閑話 公爵令嬢とお姫様


第一中央英雄学園の入学試験を終えた、私たち二人はスイーツを一緒に食べに行こうとしている最中だった。


本当ならば、迎えが来ていてそれで帰るのが安全なのだが、リーネ様のお願いに私が抗えるはずもなく、やむを得ず迎えを断り、魔導モノレールで帰るということにしておいた。


リーネ様の安全を優先するのなら、私の行動はよくないことだろうな。


しかしだ、リーネ様は一国の姫、たまには息抜きが必要な時もあるはずだ。


そう考えた私はリーネ様を絶対に守護すると誓い、警戒しながらもリーネ様と談笑しスイーツ店に向かっている。


「レヴィア、私ね。イチゴパフェが食べたいわ!あの真っ赤なイチゴ、まるで宝石の様ようで、どんな味がするのでしょう?」


「そうですね、リーネ様。きっと美味しい味だと思いますよ。」


「ふふっ、レヴィアの言う通りでほっぺが落ちちゃうくらい美味しいに違いないわ。」


この時間が長く続けばいいのにと思うがそうはいかないのが私たち貴族の嫌なところだ。


目的のスイーツ店で、イチゴパフェを二人で食べて満喫した後、魔導モノレールに乗って帰るだけとなった。


しかし、糖分を取ったからなのか、リーネ様が可愛すぎたのかわからないが、そこで私は油断してしまった。


警戒は解いてはいなかったが、探知が甘くなっていた。


近づいてくる怪しげな男たちが話しかけてくるまで気づけなかった。


「よお!お二人さん、楽しそうじゃねぇか。俺たちも混ぜてくれよ?」


その言葉を聞いた瞬間に、リーネ様の手を取って走り出す。


彼らは手練れだ、そういうことに慣れている連中の匂いがした。


私たちが逃げることを見越して部下を配置してたのか、魔導モノレールへの道は遮られていて、道を裏路地に変えるしかなかった。


これは誘導だ、この道に行ったらあいつらが有利になる。


でも、もうMPも残っていない。


剣での正面突破はあいつらとのレベル差を考えたら難しいだろう。


どうすればいいの?


リーネ様を守るのが私の役目なのに。


「レヴィア!助けを呼んだらいいじゃない。きっと、こんな時こそ王子様が助けに来てくれるはずだよ?」


「何を仰っているのですか、リーネ様!王子など来ません......」


いや待てよ、学園都市には治安維持部隊が巡回していると聞いたことがある。


もしかしたら、助けを呼べば気づいてくれるかもしれない!


「そうですね!王子様が助けに来てくれるかもしれません。リーネ様一緒に叫びましょう。」


「「助けてください!!!!!」」


私たちの叫びが建物に反響するが、返事は返ってこなかった。


何度も叫んだが、そうしていくうちに壁際まで、男たちに追い込まれるのが先だった。


助けはもう来ないだろうな。


絶望的状況、相手は5人。


頭格の男は、Cランク冒険者程度の戦闘力があるように見える。


ダメだ、やっぱり勝てる気がしない。


たとえ私の異能を使っても勝てない、ステータスの差がそこにはあるんだ。


「リーネ様、申し訳ございません。私の油断がこの結果を招いてしまいました。」


「いいえ、レヴィア。私がレヴィアに無理なお願いをしてしまったのが原因です。」


「貴女に非などありませんわ。」


「ですが!リーネ様このままでは...」


「大丈夫です!王子様が助けに来てくれますから!」


王子様、王子様とリーネ様が仰っているが、リーネ様は何が見えているのだろうか?


分からない、リーネ様が何を考えているのか。


そうすれば、下種たちがニヤニヤと調子のいいことを言い放ってくる。


私はそれに我慢できず、剣を抜いて威嚇してしまった。


「誰があんたたちゲスなんかと遊ぶものですか。失せなさい!」


この言葉に男たちは激高し、私たちに襲い掛かろうとしていた。


その瞬間だった。


ドンッ!!


と甲高い銃撃音が鳴り響いて、目の前の男が倒れた。


「「きゃぁ!!」」


リーネ様と二人で一緒に叫んでしまった。


頭格の男が撃たれたと知ると取り巻きたちはさっさと逃げ出していった。


リーネ様はこの狙撃が分かっていたから、自信満々に王子様が助けに来てくれると言っていたのか。


やはり、リーネ様は凄いお方だ。


「見ましたか!レヴィア!王子様が助けに来てくれましたよ!」


「ええそうですね、私も今驚いています。治安維持部隊の方が助けてくれたのでしょうね。」


「むぅ...違うわよレヴィア。助けに来てくれたのは王子様なんだから!」


「そうですね、王子様ですよね。」


...そうだった忘れていた。


姫様は重度の英雄崇拝者だった。


それにしても、助けたのに姿を現さないのどういうことだ?


まさか、助けるだけ助けて我関せずということではないだろうな。


いや、それよりも姫様の安全が第一か。


私たちはすぐに魔導モノレールの駅へと向かうことにした。


手をつないでいるリーネ様がうっとりした表情で、助けに来た奴を少しだけ恨んでしまった。

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