74話 過程を飛ばして、結果を得るようなそんな筋書きが、炎に触れた。


ざっくざっくと雪踏み込んででかすぎる山を登っていく。


果ては遠く、見える世界もふぶくだけふぶいていく雪たちが踊るように見て取れる銀世界。


その足跡をたどれば自然とその二人が見えてくるだろう。


「クゥトゥ様!この山なんかおかしくないですか!?歩いても歩いても上が見えないですけど!!!」


そういう少女は、何時間も歩き続けて気がめいってきていた。


額には汗がきらめいて見えている。


「そうだな。これはあやつが干渉しているな。面倒なことをする女だ!」


「アニマ!流石の私も、こんなことに時間を使っておれん。私の力で結界を吹き飛ばす。」


「私の近くに来い!アニマ!そうすれば道は開かれるだろうなぁ!!!」


「クゥトゥ様!それができるな、最初からやってください!!!」


「すまんな、アニマ。まさかこれほど露骨に邪魔してくる奴だとは思わなかった。」


僕はクゥトゥ様の近くに身を寄せると、クゥトゥ様は何らかの詠唱を唱えた。


「忌々しい幻影など、邪神である私には無駄だと知れ。」


「この風は、我が統べる権能である。」


「暴虐の限りを尽くせ、テンペスト。」


その詠唱が終わると、吹雪はピタリと止まった。


止まった吹雪はまた徐々に動き出していく、それは尋常ではない速度で加速していき。


暴れ狂う風となる。


吹雪は巻き上げられ、もともとあった銀世界は晴れていく。


きっとそこで、僕たちを惑わせていた結界は破壊されていた。


それでも、その暴風は止まらない。


山を包み込むその時にそれは荒れ狂った。


見ることがないような爆風が吹き荒れる。


山にある雪が全て霧散し、恐らくいたのであろうユグノアの眷属も吹き飛んでいた。


僕はクゥトゥ様が張っていたバリアのようなものの中から、その光景はただ見つめることしかできなかった。


「クゥトゥ様.........これって...」


「ああ、全て吹き飛ばしてやったわ!!!あの女の駒ごとな!」


そういうクゥトゥ様は自信満々で、声高らかに胸を張って笑っていた。


これ絶対、ユグノアさんキレてるやつだ。


だって、僕だったら正規の方法で突破されなかったら怒るもん。


なんとなく、クゥトゥ様とユグノアさんが仲が悪い理由がわかってしまったかもしれない。


「よぉし!アニマよ、これで最後の研究室に向かうことができるな。それも快適にだ!」


「それはそうですけど、僕はなぜだか嫌な予感しかしないんだけど?」


「何を言っている、アニマ。そんなことは起こらん。」


クゥトゥ様がそれを言った直後だった。


山の頂上にそれは輪郭を合わせて現れていた。


いや、最初からあったのだろうその炎。


太陽がこちらを見ていた。


それは悪意を持って、殺意を持って、復讐を持って、それは僕たちを睨んでいる。


「これだから人間は嫌いなのだ、それとそこのタコもね。」


真っ黒で吸い込まれそうな長い髪に、深紅のドレス。


こちらを睨む、真っ赤な目は燃え盛る烈火であった。


「ふん、誰がタコだ!!!いつもいつも私の周りを蚊トンボのように飛び回っているだけ陰湿女め。私の風で消えた、自分の駒がそんなに大切だったか?」


「そんなわけないわ、あの子たちは私のおもちゃ。それが何個壊れようともどうだっていいもの。」


「でもね、クゥトゥ。お前はルールを破った。大事なルールをね。」


ユグノアはルールというか、筋書きが壊されたのが気に入らないらしい。


几帳面な邪神なのかな。


「はっ!おまえの考えたルールだと!?そんなものどうでもいいわ!お前はおとなしく、私の伴侶に殺されるのがお似合いだ!」


「ふん、その人形が私を殺せると本気で言っているの?」


「知らないようだな、アニマはな。お前を殺するためだけに作られた対邪神兵器だ。」


「あらそうなの、それは素晴らしいことね。ただ残念なことに、その人類は私が消してしまったけどね。」


「これだから、気色悪いのだお前は。何を自信をもってそんなことをいっているんだ?」


「こ奴ら人類を消したのは、お前が自身の保身に走った結果だろう。」


「......なにをいって。」


クゥトゥ様の言ったことがユグノアさんにクリティカルヒットしたのか、動揺が垣間見えてきた。


邪神でも危機感を感じるって、ここの都市の人類はどんだけ発展していたんだろう。


「はぁ...今更隠そうとするな、それだから陰湿女どまりなのだ。」


「それにな、お前を観測した人類は対抗策を用意していただけで、お前と交流を結ぼうともしていたんだ。」


「何よそれ、何なのよ!?」


クゥトゥ様から明かされる衝撃の事実。


何でクゥトゥ様はそんな詳しい分け?


と思っていたら、クゥトゥ様から念話が飛んできた。


(アニマ、この隙に研究室まで走れ!)


その念話は一方的に送られて、とぎれる。


この会話は時間稼ぎ、たぶんだけどクゥトゥ様でも邪神ユグノアは倒せないんだろう。


僕がオリジンキーを完成させなければ、ユグノアは、この世界からはきっとでられない。


クゥトゥ様の指示通りに、僕は研究室を目指して走り出していく。


クゥトゥ様はウィンクで応援してくれていた。


ありがとう、クゥトゥ様。僕、ユグノアを倒して元の世界に帰ります!


うろたえる邪神と言葉巧みに攻める邪神。


異様な光景をよそに、山の頂上にある研究室はそこまで迫っていた。

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