76話 その鍵は確かな希望となった。
五つ目の研究室には台座はなく、研究室というには破壊されつくされていた。
まるで、ここには大事な何かがあったのだと言わんばかりに。
オリジンキーが自動的に光を照らしだし、目的地を勝手にロケートしてくる。
その光の矢印の通りに進んでいけば、そこは何もない部屋だけがあった。
ただその地面にパルプがついていること以外は違和感など何もなかった。
「これは一体何のパルプなんだろう?」
オリジンキーはそのパルプを強く照らす。
「回せっていうことなのかな?それじゃ、回すよ。」
さび付いたパルプを回していくと、部屋がだんだんと変形していった。
先ほどまで何もない部屋が突如として、研究室のような部屋に様変わりしていた。
「まさかここが本当の第5研究室って...こと!?」
この都市の人は、邪神に研究室が壊されるのを想定してたと思うと言葉が出ないな。
変形した研究室にはオリジンキーを差すための鍵穴が現れていた。
僕はもうためらうこともなくオリジンキーを鍵穴にさして回した。
するとどうだろうか、研究室全体が一斉に光だし、様々な機械が動き出していく。
それはまるで、止まっていた時間が動き出していくようにせわしなく動いていた。
部屋の光が数秒続き、収まると部屋は黄金に輝いていた。
そして、オリジンキーも最後の強化を終えていたのだった。
「これで全部の研究室を回り終わって、オリジンキーも最強になった。」
「後は、あの邪神を倒せば元の自分に戻れるはず!」
僕はオリジンキーの強化された内容をウィンドウで見ることにした。
■希望の種、それははるか遠くに託された希望の種。その種が発芽させるものは、??の発露。
■都市機能アンロック、繁栄都市の機能を全てアンロックし、防衛機構を修復、復旧させる。
オリジンキーを託されし巫女よ、貴方ならば、私たちをきっと...
■消滅人類証明宣言「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」
これが今回の強化内容?
なんだか今までの強化内容と違って、随分とスケールがでかい気がするなぁ。
それに僕って巫女なのか?
確かに今の体は巫女と言われても、遜色ないと思うけど...それでも、何か嫌だな。
それに最後の消滅人類証明宣言って、何かいてあるのかわからないし、バグってるしで何なんだろう一体。
そんなことを考えていると、オリジンキーがまた光り出した。
「今度は何なんだよ、もう。」
急展開が続きすぎて、何が何だか分からなくなってきた。
それでも、僕に休みはないらしい。
オリジンキーは人を投影しだした、その人は高齢なようで顔もひどくやつれていた。
「聞いてくれ、これを見ているということはオリジンキーの機能を全て開放して、無事にわしの研究室までやってきてくれたのだろう。」
「わしの名は、フォルゲンス・トーレガン。繁栄都市の長であった。」
「これからこの都市は消滅する、その運命は変えられない。」
「しかしだ。この都市が消滅し、滅ぼされた後に崩壊都市と呼ばれ、誰もいない都市と成り果てることになってもだ。」
「私たちが、この繁栄都市に生きていたことに変わりはないのだ。」
「その証拠を彼の邪神に、消されたままでは私たちの生きた証はなかったことになる。」
「だから頼む、巫女よ。ここに、私たちが生きていたという証を宣言してほしい。」
「それがわしからの......繁栄都市に生きたすべての人間の総意である。」
そこで、投影は途切れる。
繁栄都市の長。
そんな偉い人に僕は......頼まれてしまった。
今はその人は消えてしまった。
あの邪神に消されたんだろう。
同じ人間。
僕と変わらない、人間。
僕よりも、確かな意思を持って生きることを貫き、後の人類に希望を託したすごい人。
託されたのは僕で、意思表示も曖昧な人間。
果たして、託されるべきは僕だったんだろうかな?
でも、それでも...
フォルゲンスさんに頼まれた。
頼まれたのならば、やることは一つ。
「邪神ユグノアを討伐し、この繁栄都市の人々がいたということを世界に宣言することだ!!!」
その言葉に込められたものは、弱くなんかない。
確かな意思が灯っていた。
見ろよ邪神、これが人類だ。
抗うことをやめなかった、人間の希望を。
ご覧あれ!
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