66話 邪神の思惑


「ううっ...はぁ..だいぶ落ち着いてきた。」


色々なものを吐き出した後、落ち着いた僕は研究室へと続く扉を開ける。


3つ目の研究室の中は、荒れていた。


まるで、怪物が食い散らかしたような惨状。


壁には爪痕や何かのシミ、地面はガラスが散乱していた。


その惨状はこの研究室にはまだ何かがいるような気配がしてならない。


僕の予想通り、オリジンキーが敵性反応がいると通知してきた。


ここにいる人々をオーバーキルした奴だろう。


どこを徘徊しているのか分からない、僕は一層警戒を強めて研究室を探索する。






「探索するっていっても、物や資料があったんだろうけど、破壊されちゃってほとんど見ることができないなぁ。」


「まるで意図的に壊したみたいだ。」


そうなると、やっぱりあの記録の邪神の眷属かな。


邪神の目的は何がしたいのか、理解不能だけど、人間が嫌いなのはこの惨状からよく分かる。


「それにしても、本当に何もかも壊されていて何もないや。」


「探索範囲を広げたいけど、邪神の眷属と戦闘になりそうだしなぁ。」


「はぁ~もぉ~どうしようか?」


今の探索範囲には、何もない。


でも、邪神の眷属がいそうな場所にはありそう。


なら...


「眷属やっちゃうか!」


僕は行動を決めると、すぐに通路を走り出した。


オリジンキーの反応がどんどんと強くなっていく、眷属に近づいている。


おそらく、後5秒後に接敵する。


敵はたぶんこっちに気づいている気がする。


「先制攻撃はもらいたくないよね!」


0秒。


通路を曲がった瞬間、黒色の塊が目の前に突っ込んできていた。


「くっ!」


僕は予想していた通りの攻撃が来たため、天井すれすれまで跳躍してそれを回避する。


ドガンっと爆発したような音がして、壁に大きな罅が入る。


壁に当たった黒色の物体はどろりと溶けて消える。


そして、僕はこれを放ったであろう眷属を見る。


それをどう表現しようか迷った。


それを見ていると、脳が麻痺するような正気ではいられない感覚を覚える。


それは不定形の人のような、泥人形のような見た目をしている。


見れば見るほど気が狂いそうになる。


「これはちょっとやばいかも。」


僕は視線を外す。


それと同時だった、邪神の眷属の次の攻撃が放たれた。


感覚でそれが分かった、炎だと。


オリジンキーで強化されたこの感覚がそう教えてくれていた。


オリジンキーを炎に向かって振るう。


この攻撃は間違いなく回避不能。


「それなら切るしかないよねぇ!」


僕の振るったオリジンキーは炎に接触するとその炎は二つに切れたような感覚が伝わってきた。


「よっし!」


視線を邪神の眷属に戻す。


それは眼前まで迫った黒一色。


「まずいっ...」


重い感触がやってくる。


「...がぁっ!!!」


鋭く重く打ち込まれた黒色の腕。


少女の体を先ほどの攻撃で壊された、壁に吹っ飛ばす。


確かに重い一撃だった。


けど、予想しているよりもダメージが軽減されている。


血を吐いていない。


恐らく人がくらえば潰れたトマトになっていたはず。


それでも、何とか耐えられるほどの痛みだった。


「これなら、戦える!行くぞクソ眷属!」


手放さなかったオリジンキーで次の攻撃に備えるが。


邪神の眷属は少し首をかしげて、なぜ僕を殺せなかったのか不思議そうにしている。


「一発でやれなくって、残念だったな。クソ眷属!」


「こっちからお返しだ。とくと味わってくれよ。」


オリジンキーに転送されたのは、特大のエネルギー銃。


チャージが即座に完了されていたそれは一気にその爆発的な出力を吐き出す。


特大のエネルギーは邪神の眷属を飲み込んでいく。


邪神の眷属は身を守るように変形しようとしていたが、エネルギーはそれよりも速く到達した。


黒色が灰が散るように崩壊していく。


「ばいばい、クソ眷属。」


そう言って、オーバーヒートしたエネルギー銃を収納して、少し壁に寄りかかる。


ちょっとだけ、休憩...

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