第37話 悪役パーティを立ち上げる



「……ティファよ。余もそう思うぞ。しかし国王として私情ばかりを挟むわけにはいかんのだ」


 よく言うぜ、フレート王。

 あんた原作じゃ、アルフレッドに対して散々私情を挟んで嬲っていたじゃねーか。

 まぁ奴もクソ野郎だから自業自得ではあるけどよぉ。


「しかし勇者となれば、ティファが言うように人格は問うべきでしょう。いくら実力があるからとはいえ、一国の王女を娼婦のように扱った者を勇者など……父上、気が触れましたか?」


 良識人であるハンス王子がここぞとばかりに責めて立てる。

 相手が国王だろうと容赦しない。実は最も敵に回しちゃいけない論破王子だ。


「いやいや、だから話を聞いてくれ。余はまだローグに勇者の称号を与えておらん!」


「と言いますと?」


「一つ条件を出したのだ――ローグが聖剣を抜くことができれば勇者として認め、晴れて称号を与えようとな」


 んじゃもう決定してんじゃん。

 そいつ抜いちゃうよ、ガチで。

 結局、主人公補正のデキレースだな。


「なるほど……聖剣に選ばせるというわけですね。ではローグが抜けなかったら、アルフレッドに試練を与える。それでいいですね、父上」


「うむ、ハンスよ。それで良いぞ」


「わたくし、是非ともアルフレッドに我が国の聖剣を手にして頂きたいですわ!」


 無理だと思うけどな……。

 原作じゃ、ローグの奴がチャレンジした際「ギギギギ」っとか効果音こそ発していたけど、最終的に「うんしょ」とあっさり抜いちまった。


 まぁ俺的にはどちらでもいい――てかいらねぇ。

 専用の武器を作ってもらった方がいいや。


 聖武器の試練は、明日の午前中に行われるそうだ。

 その際はフレート王を始めハンス王子やティファ王女、それに騎士団も立ち会うと言う。

 ルミリオ王国を象徴とされる勇者を決める試練からか、何やら大事になったぞ。


 ……俺ぇ、仮に聖剣を抜いたとしても勇者しなくてもいいんだよね?



 城を出た俺達は真っすぐ冒険者ギルドに向う。


「――マカ、ロカ、ミカ。今回はありがとう。キミ達には助けられたよ」


 共に死闘を乗り越え貢献してくれた付与術士エンチャンター達を称えた。


「こちらこそ楽しかったわ、アルフレッド」


「勉強させて頂きました」


「また何かあったら気軽に呼んでよね」


 オリキャラで三つ子の小人妖精リトルフ族である彼女は声を揃え笑顔を向けた。

 しっかり親睦が深められたような気がする。


「こちらこそだ。その際は是非に頼むよ」


 俺も笑みを浮かべると、三人はもじもじと小さな身体をくねらせる。

 何やら「言ってみる?」「言わない?」「言っちゃお?」と囁き合っているようだ。


「どうした? 何か言いたいことがあるのか?」


「……うん、アルフレッド達はパーティ登録しないの?」


「ん? そ、そうだな……人数も揃ってきことだし登録条件は満たせているか」


「でしたら是非に私達も加入させて頂けないでしょうか?」


「え? キミらを?」


「そっだよ! あたしら副業で吟遊詩人バードもやっていてさぁ! アルフレッド達の冒険譚を歌にしたいんだ!」


 そう言うと、三つ子は横に並んで同時に頭を下げて見せる。


「「「お願いします!」」」


 こりゃまた凄いことになったぞ。

 けど願ったり叶ったりだ。


 彼女達が一緒に戦ってくれたら、俺達も全盛期の力が発揮できる。

 いや俺達自身がこれから鍛えていけば、それ以上にもなるだろう。


 チラッと仲間達の顔色を伺う。

 無論みんなが反対するわけがない。

 三つ子らの実力と固有スキルの凄さは身に染みているからだ。


「ああ、こちらこそ頼むよ!」


「「「やったぁ、ありがとう!」」」


 こうして、マカ、ロカ、ミカの三人が仲間に加わった。


「……アルフよぉ。なんだか女子率高くねーか? オレはいいよ、別に……けど俺達の肩身が狭くなるのも事実だ。次に仲間を入れるなら一人くらい男にしねーか?」


 ガイゼンが耳元でボヤいている。

 まぁラノベでもハーレムパーティはテンプレだからな……あくまで主人公側の話だけど。


 それにやっぱ鳥巻八号の原作世界だ。

 何やら先生は男キャラを軽視する節が見られている。


 まず敵の男キャラは主人公ローグにイキリ散らかされて惨死し、特にイケメン系の敵キャラはここぞとばかり顔をボコボコにされていた。

 そしてモブ男キャラ達は主人公様をヨイショする役や驚き役、さらにハーレムを誤魔化すためのアリバイ役とかに割り当てられている。


 鳥巻曰く、「だって、主人公以外の男キャラを活躍させると、ユー達(読者)、『つまらない』とかボヤくだろ? そのニーズに合わせているだけよ(笑)」っと、ラノベ版のあとがきで堂々とぶっちゃけていた。


 別に間違ってないけど言い方よ……。

 なので俺的には、キャラの濃いガイゼンが傍にいてくれて良かったと思っている。



 それからマカ達の報酬を受け取るのと、パーティ登録を兼ねて受付カウンターへと向かう。


「ルシア、シャノンの件ありがとう。おかげで助けられたよ」


「アルフレッドくん達も無事でなによりだよぉ……良かったわ、本当に」


 瞳を潤ませ自分のことのように喜んでくれた。

 なんだか嬉しくてこっちまで泣けてきそうだ。


「まぁね。それと、マカ達の報酬金とあと俺達パーティ登録しにきたんだけど」


「そう! 皆さんで正式なパーティを組まれるのね、賛成よ! 今報酬金も用意するからね!」


 ルシアは声を弾ませ、カウンターに大金の入った袋を乗せた。

 流石、ギルドマスターからの依頼だけあり結構な金額っぽい。

 三人は可愛らしく背伸びしながらそれを受け取っている。


 ちなみに俺達は明日、国王から褒美として報酬金を頂くことになっていた。

 おそらくピコ購入分の借金は全額返済できるだろうと見込んでいる。


「それで、アルフレッドくん。パーティ名はどうするの?」


「え? そういや考えてなかったな……ガイゼン、何かあるか?」


「オレが考えているわけねーだろ。そういうのはアルフの方がセンスあると思う。お前さんが決めてくれ」


「パルも賛成。アルフに任せる」


「わたしもアルフさんなら大丈夫だと信じています」


「ご主人様ならきっと素敵なパーティ名を付けてくれるでしょう」


「アタシは彼氏の趣味に合わせられる女よ。アルフが決めなさい」


 みんな俺に任せてくれるのはいいけど、何気にハードルを上げてくれる。

 しかしピコよ。俺はいつからお前の彼氏なんだ?


 どうしようかな……原作だと、ざまぁされるメンバーだから【腐れ縁】でいいやと思ったが、シズクとピコはヒロイン側だからな。


「……んじゃ【集結の絆】ってのはどう?」


 俺は控えめな口調で提案してみる。


「おっ、いいんじゃねぇか? やっぱセンスいいわ」


「流石アルフ」


「素晴らしいです、アルフさん」


「やっぱりご主人様は素敵です!」


「まっ、アタシが信頼する価値はあるってことかしら」


 思いの外、みんなの反応は良好だ。

 ピコは一番身体が小さい割にやたら上から目線だ。

 マカ、ロカ、ミカの三人も「英雄らしくていいね」と褒めてくれる。


 かくして、俺達のパーティ名は【集結の絆】に決まった――。


「それでは登録しますね。【集結の絆】は白銀シルバークラスからのスタートです」


「シルバー? 真ん中の等級じゃないか……今立ち上げたばかりなのに随分と高くないか?」


「それはアルフレッドくん達にソロとなってからの実績があるからよ。特に今回のクエスト達成でキミの等級は第三級冒険者に上がっているわ。パールちゃんやガイゼンさんも一等級ずつ上がっているわよ」


 ルシアの話だと、今の【集結の絆】所属する冒険者等級は以下の通りとなるらしい。



第二級冒険者

マカ、ロカ、ミカ


第三級冒険者

 アルフレッド、パール


第四級冒険者

 ガイゼン、シャノン


第五級冒険者

 シズク


テイムモンスター

 スラ吉


おまけ

 ピコ



「どうしてアタシがおまけなのよ! 心外よ!」


「ピコちゃんはほら、非戦闘員だから……」


 ルシアは困った表情でフォローする。


「ちゃん呼びはやめて! こう見てもアナタより年上なんだから! 前のクエストじゃ斥候とか伝達で役立っているわ!」


「まぁピコ。お前と俺は一心同体みたいなもんだろ? それでいいじゃないか、なぁ?」


「アルフ……仕方ないわね! 彼氏に免じて許してあげるわ!」


 頬を染めツンデレする妖精族フェアリーピコ。

 けど俺が女子の誰かをフォローすると、決まって他の女子から鋭い視線で睨まれてしまう。

 何故だ?


 そんな時だ。


「あれれ~、そこにいるのはアルフレッドさんじゃないですかぁ?」


 さも嫌味くさい口調で声を掛けてくる青年。

 あいつは……ローグ!?



―――――――――――

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