68話 ダイダロス


4つ目の研究室はどうやら、海の中にあるようだった。


オリジンキーのナビゲートは間違いなく海を差していて、僕はずっしりと気が重くなった。


さっきまでのやる気は海によって粉砕された。


「はぁ...どうして海の中に研究室を作るんだよ。僕泳げないって。」


「でもまてよ。この体は僕のじゃない。もしかしたら海の中を泳げるかもしれない。」


そう思ったら行動するだけだ。


鉛の色をした海。


その波間から人ほどの大きさの魚がこちらを見ていた。


それをよく認識してみると、鱗のある魚人であった。


「うわ...最悪だ。あんなのが海中にいるんじゃ潜ってる間に攻撃される。」


「どうしようかな...なんか解決できそうな機能あったかな......」


どう魚人を攻略しようかと考えていると、先ほど追加された古代魔法が思い浮かぶ。


「これじゃん!古代魔法なら全て解決できそう。」


さっそく、古代魔法を行使しようとするとリストのようなものがプルダウンで表示される。


あっこれなんかいいんじゃないかな。


【ダイダロス】という古代魔法なんだけど、この魔法の詳細を見てみると海だろうと水であればなんでも意のままに操れる魔法らしい。


さすが古代魔法、規模が違う。


「よし...【ダイダロス】」


そう古代魔法の名を告げる。


それと同時だった、大きな魔力の渦が僕を起点に作り出されていく。


そしてその大きな魔力の渦は見たこともないような透明感のある水に変わる。


その水はキラキラと輝いていて宝石とさえ錯覚してしまうような眩しさだった。


透明な水は海を向くと爆発するように加速していった。


鉛の海を泳ぐように動く透明な水はまるで水龍を思わせる。


水龍は海を暴れるように動き終わると、僕のもとに戻ってきた。


ざばーんっと水しぶきが上がって透明な水龍は姿を現す。


「おお!カッコいい!本当の龍みたいだ。」


水龍は僕が研究室へと行きたいのを知っているかのように、僕を自身の背に乗せる。


「これ息できるの?死なない?」


っとエマージェンシーを出していると、水龍が透明な水を僕の頭に纏わせた。


驚いたことに普通に呼吸できるし、水で視界がぼやけることはなかった。


「有能すぎないこの水龍!?」


僕の杞憂を一瞬にして解決した水龍は目的地に向けて潜航していく。


これから快適な海の冒険が始まるのかな。


なんてことを考えていた僕はその先で起こる最悪の事態をまだ知らなかった。

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