森の神社の結婚式

桃福 もも

一話完結 1000字の童話ミステリー

ゆうちゃんは、どんぐり坂を歩いていました。


 ぴょこん、ぴょこん。ぴょっこーん!


それは、小さな小さなアオガエルくん。


「森の神社のほこらの神に、この椿のはっぱを届けてください。」


ゆうちゃんは、森の神社をよく知っています。

「森の神社に持っていくの?」

「はい。はい。はーいい!」


「でもこのことは、だれにも、はなさないで。」


ゆうちゃんは、はっぱを持って神社へむかいます。


すると、小さなへびさんが来て言いました。


「ゆうちゃん、ゆうちゃん、どこいくの?」

「あのね……おはなしできないの。」




 チュウ、チュウ、チュウウーン!


それは、小さな野ネズミさん。


「森の神社のほこらの神に、このすみれの花を届けてください。」

「森の神社に持っていくの?」

「はい!はーい!はーい!」


「でもこのことは、だれにも、はなさないで。」


ゆうちゃんは、花を持って神社へむかいます。


すると、まん丸たぬきさんが来て言いました。


「ゆうちゃん、ゆうちゃん、どこいくの?」

「あのね……おはなしできないの。」


ぴょん、とん、ぴょん、とん。とーん。


それは、まあるい白うさぎさん。


「森の神社のほこらの神に、松葉まつばを二本届けてください。」

「森の神社に持っていくの?」

「はいはいはい!はいはいはい!」


「でもこのことは、だれにも、はなさないで。」


ゆうちゃんは、松葉を持って神社へむかいます。


すると、長い尾っぽのきつねさんが来て言いました。


「ゆうちゃん、ゆうちゃん、どこいくの?」

「あのね……おはなしできないの。」


やってきたのは、森の神社。

小さな小さなほこらの中から、にぎやかな声がします。


ゆうちゃんは、そっと、ほこらをのぞきました。

そこには、かわいいかわいい、動物たちが集まっています。


「来たよ来たよ。これでやっと結婚できる!」


動物たちは、左右に分かれて並びました。

そこに神主の姿をした、コマドリがやってきます。


パタパタパタパッ、タパッパパ。


「ゆうちゃん、ゆうちゃん、ありがとう。」


神主かんぬしのコマドリは、器用きようにはっぱをくわえると、一番奥いちばんおくに置きました。

はっぱの上には、松葉を二本、お箸のようにおくのです。


そこに白い着物を着た、かわいいリスのカップルがやってきました。

はっぱの前に並んで座ると、新郎しんろうが、新婦しんぷの頭に、すみれをかざってあげました。


ヤンヤヤンヤ、ヤンヤヤンヤ。


おめでとう!おめでとう!おめでとう!結婚おめでとう!


コマドリの神主が来て言いました。


「ゆうちゃん、本当に、ありがとう。

はなさないで、くれたこと。」


「おかげで、今日が、になりました。」

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森の神社の結婚式 桃福 もも @momochoba

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