硲ノ箱ハ生ルー2
夕焼けは広がり
美しく。
天は
濃厚な
寺の敷地内にある
八角堂の清掃中。
寺の当代である
声を掛けられた。
今日は
「 落とすなよ、ハルキ 」
「 八角様、
お声が掛かるとは思っておらず 」
「 今、起きた。
菖蒲の香りに呼ばれたな 」
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この寺。
取り立てて
装束もなく。
頭には
暑さ寒さを凌ぎ。
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この世のモノではなく。
あの世のモノでもなく。
自然のモノでもなく。
妖怪やあやかしの類でもなく。
名も知らぬ
『
人を守る寺。
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「 地の底から
鈴の音が近づいている。
心せよ、
「 降りますか、
「 今宵は、
母屋で飲むか 」
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寺での雨は
特別だ。
鈴の音と共に
災厄の
駆け抜ける。
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