77話 ぶつかり合う火力と魔力、舞い散るヒバナ。
研究室から出てきた僕の目に映し出された光景は何よりも衝撃的だった。
数十分前まで、横で話し合っていたはずのクゥトゥ様が黒い点に飲み込まれていく瞬間。
傲岸不遜な物言いで、僕を困らせてきた彼女があっけなく消えた。
それがどれだけ衝撃的で、記憶の中に残ってしまうことなのか。
彼女は、邪神だ。
何度でも復活する。
分かっている。
だとしても、あの黒い点に飲み込まれて、無くなって。
本当に復活するのだろうか?
保証はない。
契約が切られたのかも、わからない。
僕の感情は今、どうなっているのかもわからない。
僕は.........僕は......?
どうすればいい?
その疑問へのアンサーは、なんとなくわかってしまった。
「ぶっ潰せ。」
彼女なら、あのユグノアを前にした僕にこういうだろうな。
オリジンキーは最後のロケートをする。
邪神ユグノアを指さして、その矢印は中指を立てているようだった。
「なんだかよくわからないのだけど、無性に腹の立つ光ね?」
「焼き払ってあげる!」
そいう言うとユグノアは山頂全体に黒炎の弾幕をばらまき、山を薙ぎ払った。
慌てて跳躍した僕はオリジンキーの力を全開放した。
もちろん、対邪神用装備も全開放だ。
オリジンキーから解き放たれた、装備が順々と射出され、合体していく。
最終的にそれは一つのパワードスーツのような見た目になる。
全身武器人間、これを操縦したらそう呼ばれるだろうな。
空中に展開された、パワードスーツに乗り込んで後ろスラスターを吹かして姿勢を安定させて、ユグノアを見る。
対邪神用の兵器たちを見ても、ユグノアの表情はなにも揺れ動いていない。
むしろ、殺意が増しているように見える。
「ユグノア。僕は今から君を倒す!クゥトゥのためにも、繁栄都市の人々のためにもね!」
「そう。やれるものならやってみなさい?邪神を殺せる人間などいないということを教えてあげるわ!」
僕たちの言葉はぶつかり合う。
それと同時にお互いの攻撃も火花を散らしていた。
炎を撃墜するために、自動で発射されたマイクロミサイルたちが一斉に爆発したのだ。
「ふぅん。なかなかやるようね?人間の武器にしてはやるじゃない。でも、それだけね。」
「それはどうも。だけど、あんまり人間を舐めていると痛い目に合うかもね?」
互いに牽制しあい、ユグノアは次の攻撃を展開した。
黒い槍のようなものを次々と生成し、僕の周りを埋め尽くしていく。
「この攻撃を耐えられるかしら?」
「耐えれるに決まってる!」
僕の言葉を皮切りに一斉に発射される黒い槍。
「エネルギーシールド展開!」
六角形のシールドがパワードスーツの周りを守る。
そして、一斉に降り注ぐ槍がエネルギーシールドに突き刺さる。
視界を真っ黒に染める火。
それは絶え間なく降り注ぎ、シールドの耐久値を50%ほど削ってやっと降りやんだ。
「ここまでやっても壊れないのね。ふふっ...それじゃあこれはどう!!!」
ようやく終わったかと思った攻撃。
ユグノアはまだまだこれからと言わんばかりに接近してきていた。
炎の大剣。
彼女が手にしている武器はそう表すにふさわしいほど大きく、燃えていた。
「焼き払え、イグニール。」
そして彼女はその炎の大剣を十字に振るった。
「やられるわけにはいかないんだ!」
僕もその攻撃に対して、全力で答えるために右手の武装を使用する。
それは超電磁砲と呼ばれる武器。
いわゆるレールガン。
それに魔力加速装置が追加された、超電磁魔力加速砲となったレールガン。
こいつのメッセージは魔法と科学が交わり最強に見えるだ。
「充填加速、魔力充填完了。」
「充填十分。」
トリガーを引けば、砲塔が変形していきバチバチと火花を散らす。
加速し続ける砲身。
チャージは完了した。
後は撃つだけだ。
「ファイア!!!」
トリガーから指を放す。
瞬間、爆音とともに充填されたレールガンが咆哮を上げた。
十字に結ばれた炎の斬撃に、最速の弾丸が魔力とともにぶち当たる。
数秒の拮抗。
その拮抗を制したのは、レールガンだった。
そしてその弾丸は止まることなく、ユグノアに向かう。
炎の大剣で受け止めようとするユグノア。
しかし、レールガンの一撃は重く。
炎の大剣で受け止めれたのはほんの数秒で、炎の大剣を捨てることでレールガンの攻撃を躱していた。
「くっ!何なのよそれ!?私のイグニールの攻撃を凌ぐだなんて!」
「それは君が人類を甘く見た結果だよ。」
「うるさいわね!結果、結果って、今から消えるのに結果なんてないのよ!」
そういうが、ユグノアの手は明らかに震えており、とても武器を握れるようには見えなかった。
やはり、レールガンを真正面からガードした衝撃が残っているのだろう。
ここがチャンスだ。
僕は左手の武装のマシンガンをフルオートでぶっ放す。
「なっ!」
ユグノアは次々と放たれる魔弾を見て、すぐさま回避行動に移る。
空をジグザグに飛び、当たらないように逃げていく。
僕も彼女を追いかけつつ、弾丸が許す限りユグノアに火力を集中させていく。
両肩にあるマイクロミサイルも彼女を打ち落とすために発射していく。
気分はシューティングゲームのラスボスだ。
ユグノアもただ逃げるだけでなく、マイクロミサイルを打ち落とすために爆炎を放ちマイクロミサイルを一掃していた。
「かわいい顔しといて、やることは鬼ね。お人形さん。」
「君ほどじゃないけどね。」
「口説いてるの?それなら答えは、絶対NOよ。」
「僕もだよ!」
ユグノアとシューティングゲームをしているといつの間にか、鉛の海の上空まで来ていた。
そしてその鉛の海には、あり得ない状況が起こっていた。
鉛の海の上には、何百隻もの戦艦が浮かんでいた。
その戦艦の乗組員は魚人だった。
「これは一体、どういう状況!?」
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