第2話 自殺サイトの住人1

十二月八日
 死のう。そう考えていた僕は、迷惑をかけないために地図にすら載っていない場所に来た。『茨剣山』山中に張り巡っている茨がまるで生花で使う剣山のようだとそう呼ばれている…らしい。そんなこんなで開拓は難しく、土砂崩れの危険性があるため周囲に建物はない。そして、その山に入るための道は落石によって通ることが不可能に。そのため地図にはのらなく、古い文献にしか記述がなかったのである。そんな山にどうやって入るか?そりゃ…落石があったのがだいぶ前だからな、もろくなってるし。時間をかければどうにかなるってわけだ。まぁそんなこんなで僕は茨剣山へ入った。山のまわりを歩いていると、人が山に入った形跡を見つけた。こんな山にどうやって入ったのだろう?不思議に思うが、とくに深く考えることもせずに、道のようなところを歩く。しばらく歩いていると山小屋のようなものを見つける。木造の少し小さめの家だ、小屋のようだがいうほど小さくも無い。…山への道が閉ざされたのはおよそ五十年前だという。だとするとこの家は五十年以上前に建てられたのだろう。


「すげぇな。綺麗に残ってる。」


 静かな山に僕の声が響く。とにかく僕は家に入ってみることにした。
 家に入ってまず目に入ったのは白骨化した男性の遺体だった。そしてその横にあった机の上に日記と書かれたノートが置かれていた。ちなみに冒頭の文はこの日記を要約して書いたものだ。錆びたナイフが男性の横に落ちているため、冒頭の文の通りに自らの手で死に至ったのだろう。だがおかしなところを見つけた。冒頭の文には自らを刺し、血が流れる描写までされている。胸を刺したあとあの量の文字を書けるだろうか?そうなるとこの文章は自分で胸を刺す前に書いたことになる。文章には自分が人間だということに気づき、パニックになって自死したように書かれている。しかしその通りだとすると、自分を刺したあとあの量の文章を書いたことになる。普通に考えて、おかしい。そうすれば男性が人間のことが怖いというのは嘘になる。あらかじめ嘘を書いた日記をそばに置き、自殺する。しかしなぜわざわざそんなことをしたのかが問題になる。


 もしも他殺だったならどうだろうか?人気のない山で人を殺し、自殺に見せかける。完璧である。でもそこで一つ疑問がうまれる。
この家はなんなんだ?
どうやらかなりの日数ここに住んでいた形跡がある。この男性はおそらくここで暮らしていたのだろう。やはり人間から離れるためにこの家に来たのだろうか?だとしたらあの日記は本当で?そこまで考えたが、そういえば僕の本来の目的は死ぬことだったと思考を停止させた。


 僕の垢のフォロワー様たちへ
どうもみなさんお久しぶりです。これから僕はここで睡眠薬を三箱分飲んだ後、致死量の毒を点滴静脈注射します。どうせ死ぬと思うので、もしよかったら死に様を見に茨剣山まで来てみてください。


それでは、おやすみなさい。

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