閑話 お腹を空かせたダメ魔王


「う~む。どうしたものか。」


「あやつはいつ帰ってくるのだろうな?もう、3日は経っているぞ。」


ぐう~っと腹を空かせて、ベッドで寝転ぶダメ魔王。


このところ、お菓子などしか食べていない。


自分でコンビニ行って飯を調達するという思考はこの魔王には無いようであった。


「もしや、我に愛想が尽きたというのではないだろうな!?それだとしたらまずいぞ!」


「我のよりべはあやつ以外に務まるとは思えん。」


「よし、外に出るか!」


ようやく自身のエマージェンシーに危機感を覚えたのか外に出る決心をするニート魔王。


「とはいっても、買い物する金がないのだがな。」


扉を開けて、思い出したようにそう言う。


そうして、扉の外へと出る。


「えっ...どうして......少女が?」


その言葉を耳にした魔王。


すぐにでも部屋に戻ろうとドアノブに手を掛けようとするがその顔を知っていた。


いや、知っていたというよりも写真や話で出てきたということで知っていただけだが。


それでも、あやつの友人ならば我の空腹を満たしてくれるのでは?


べリアの思考は食欲で満たされていた。


「すまぬ、あやつの友人とやら、少しばかり我を助けてはくれないか?」


狼のような耳をした少女はその言葉に戸惑いながらもニート魔王の要望に応えてしまった。


その要望に応え、料理を作っている間に彼との話をしたのだが。


狼少女のリーフェはその話に絶句していた。


「うまい。うまいぞ、このインスタントカレーというもの!!」


「ええっと...それ良かったですね?」


「うむ、満足だ。3日も大した食事をとれていなかったからな!」


「......えっ!?」


少女はダメ魔王の話を聞いてまたしても絶句した。


この魔王どうやって生きてきたのだろうか?


当然の疑問。


しかし、ここに住んでいることから彼に料理を作ってもらっていたことが容易に想像できてしまった。


リーフェは少しの間だが、彼にお世話になっていた。


それだからなのか、このダメ魔王には少しの嫉妬と共感を得ていた。


自分も彼に拾われた。


多分きっとこの子もそうなんだろう。


「して、どうしてあやつの部屋でうろうろしておったのだ?」


「うぇっ!!!...っとそれは......」


少しの沈黙。


「家族だからです!!!」


「おお!なんと血族であったか、いやそれにしては全然似ていないな。ならば、ペットか?」


「ワンちゃんではないです!そんなこと言うと、料理作りませんよ?」


「いやいやちょっとした戯言だぞ、魔王ジョークだ。頼むから料理は作ってくれ、あやつが帰ってこないだ。」


「それは...」


リーフェは知っていた、彼が帰ってこない理由を。


だが、この魔王にそれを話したらどうなるか分からない。


リーフェは甘い嘘をつくことにした。


「えっと、アニマ君はちょっと用事があって強化合宿中で5日は帰ってきません。」


「そうであったか...あいつてっきり我を捨てたかと思っていたが、そうであったか。」


「ええですから、アニマ君が帰ってくるまで私がべリアちゃんのお世話をします。」


「それは助かる。あやつが帰ってくるまでよろしく頼むぞ、リーフェ!」


上機嫌にそう言うべリア。


アニマが帰ってくるまで、大変なんだろうなということを考えて、遠い目をしているリーフェ。


どういうわけか、巡りで会ってしまったこの関係。


これから一体どうなるんだろうね...


アニマ君?

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