73話 目的の山に何事もなく到着したけど、あり得ないレベルで寒い。


「ふぅ...何とか到着できましたね、クゥトゥ様。」


「そう......だなぁ......」


現在、北側の山までやってきている。これから滅茶苦茶険しい山を登る途中といったところだ。


5つ目の研究室は山のてっぺんの洞窟にあるらしい。


ちなみに道中の敵はクゥトゥ様の威圧でてこれなかった。


「それにしても寒すぎませんかね?!」


「うむ。私でも少し寒気を感じているぞ。これはあれだな。あやつの仕業だ、間違いない。」


「ところで毎回あやつとか、あの女とか言っている邪神って何て呼ばれる存在なんですか?」


「ああ...あの女のことを語るのは憚られるが契約主のお主は知っておくべきか。」


「あやつの名は邪神ユグノア。復讐を司る邪神。悪炎という異名も持っておる。」


邪神ユグノアというのか、しかも復讐の邪神。


この邪神は誰かの復讐のために呼ばれたんだろうか。


そうしてこの都市の人間を滅ぼした。


そう考えるとこの都市が崩壊した理由としてはぴったりとはまる。


だとしても、この都市が誰かの復讐によって滅ぼされたとは考えにくいことが多くある。


各地にいるなんか普通じゃない魔物のようなモンスターのようなやつ。


近未来的な装備を持った蛇人間に、でかい羽根えび。


独自の生態で遺跡を根城にする魚人たち。


こいつらは邪神の手先らしいけど、どこから召喚されたんだろう。


それに邪神の眷属。


あの不気味な泥人形。今思い出しても吐き気がしてくるよ。


しかも、かなりの強さだった。あれが直属の眷属じゃなくて下っ端だったらやばいかもね。


その場合、僕だけの力じゃ倒せなさそうだなぁ。


クゥトゥ様手伝ってくれるかな?


「クゥトゥ様は邪神ユグノアが心底嫌いそうですけど何があったのか聞いちゃだめですか?」


「はぁ~それが一番言いたくないことだが、ここまで話した手前それも話しておくか。」


「あやつと私は属性的に仲が悪い。炎と水。どちらも相反する属性。そこからして仲が悪いのだが、さらにだ。あやつと私はあり得ないぐらい価値観が合わない!!!」


「それはなんか仕方なくないですか?」


「仕方なくなどないあやつの復讐のためなら何でも叶えてやる精神。確かに邪神として普通のことだがそこから復讐心をさらに増幅させて事を大きくする、あやつのやり方は気に食わん。」


「クゥトゥ様は周りの迷惑と考えられるタイプってことですか?」


「うむそうじゃ。私は召喚者の望みをかなえる以外のことはせん。そして、召喚された後もすぐに寝る。」


「じゃあ邪神の中でもクゥトゥ様ってすごく優しいんですね!」


「そうだろう!そうだろう!もっと褒めてよいぞ!!」


「わぁ凄い~クゥトゥ様は周りのことを考えれる優しい邪神です!」


「むぅなんかそれだと、あれだな可愛すぎるな。邪神としての威厳がいささかなさすぎないか?」


「ちっばれたか。」


「アニマよ!今舌打ちしたか!!」


「いえ、風です。」


「そうか。」


「ところで、ここからどうやって上っていきましょうか?クゥトゥ様。」


「そうだな...普通にこのまま登ってもあやつが何かしらしてくるだろうから何かしらの対策をしておきたいところだが...あいにくここは山で私と相性が悪い。」


「ということは何もできないってことですね。分かりました、クゥトゥ様。頑張って登山しましょうか!」


「そうだな。アニマと会話しながらいけるからな。その方が良いか!」


「それじゃいきましょうか。」


そう言って僕とクゥトゥ様は銀世界の雪山を登っていく。


足元の雪はまぁまぁ積もっていて、少し足がとられる。


歩行しにくいのは、戦闘に響く。


力強く地面をけらないといけないから、かなりスタミナがとられる。


うん雪山って、だるいな。










「とうとう来たのね。......あのタコも当然のように来るのね。」


「久々に蹴散らしてやろうかしら。この都市の人間と同じ結末をたどらせてあげる。」


潰された薔薇が真っ赤に燃える。


復讐の炎が揺れ動く。
















そのえびは燃えていた。


その蛇人間は燃えていた。


その眷属は燃えていた。


仮面を身に着けた、漆黒のドレスが感情を表すように踊る。


その踊りがテンポを上げるごとに、炎を熱く、激しく燃える。


彼女の目に映るのはただ一つ。


復讐の炎だけだ。

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