彼女から呼び捨てとタメ口を要求されているとはいえ、もろ兄であるハンス王子の前だからだ。
けどハンス王子は器が大きく、平和そうにニコニコと笑っている。
「……はい。わたくし、ずっと信じておりましたわ。必ず貴方様が助けに来てくださると……本当にありがとうございます」
大きな瞳を潤まして両手を組み歩み寄ってくる、ティファ王女。
その健気な姿に不覚にも心の中で、「かわいい」と思ってしまった。
原作だと憎たらしくアルフレッドを陥れるためだけの舞台装置役だっただけに、今とのギャップが半端ない。
「ティファ、アルフレッドへの感謝はまた後にしよう。今は野暮用を果たさなければならない。父上の状態はどうだい?」
「はい、お兄様。シャノンさんのおかげで大分体調がお戻りになられましたわ」
「良かった……これも本当に【集結の絆】のおかげだ」
こうしてティファとの再会と安否を確認し、俺達は謁見の間へと向かった。
「アルフレッド……反乱軍の鎮圧、実に見事だったぞ。そして其方らは余にとって命の恩人でもある」
室内に入ると、既にフレート王が玉座に腰掛けている。
衰弱していた割には元気そうで顔色も良さそうだった。
謁見の間には一緒に籠城していた騎士や貴族達が立っており、務めを果たしたシャノンもいる。
彼女も久しぶりに《
「ハッ、陛下もご健在で何よりです」
俺は丁寧に会釈し、そのままシャノンに近づく。
「シャノン、ご苦労さま」
「はい、アルフさん。これもマカ達の《
シャノンはにっこりと綺麗な笑顔を向けてくれる。
つい抱き締めたい衝動に駆られてしまう。怒られそうだからしないけど。
フレート王は俺達を温かく見守りながら、「では話を進めよう」と前置きしてきた。
「改めて其方ら【集結の絆】には心から感謝しておる……そこにおるのは、実行犯の指導者ローグとその部下達だな?」
「ハッ。このように行動不能にした上で連れて参りました。こやつらの口から、この度の反乱や事の真相が明らかになればと思いまして……」
「父上、聡明なアルフレッドは我らの意図を察していたようです。アルフレッド、キミが考えている通り、我らは既に城に棲みつく腹黒い鼠に目星を付け捕えている」
「ではハンス王子、あの陛下とローグとのやり取りは、
「その通りだ。反乱軍は王都を占拠するだけで、一行に城攻めをする気配がなかったからね。無血開城を望む口振りといい、きっと内通者が城内に潜伏しているのだろうと察していた。そしてローグから反旗する貴族を特定しようと煽ったのさ」
「無論、まだ疑惑の段階ではあるがな。だが反逆する貴族達を一つに束ね、反乱軍を組織する手腕やこの城の内情や備蓄に詳しい点など考慮すれば的を絞ることができる。極めつけは、ただの冒険者であるローグを将軍の地位に任命できる権限を持つ者など一人しかおらん――奴を連れて参れ!」
フレート王が手を叩くと奥側の扉が開けられ、一人の身形の良い貴族風の男が槍を持った兵士に連れて来られた。
白髪交じりオールバック、彫りの深い顔立ちをした中年男だ。
だが見覚えがある。
いつもフレート王の近くに立っていた重鎮の一人だ。
男はロープで拘束されており、口には口枷が付けられている。
貴族風の中年男は玉座の真下まで誘導されると、兵士達によって強引に跪かされた。
「陛下、その者は?」
俺の問いに、フレート王は「うむ」と首肯する。
「アルフレッドよ、其方なら見かけたことがあるだろう。そ奴は、オディロン・フォン・セディ―ル。公爵にて我が国の宰相である男だ」
やはりそうだったか。
国王の次に権力があるトップの貴族だ。
そんな地位のある男が、この反乱を招いた黒幕だったとは……。
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