第34話 ざまぁサレ仲間達の合流



 ローグが密かに飼っていたスライムのスラ吉。


 原作でも奴の支援役サポートとして、低級モンスターとは思えない戦闘力を発揮し「かわいいけど強い」ポジのマスコットキャラとして位置づけられていた。


 ここでは俺に《能力貸与グラント》の無断使用を禁じられたローグが、スキルジャンキーの禁断症状ぶりで強化しまくって誕生させたチート・スライムと化している。


 だからだろうか。

 原作以上のエグイ怪物と成り果てているような気がした。


「ぎゃぁぁぁぁ、来るなぁ! こっちに来るなぁぁぁ!」


「身体が取り込まれるぅ! やめてくれぇぇぇ!」


「助けてぇ、嫌だぁ! 誰かぁ、誰かぁぁぁ!」


 スラ吉は敵陣の中央に乱入すると、ピタりと転がるのを止めた。

 すると身体の至る箇所から青く透明な触手を出現させ、幾つも蠢き枝分かれし始める。

 伸ばされた触手は、魔族兵とモンスター兵達に絡みつき圧倒する力で引き寄せていた。


 そのまま多く敵を一斉に体内へと取り込み、栄養分として吸収していくスラ吉。

 数が増えるほどに、身体が膨張し肥大していく。

 気づけば一帯を覆うほど巨大スライムと化していた。


 確か《吸収ドレイン》という、スラ吉が持つ固有スキルだ。

 だが俺が知る限り、あそこまで多人数を取り込み無双できるスキルじゃなかった筈。そもそも触手なんてなかったし。

 まさかローグが施した《能力貸与グラント》による強化貸与バフか?


 ってことは……。


「シャノン、ローグも……【英傑の聖剣】も駆けつけてくれたのか?」


 俺の問いにシャノンはハンス王子を治癒しながら、どこか冷めた表情で首を横に振るう。


「……まさか。あんな人が来る筈がありません。増援はわたし達だけです」


 あんな人? 

 そうか、どうやらローグと仲違いして彼女とスラ吉だけが駆けつけてくれたようだ。


 だとしたら、余計にスラ吉の異様さが謎だけどな。

 そもそも、なんでこいつがシャノンと一緒なんだ?


 まぁ俺達にとっては救いの神には違いないだろう。

 敵にとっては邪神の襲来だがな。


「そうか助かった――みんな退くぞ! あとはスラ吉に任せるんだ!」


 俺は仲間達に指示する。

 思わぬ増援と狂気ぶりに呆然と見入っていたガイゼン達は、「お、おう」とドン引きしながら撤退し始める。


 仲間達と合流した俺達は、安全な場所へ避難した。


「みんな無事か?」


「ああ問題ねぇ……バフが切れた時は危なかったがな」


 ガイゼンは目立った損傷はないも疲労で激しく息を切らしている。

 それでも絶対に鎧を脱がない盾役タンクだ。


「けど、なんとか持ち堪えられた。シズクのおかげ」


「いえパール様、これもご主人と皆様が奮闘して頂いた成果です」


 控えめに言ってくる、シズク。

 って、あれ?

 この子、姿が変わってないか?


「シズク……お前、ひょっとして成長している?」


 そう、すっかり身長が伸びて原作通りのボン、キュッ、ボンという凄いことになったナイスバディで銀髪の麗しき姿。

 だからだろうか、身に纏う衣装が超ピッチピチのムッチムチで辛うじて大切な部分だけ隠している際どい恰好になっている。


「あら、そうですね。どうりでパール様が小さく見えると思ったら……私、成長したんですね、ウフフ」


 自分のことなのに呑気に微笑んでいる、銀狼系獣人族シルバーウルフの美少女。

 そういや、シズクも天然なところがあった。


 おそらく激戦を終え、レベルアップしたことで原作よりも早く成長できたようだ。

 てか、どうしてパールとガイゼンはスルーなんだ? ガバか?


 にしてもシズクったら豊満なお胸様といい超破壊力のある抜群のスタイル……流石はメインヒロインだ。

 読者達の願望に叶った超絶の美少女である。


「――アルフさん、そちらの銀髪のお綺麗な方はどなたですか?」


 治療を続けるシャノンが訊いてくる。

 何気に声のトーンがどこかキツく棘があるぞ。


「私はシズクと申します。アルフレッド様の忠実な奴隷です」


「奴隷? アルフさんの?」


 あれ、これって不味くね?


「まぁ、まぁ……あくまで建前上はね。ついさっきまで小さい女の子だったんだ。なぁ、ガイゼン、パール!」


「ああ間違いねぇぞ。しょっちゅうアルフのベッドに入り込んでいるけどよぉ」


「奴隷だけど奴隷じゃないというか……ワケありで微妙な関係」


 お、お前ら! いや間違ってねぇけど、言い方!


「ちょっと、アルフに養われているのはシズクだけじゃないんだからね! アタシだって毎晩アルフと一緒に寝ているわ。彼ね、とっても激しくて優しいのよ(寝息と心音が)」


 ピコ、お前まで! そういう言い方すんじゃねぇよ!

 てかシズクといい、お前らが勝手に侵入してくるだけだろーが!


 シャノンは「そうなんですね、へぇ。シャノンです、よろしくお願いします」と微笑み挨拶を交わすも目が笑っていない。


「……アルフさん、後で詳しくご説明してくださいね」


「わ、わかったよ」


 俺に向けて、そう耳打ちしてくるシャノン。

 こりゃ、誤解を解かなきゃ後々ヤバイぞ。


「そうだ、マカ、ロカ、ミカ、三人とも怪我はないのか?」


 俺は最も貢献してくれた三つ子の付与術士エンチャンターを気遣う。


「大丈夫よ」


「皆さん守ってくれました」


「おかげさまでね」


 相変わらず並べ立てるように喋ってくる。

 この小人妖精族リトルフの少女達は、三人で一人前ということは理解した。


「その方達ですね、ギルドマスターから推薦を受けた付与術士エンチャンターさん達は?」


「ああ、そうだけど……シャノン、何故知っている?」


 俺の問いに、シャノンはこれまでの経緯を話てくれた。


 やはりローグの説得に失敗したようだ。

 それで幼馴染を見限る形で【英傑の聖剣】を脱退し、放置されたスラ吉を連れて俺達に会いに来てくれたとか。


「そんな無茶までして、ここに……ありがとう、シャノン」


「いいえ、わたしもアルフさんしか頼れる方はおりませんでしたので……そういえば、その右目はどうされたのです? 先程から紅く光っているように見えますが?」


「え? いや……あまり見ない方がいい」


 やっべぇ……右目は《蠱惑の瞳アルーリングアイ》を埋め込んだままだ。

 もう融合しちまったから二度と取り出すことはできない。

 下手に発動したら、原作通りになっちまうから普段は隠した方がいいかもな。


 俺は羽織っていたマントの一部を切り取り、眼帯代わりとして右目部分に巻きつけた。


「アルフ、負傷してんならシャノンに治してもらった方がいいんじゃないのか?」


「魔力が回復すれば、マカ、ロカ、ミカのバフで、シャノンも《聖女息吹セイントブレス》が復活する」


 ガイゼンとパールも心配してくれる。


「いや、これは負傷じゃないんだ。後で説明するから気にしないでくれ」


 ある意味、呪術系の卑猥な魔道具。

 ハンス王子を助けるためとはいえ、自分の右目を犠牲にしたとかってどうよって感じだ。

 決して褒められたことじゃない。


「う、うう……ここは?」


 おっ、噂をすればだ。

 ハンス王子が目を覚ましたぞ。

 まだ痛々しい負傷部分は残っているが、とりあえず一命は取り留めた。


 流石はシャノン、たとえ能力値アビリティが低下しても回復役ヒーラーとしては有能だ。


 そして、スラ吉のおかげで既に雌雄を決しており、全ての魔族兵とモンスター兵を体内に取り込み吸収し殲滅していた。

 さらにその身体は超巨大化され、タニングの都を覆う勢いまで膨れ上がっている。

 おかげで街中の炎も消えて消火活動の手間が省けたけどな。


 ところで元のサイズに戻るんだろうな、こいつ……。



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