4話 人の話は聞いた方がいいし、友達は作れるときに作った方がいい


「ふぁ~あ。良く寝たなぁ。」


「って......もう朝か。」


というか今日って、入学式じゃないか?


まずい、今何時だろう。


7時ちょうどか。


まだ間に合うな。


急いで第一中央学園の制服に着替える。


バッグはこれか。


これで大体の準備は整ったかな。


学園への支度を終えた僕は、1階に降りて朝食を探そうとする。


「パンあったかな。」


「バカ兄遅いよ!もう朝食で来てるから早く座って!」


「あ~ごめんごめん鏡華!もう朝食作ってたんだ。」


「次はないんだから、しっかりしてよね。」


「「いただきます。」」


妹が作ってくれた朝食は、オムライスだった。


朝から気合が入りすぎでしょ。


そんなことを思いながらも、食べようとするがケッチャプでファイトと書かれていて少しだけ昔の妹思い出した。


なんだかんだ言って、鏡華も妹なんだなと思いつつ、オムライスを味わいながら食べた。


その後、歯を磨いて顔を洗い、ようやく学園に向かう準備が整った。


天気は快晴。学園に植えられている桜は満開とのことだ。


こんなに整った入学式そうそうないだろうな。


鏡花が私もついって行ってあげようかなんて言っていたけど、流石に妹同伴で入学式に行きたくはなかった。


分かるよ、学校に行かなかった兄が学校に通う姿が見たいというのは分かるけど。


それに鏡花を連れていくと、騒ぎになってしまう。


中等部でも文句なしの成績とリーダーシップを兼ね備えた、人気者の現生徒会会長。


それに加えて誰もが振り返るような容姿を持っている。


その理由も含めて、鏡華には丁重に断りを入れておいた。


断った時、途轍もなく不満そうな顔をされたけどね。


「さてと、準備はOK。第一中央学園に向かうとしようかな。」


玄関へと向かい、外に出ようとすると鏡花が話しかけてきた。


「入学式、話が長くても寝ちゃだめだからね!アニマ兄!しっかりと人の話は聞くこと、いい?」


「大丈夫だって、鏡華。入学式ぐらいちゃんとするよ。」


「本当かなぁ?そういって実行したこと見たことないけど?」


「...ぐぅっ。何も言い返せない。流石わが妹、痛いところを刺してくるね。」


「でも今日ぐらいはその言葉を信じてあげなくもないわ。なんて言ったって引きこもりのアニマ兄の門出だもの。」


「ありがとう、鏡華!」


素直に感謝すると鏡花は少し顔を赤くする。


「ばか兄!ささっと行け!」


と言われて背中を押されて外に追い出されてしまった。


はぁ...妹と接するのって難しいな。


そんなことを考えて、歩いていくと魔導モノレールの駅に着く。


魔導モノレールに乗車すると僕は小説を取り出して読む。


第一中央学園まで何十分かかかるから暇つぶしだね。


ちなみに魔導モノレールに乗る人は多くない。どっちらかというと地下魔導鉄道を利用する人のほうが多い。


あっちのほうがアクセスや着く時間が速いんだよね。


対して、魔導モノレールはそこまで速くない。


それでも僕が利用するのはこの学園都市を一望できるからなんだよね。


この学園都市はとっても広い。


それにどこの都市よりも発展していて見るのに飽きない。


ビルを見てみればアイドルや商品の宣伝がされている。


それに魔導モノレール内にも広告がびっしりだ。


本当に見るのに飽きない。


そうして小説に目を落として、時間を潰していると......


第一中央学園の駅に到着した。


そこから少し歩くと学園にたどり着いた。


「改めてみても本当に大きいなこの学園は。」


何度見ても慣れない大きさだ。


そうして、僕は第一中央学園の門をくぐり受付を済ませると、先輩に入学式を行う講堂に案内される。


案内された講堂に入ると、クラス順に席が分けられていた。


席は自由っぽいし、適当に後ろの席に座る。


ふと、視線に違和感を感じてあたりを見渡すと。


上級生やAクラスあたりから視線を感じた。


あまりいい視線の向け方じゃない。


獲物を見つけたようなそんな視線が送られてくる。


見下されているといってもいい。


それでもそれは一部の視線で全員がというわけではない。


実力主義って怖いなぁ。


僕は入学式が始まるまで小説を読むことにした。








30分ほど経ったころだろうか、見渡せば全ての席が埋まっていた。


一階には1年生が、二階には2年生、3階には3年生という並びだ。


2年生や3年生からの視線が1年生に降り注いでいる。


それは期待、選別、など様々な感情を抱えている。


それがひとしきりに多いのは、やっぱりというか当然というべきなのか上位のクラスだ。


なんでもSクラスには、近年まれにみるレベルの素晴らしい能力者が多数いるらしい。


それは注目されるのも当然だよね。


そうこう考えていると、入学式が始まっていた。


といっても、僕が登壇した学園長や偉い人たちの話を真面目に聞くわけもなく聞き流していると...


新入生代表が話始めた。


新入生代表の子は、青髪に紅色の目にクリアな声。


聞いている人を全員そこに引き込んでしまう魅力がある。


話を聞こうと思ったが、声のせいか少し眠くなってきた。


心地いい声にうとうとしていたら、話が終わっていた。


あっ......まずい。鏡華との約束破っちゃったよ。


そんなことを考えていると少し寒気がしたので、何事かと寒気が感じる方を見てみると新入生代表の子が僕に対して殺気を放っているような気がした。


いやいやまさか、新入生代表の子だよ?


ほぼ一番下のクラスの僕に対してどうして殺気を?


いや、あるかもしれない。


彼女の異能が心を読むとかだったら?


背筋が凍った。


彼女はステージを下りる際に、僕を3秒見つめてきた。


まるで分っているぞと言わんばかりの鋭い視線。


いやまさか、入学式早々Sクラスの子に目を付けらるとは思いもしないよね。


はぁ...何もされないといいけど。








そんなこんながあって、入学式が終わり、クラスに移動して自己紹介の場面。


Eクラスの生徒は意外と普通の学生といった印象だ。


担任の先生はやる気なさそうだけど。


自分の自己紹介はどうしたかって?


目立たないようにさささっと終わらせたよね。


あれ...友達はできたのって?


...友達ってなんだ?


この話やめにしない?


まぁそんな些細な事は置いておくとして。


明日から、もう授業が始まるらしい。


ダンジョン探索のオリエンテーションだとか。


しかも、Eクラスの誰かとパーティを組んで。


「明日から、ダンジョン実習があるから適当にパーティ組んでおけよ。」


Eクラスのぼさぼさ頭の担任のレリア・イーヴェンス先生がぶっきらぼうにそう言う。


さて......どうしようか。


パーティを組むにしても、友達を作るスタートダッシュすらしていない僕には友達がいない。


声をかける?


無理無理、ニートゲーマーにはそんなことできません。


それができたら、ニートなんてやってないよ。


「はぁ...もう今日は帰ろう。」


そんな僕のつぶやきを誰かが耳にしていた。


「あいつ......大丈夫か?」


高身長なその男子生徒は、教室から出ていく一人の背を見てそう言った。


「決めた!明日のダンジョン探索のパーティあいつと一緒になろっと!その方が面白そうだ。」


その男子生徒は満足そうな表情で明日のパーティ相手を決めるのだった。

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