第28話 破滅への序章



 ――あっ! 思い出したぞ!


 この展開、あれだ!

 アルフレッドが最初にざまぁされるやつだよ!


 それはローグを追放して間もなくした頃の話だ――。

 


 アルフレッド率いる【英傑の聖剣】は白金プラチナクラスの勇者パーティとして、フレート王から直々に同じようなクエストを命じられた。

 当時、ローグの固有スキル《能力貸与グラント》を解除されたことで、大幅なレベルダウンしているとは知らず、アルフレッドは意気揚々を引き受ける。


 んで、タニングの都は既に魔族によって襲われており、アルフレッド率いる【英傑の聖剣】は戦いを挑むも弱体化によってボロ敗けした。

 また魔族のボスがやたら強く、イキり散らかしていたアルフレッドはボコボコにされてしまう。


 そして囚われていたハンス王子を見捨てる形で、尻尾を巻いて逃げ出したのだ。

 しかも最悪な捨て台詞を吐いてな。


「――んなドラ息子の坊ちゃん王子のために命を張ってられっか! そんな糞なんぞ好きにしやがれ、バーカ!」


 我ながらやべぇよ、アルフレッドよ。

 最悪じゃねーか。


 間もなくして、しれっとローグ達が駆けつけて来る。

 奴は奴でヒロインのシズク達と呑気にイチャコラしながら、しょーもないイベントをこなしつつ近くで騒ぎを聞いて訪れた形だ。


 ローグは「やれやれ面倒なことに巻き込まれてしまったなぁ……」とかテンプレの台詞を吐きながら魔族達を一掃し、ほぼノーダメージでボス格を瞬殺して全滅させた。

 見事にハンス王子を救出し、ルミリオ王国で英雄として称えられ祀り上げられる。


 一方のアルフレッドは惨敗したことと、ハンス王子を見捨てて逃げたばかりか最後の捨て台詞が問題となり、フレート王を始めとするハンスやティファに至るまでこっぴどく糾弾されてしまう。

 処分こそされなかったも【英傑の聖剣】は失墜し間もなくして解散となり、アルフレッドもルミリオ王国にはいられず半強制的に追放されてしまう形となったのだ。


 したがって、このクエスト。

 アルフレッドにとって、言わば破滅への序章プロローグ――。


 まさかこんな形でフラグが立つとはな……原作者の鳥巻八号め、やりやがったな!


 だが俺は回避する!

 今の弱体化した状態で受けられるかっての!



「……受けたい気持ちは山々なのですが、陛下や皆さんもご存知の筈です。今の私は以前のような力はございません。正直に言いますと、今は固有スキルが使えない状態であり、第四級冒険者として細々と活動をしている次第です。なのでお役には立てないかと……」


 どうよ、正直にブチまけてやった。

 自ら無能者アピールすることで、「俺に頼っても無駄じゃね?」バリアを張ってやったぞ。


「アルフレッドよ、先も言った通りだ。魔族は二の次で良い。まずはハンスを捜索し連れ戻してくれるだけで良いのだ。それなら引き受けてくれるだろ、な!?」


 フレート王よ。何故そこまで俺に固執する?

 まさかご都合展開ガバなのか? 

 意地でも俺をざまぁさせるためのガバなのか!?


「であれば私ではなく、嘗て所属していた【英傑の聖剣】に頼んでは如何でしょう?」


「うむ。確かに実力も高く今でも快進撃を続けているトップ集団だと聞く。しかし団長と名乗るローグとやらが、我が娘へ放った暴言だけは許せぬ! たとえ王女として知らぬとしても、一人の父親として頼りたくないのだ!」


 わぉ。

 既に王様の耳に入っているのね……ローグよ終わったぞ、お前。


「それにこれはあくまで極秘のクエスト。我らとしても頼めるお方は、ティファ王女からの信頼が厚いアルフレッド殿しかいないと見込んでおります!」


「我らと共に、どうか騎士団長を! ハンス殿下をお探しください、アルフレッド殿ぉぉぉ!!!」


 みんなめちゃゴリ押ししてくるんですけど……参ったな。

 ここまで言われて断ったら、それこそ後で何かされそうだ。


「……わかりました微力ながらお力をお貸しいたします。ですが万一、ハンス殿下が既に魔族共によって最悪な事態となっていたとしても、私を含む仲間達は一切の責任は負い兼ねます。それでいいですね?」


「……ああ、わかっておる。もっともな意見だ」


 フレート王は承諾する。


 おっし、これで失敗した展開となってもざまぁされることはないぞ。

 後は可能な限り保険を摘んでおくべきだ。


「それと出発前に準備して頂きたいモノが幾つかございます。陛下には、よりの成功を高めるためにご協力をお願い致します――」


 こうして俺は極秘クエストを請け負うことになった。



◇◆◇



 翌日。


 俺達は数名の騎士団と共にタニングの都へと向かうため、ひっそりと王城を抜け出した。

 国王からの命令とはいえ極秘クエストだ。

 隠密的な活動が要求される。


 あの宴会後、俺は仲間達を集めクエストの詳細を説明した。

 ガイゼンとパールも自分らの今の力量を知っているのだけに、「んな無茶な……」「それ、普通に勇者が担うクエスト」と二人とも悲観的な意見だった。

 それでも俺が打開策を伝えると、「なんとかなりそうか……」とモチベを保ってくれている。


「――魔力石か。流石アルフ、考えたじゃねぇか?」


 移動中、ガイゼンが兜の面頬越しで声を弾ませる。


「まぁな。万一魔王軍と戦闘になった際、能力値アビリティが低下した俺達は、そういった魔道具で不足分を補うしかない。極秘ではあるが、幸い国がバックについているクエストだ。達成を目指すため、金に糸目をつけず装備を整えることができるだろう」


 魔力石とは各々の装備に埋め込むことで、一時的に性能を増幅させる付与魔法が込められた鉱石だ。

 普段は高級すぎて手が出せないが、フレート王をパトロンにしてねだることで購入することができた。


 さらに俺は余念がない。


「それとアルフ、これから冒険者ギルドに行って付与術士エンチャンターを雇うんでしょ?」


「ああ、パールその通りだ。国王伝手でギルドマスターに依頼し、既に三人の付与術士エンチャンターが推奨され一緒について行くことになっている。みんな第二級冒険者で、今の俺らより優秀な人達だそうだ」


 本心じゃ付与術士エンチャンターにはトラウマがあるだけに、関わるのも嫌な職種だけどな。

 けど彼らに能力値アビリティを上げてもらうことで、俺達の固有スキルが一度か二度くらいは使えるようになる筈だ。


 何せローグの《能力貸与グラント》は解除されても、固有スキル自体は没収されてないからな。

 対魔族戦で役立ってもらえればと思っている。


 ちなみに、付与術士エンチャンター達はクエスト内容の詳細は聞かされていない筈だ。

 ギルドマスターから「国王直々の調査クエスト」という名目で急遽呼ばれた面子だとか。

 なので旅立ってから俺の方で教える必要があるだろう。



 道具屋で上質な魔法石を多めに購入した後(領収書はフレート国王宛)、冒険者ギルドに向かう。

 受付場で既に三人の付与術士エンチャンターが待機していた。


 が、


「……キミ達がギルドマスターから推奨された第二級の付与術士エンチャンターなのか?」


 目の前に、幼い容姿をした可愛らしい三人の小さな女の子が並んでいた。

 女の子達はこくりと頷いて見せる。


 う~ん、そっかぁ。


 ギルドマスターも鳥巻八号と同様にそういう系統のキャラチョイスか……。

 どうでもいいけど……俺のパーティ、随分とロリ率が高くね?



―――――――――――

お読み頂きありがとうございます!

「面白い!」「続きが気になる!」と言う方は、★★★とフォローで応援してくれると嬉しいです!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る