2話 入学試験当日、試験でやらかしたかも?
明日が来なければいいのにと思っても、明日はやって来る。
というわけで。
もう明日になってしまったよ。
それで、現在何をしているかというと......
魔導モノレールに揺られて第一中央学園に移動中だね。
魔導モノレールは学園都市中に通っていて、学園都市での便利な交通手段の一つだ。
さて、第一中央学園周辺がどんな感じなのか、魔導モノレールの窓から眺めていると入学試験を受ける受験生たちが歩いてるのが見えた。
遠めに見ても、緊張しているのが分かる受験生もいれば、自信に満ち溢れた表情の受験生もいる。
見ていて面白いものかと言われれば違うけど、僕は彼らのどのパターンにも当てはまらないタイプの受験生だろうな。
そんなことを考えていたら、第一中央学園の最寄りの駅に到着した。
そこから少し歩けば、第一中央学園が見えてくる。
「はぇ~想像よりも大きいなぁ。」
初めて見る第一中央学園の大きさは想像以上で声に出てしまうほどだった。
そして、正門の大きさもこれまで現実で見てきたどの門よりも大きく、RPGで見ることのできるような城門で、気持ちが少し高ぶった。
これだけ大きな門を学園に設置するということはそれだけの威厳と権威を象徴しているといえるよね。
それにこの門には、相当凄い防御魔法と素材が使われている。
本当に城みたいだ。
それじゃ、入学試験を受けに行くとしよう。
それで、会場に到着したはいいんだけど。
「受験生が多いと聞いていたから、分かっていたんだけどね。」
「2,000人以上ともなるとこの広い学園の敷地でも、少し狭く感じるな。」
試験会場の受付で受験生の確認手続きを行っているため、しばらく待つ必要がある。
それにしても、ここまで近くに来たからか受験生の魔力や力を感じてきた。
僕は姉さんに鍛えられてきたから、少しだけ魔力の流れ、その人の強さが分かる。
ふむふむ.........どうやら。
今年の受験生は規格外なのかも。
身近で一番強い妹の鏡華と同じかそれ以上の受験生が十数人もいる。
それに実力をうまく隠している受験生も中にはいた。
たぶんだけど、僕が思っている以上にこの学園は魔窟なのかもね。
そんなことを思っていると、自分の受付の番が回ってきた。
提出すべきもの提出して、確認手続きを終えて受付を出ると。
「受験生の皆さん、これから学力試験の会場に移動してもらいます。」
と第一中央学園の試験官が試験会場へと誘導していた。
受験生が試験官にどんどん誘導されて会場に向かっていくので、僕もその流れに乗って試験会場に向かう。
どんな試験問題が出るんだろう楽しみだなぁと思いつつも、だるいなぁという感情は抜けなかった。
うんまぁあれだよ、学力試験は常識的な知識や学力が問われた。
勉強していれば点が取れるような問題ばかりもあれば本当に解けるのか疑わしい問題もあった。おそらく、解ける問題とそうでない問題で学力を試しているんだろうね。
ちなみに難問は解けなかった。
僕は天才じゃないんだ、人並みの学力さえあればいい。
こういう難問を解くのは必死に勉強している奴とか、天才が解けばいいんじゃないかな。
まぁそんな学力試験のことは置いておいて、魔力測定に行こうじゃないか。
魔力測定の会場では、魔力測定機に手を当てると魔力量が数値化されて現れるようだった。
「すげぇ!あいつMPが500もあるぜ!」
「おい見ろよ!あっちのやつはMPは1,000だぞ!」
「どうなってんだよ、俺はMP170しかなかったぞ!」
「うそ、私のMP低すぎ!?」
とかなんとか、一喜一憂の声が聞こえてきた。
それで僕のMPはいくつかな?
魔力測定機に手を当てる。
そうすると、魔力量が可視化された。
「僕のMPはたったの12か。変わらなかったなぁ。」
なぜだか僕の魔力量は増えない。
どんなに魔法を鍛えても、精神を集中させても、増やすことができない。
まるで成長が止まったかのように。
これに関しては僕はあきらめがついている。
それは僕の姉の鳳華姉さんも同じだ。
鳳華姉さんを以てしても、僕の魔力量についてはお手上げだった。
僕が魔力測定器から離れようとすると、後ろから指をさして嘲笑うようなもの、さげすんだような目で見てくるようなもの、僕の結果が見えてしまった者たちは僕に対して冷ややかな態度ばかりだ。
僕の魔力量が欠陥に見えているようだね。
でもそう見えているうちは、僕を魔力量で圧倒できないだろうね。
MPが12でもやりようはいくらでもあるということだ。
僕は足取り軽く、次の魔法試験へと移動するのだった。
魔法試験の会場は、屋外射撃場になっていて、派手な魔法を撃てるようになっている。
試験官が言うには、魔法試験の的には魔法の威力を測定できるようになっているらしい。さっきの試験会場と同じだ。
こっちの会場でも、受験生の驚く声が聞こえてくる。
「なんだあの魔法、剣を操っているぞ!?」
「あの金髪、すげぇ!風魔法で300ダメージ以上出しているぞ!」
「いっけぇ、ファイア・ボール!!!」
「くらえ、アイスエッジ!!!」
「受けてみるがいい!サンダーボルト!!!」
魔法の爆発音と色鮮やかな魔力の爆発。
こんな光景を見るのは、ゲーム以外にはないと思ってた。
だって、外に出ないし。
やっぱり少しだけ気持ちが昂る。
それなら、少しだけほんの少しだけ。
「魔法を覚えた意味があったよ!」
「武器生成【アイアンダガー】からの......」
「全属性付与。」
僕のスキルで生み出したアイアンダガーに全ての属性を付与した。
後はこれを投擲するだけだ。
「よいっ...しょっと!」
そうして投擲されたアイアンダガーが的に当たると魔力の花火が上がった。
色鮮やかに火、水、氷、風、雷、地、光、闇と属性が一斉に爆発する。
それがありえていいわけがない事象だと、魔法使いなら一瞬で理解できるだろう。
魔法を使うとき、2つ以上の属性を使うのには卓越した魔力操作が必要となる。
それに適正属性が人には存在する。
得意な属性があれば、不得意な属性がある。
そうなると全属性を操るということは、不可能に近いことになる。
だからこそ、目の前で起こった魔法の爆発は馬鹿げているんだ。
だってそれは、人ではないということの証明だから。
「なんてね?もしかしたら、天文学的確率で全属性を操ることができるかもしれないじゃんね?」
ただ、今の魔法の致命的な欠点があるとしたら。
「マジで威力がない!」
これに尽きるよ。
表示されたダメージは10ダメージ。
まぁそうなるよね。
「次!」
そしてそれを見ていた試験官が次の受験生に魔法を放つように促した。
誰も僕の全属性に反応しないのはあの爆発が小爆発かつダメージが出ていないからだろう。
たぶん、大魔法使いと呼ばれる人じゃなきゃあの全属性爆発付与は無属性魔法にしか見えないだろうな。
さて次は体力測定か。
久しぶりに動くから、ちゃんと体動くかなぁ?
結果から伝えようと思う。
体力測定は平凡な結果だった。
何か特筆するようなこともなく、さっと終わった。
そして、ようやく最後の試験だ。
模擬戦闘試験、受験者のありとあらゆる能力を使用して試験官に自分の実力を見せる試験。
もちろん、試験官を殺害すれば失格だ。
だが、それ以外のことは何をしてもいい。
何をしてもいいということは、それだけ試験官が強いということだ。
ネット情報では、元SSランク冒険者が担当していたこともあるとか。
それが今回の試験官なら、いやだなぁ。
そう思いつつ、模擬戦闘試験会場に向かう。
試験会場ではすでに試験官と受験生が戦闘しているのが見えた。
試験官は受験生がちゃんと実力が出せるように立ち回っているように見える。
それでいて、全ての試験官には余裕があるように感じられる。
きっと、彼らからしたら僕たちはまだまだ子供なんだろうな。
実際、子供だしね。
「よし、武器はこれでいいかな。」
僕は武器が入っているボックスから、二本の短剣を借りていく。
「風槍院 アニマさん。12番の試験官との戦闘になります。」
試験会場のスタッフにそう言われて、12番の試験官の前に行く。
「君が風槍院アニマ君で合っているかな?」
そういったのは、爽やかな顔をした試験官だった。
「はい、風槍院アニマです。」
「よろしく!では、模擬戦闘試験を開始する。」
試験官はそういって剣を構える。
取り合えず笑顔で僕が動くの待っているのを見るに、先手は譲ってくれるようだ。
それならまず、近接戦を仕掛けてみようかな。
両手でダガーを構え、試験官に向かって一気に加速する。
もちろん身体能力強化は使用している。
そうして加速した速度を使って......
「クロスエッジ!」
その二連撃を試験官は構えた剣で防御するだけで防いで見せた。
やっぱり真正面からの攻撃はダメだったね。
それじゃ、次だ。
左側に移動して脇腹を切りつけようとするも、すでに剣で防御されていて金属音が鳴り響いた。
僕の狙う場所はばれている。
分かりやすく狙っているからね。
じゃあ次は、乱舞でも叩き込もうかな。
両手に持ったダガーを素早く上下左右に振って、切りつけ試験官の隙を探す。
しかし、こっちの手数の方が多いはずだが、試験官は正確にそれを一つの剣で捌き切っている。
どうやら僕は遊ばれているらしい、その証拠に試験官は僕にウィンクしてきた。
なんか腹が立つな。
この感じだと反応速度的にも僕の攻撃が当たることはないだろうな。
なら、一瞬の不意をつくしかないか。
僕は乱舞の最後にクロスエッジを放ち、バックステップして試験官から距離を取る。
また、クロスエッジを放つも防御される。
さて、距離も取ったことだしスキルを使っていこうかな。
「武器生成【アイアンダガーX10】」
「そして、爆破付与。」
「これならどうかな?」
爆破が付与された十本のダガーを一気に投擲すると、試験官は余裕の表情で剣を剣を横に振り切った。
その振りぬかれた剣の風圧で僕の投擲したダガーは全て爆発してしまった。
「これもダメか。しかも、振りぬいた剣の風圧で落とされた。どんだけパワーがあるんだ......?」
もうこれ以上僕の切り札はない。
いや一つだけあるけど、それを使うと絶対疲れる。
でも、この試験官の余裕を崩してみたくはある。
う~ん。
まぁいいか。
クラスが少しでも上に行けるんだったら、使った方がいいよね。
呟いて聞こえないように...
「アセンション。」
その直後に爆発的な加速でムカつく試験官の背後を取って、ダガーを叩き込む。
急な加速に試験官は対応が遅れたようで、剣での防御が間に合わない。
「クロスエッジ!」
その2連撃が試験官の背後を捉えて、当たる直前までさしかかる。
「ウインドブラスト。」
だが、試験官の右手から魔法が放たれていた。
「まっずぃ!」
咄嗟に短剣で防御するが風魔法が直撃して、試験のステージから吹っ飛ばされる。
試験場で何回か転がった後にようやく僕の体は止まった。
「痛った!......くはない?」
どうやら威力が制限されていたらしく、吹っ飛ぶだけで済んだ。
本来の威力ならば、僕の体はズタズタになっているだろうから、試験官はちゃんと手加減していてくれていた。
「すまない!大丈夫だったか!」
試験官の男性がすぐさま僕の容態をうかがってきた。
「えっと、大丈夫です。威力もありませんでしたし。」
「そうか、けがが無いようで良かった。それにしても、いきなり君が加速したから反射で魔法を撃ってしまった。一体どうやって加速したんだ?」
「ちょっとしたスキルです。」
「......スキルか。分かった。教えくれてありがとう。いい戦いだったよ。」
「こちらこそありがとうございました。」
そういって、僕は模擬戦闘試験の会場を離れる
これでようやくすべての試験が終わった。
「ふぅ、これで家に帰れる。帰ったら漫画読もうかな。」
最近の漫画は面白いものが多くて、読み飽きないよ。
そんなことを考えながら、魔導モノレールの駅に向かう。
それで今回の試験結果なんだけど、明日にはメールで送付されるようだ。
まぁ結果がどうなっても、僕が学園でやることはあまり変わらないだろうな。
「たす...け...」
近くで誰かが叫んでいる声がする。
「めんどくさいなぁ。」
そう思いつつも、叫んでいる声を頼りにその方向に向かっていた。
助けられる相手ならいいけど。
叫ぶ声をを頼りに近くに来てみるとどうやらこの裏路地から聞こえてきているようだった。
裏路地に入ると、そこには二人の女の子が顔と服のいかつい男達に詰め寄られている状況に出会ってしまった。
考える限り最悪の状況だ。
女の子は銀髪の赤目できりっとした感じの子で、もう一人の女の子はクリーム色の髪をした碧眼の子だった。
「おいおいお嬢さんたちよぉ、俺たちと遊ぼうぜぇ~」
「誰があんたたち下衆なんかと遊ぶものですか。失せなさい。」
「おいお嬢ちゃん、そんな口きいていいのかよ。」
「ええ、あなたたちよりも強いですから。」
「おうおう、威勢がいいこった!」
「吼えるねぇ。ガキのくせによぉ。」
「レベル差がどれだけやべぇのかその身に味合わせる必要があるみたいだなぁ。おいおめぇら囲んでさっさと遊ぼうぜ。」
「そうですねぇ!兄貴!こんなガキどもが俺たちグレイレギンスにゃかなわないすっからねぇ~」
そういったグレイレギンスのメンバーは女子二人を壁際に追い込んでいく。
銀髪の子は身なりから相当いい身分、どこかの貴族のように見える。
その銀髪の子が手を出させまいとしているクリーム色の子はそれ以上の身分だろうとわかる。
それにしても、貴族なのに戦闘能力がないはずがないし、護衛もいない
おかしなことに銀髪の子は剣を抜くだけ抜いて、けん制しているだけで攻撃しない。
突破口を探しているのか、それとも人を殺したことがないのか。
どちらにせよ、助けを欲しているようだ。
「ちょっとばかり手伝うとしようかな、ここまで来ちゃったし。」
そういって僕はウェポンリングから銀色の狙撃銃を取り出す。
この狙撃中に装填されている弾丸は非殺傷だから殺すことはない。
スコープに目を通して狙うのは兄貴と呼ばれた男。
照準を頭に合わせトリガーを引く。
「悪いことはよくないぞ......っと。」
パンッ!!
と銃撃音が鳴り響く。
「「きゃぁっ!!」」
放たれた弾丸は吸い込まれるように頭に直撃して兄貴が倒れる。
それに気づいたグレイレギンスのメンバーたちは......
「くそ!!!もう治安維持部隊が来たのか!撤退だ!」
といって兄貴を置いて逃げていった。
情けない奴らだね。
僕はすぐにシルバーレイブンをウェポンリングに収納して、裏路地を出る。
「お節介は、自分の身を滅ぼす毒って爺ちゃんが言っていたらしいけど。ホントかもなぁ。」
貴族を助けたら...きっと面倒なことが待っている。
それだけは嫌だ。
僕は静かに誰にも注目されずにいたいんだ。
小説とか漫画だったらここで貴族を助けて大丈夫ですかって言って、なんやかんや物語が始まるんだろうけど。
そんなの間違いなくめんどくさい。
「だからここで選ぶ選択肢は、ばれずに逃走の一択だよね。」
僕は魔導モノレールの駅に直行し、爆速で家に帰った。
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