第41話
17時。ダンジョン入り口ゲート前。
集合の時間だ。俺以外のメンツは全員揃っている、どころか、関係ないはずの奴らまで集まっていた。
「おいおい、迂闊に集まるとワーウルフが混ざるぞ」
「お前は人狼ゲーム得意だろ?」
軽口で返してきたのは山里だった。俺は肩を
スイ、ヒルネ、トウカ。
「ナガ。
「そうか。ガキのくせに立派じゃねえか」
スイの姿を改めて見れば、装備が変わっている。
金属製だった胸甲は、ライトグリーンの鱗のような質感に。新たに首についた細いチョーカーにはびっしりと魔法言語が刻印されている。武器は細剣から、錫杖のような長い杖に変更されていた。
「思い切ったイメチェンしたな」
「攻撃のリーチと魔法の火力を上げてみたの」
良い選択だ。正直、細剣じゃあ急所に刺しても死なないようなモンスターだっているだろうしな。
「で、ヒルネは面白い仕上がりだな」
「へへへ」
基本的な部分は変わっていないが、短剣の他に、体の各所にベルトでナイフを固定している。グリップ部分に引き金のような構造があり、ナイフのケツから小さな金属缶がはみ出している。
ワスプナイフ。敵に突き刺したあと、体内に高圧のガスを吹き込み、内側から爆散させるナイフだ。実際に使っているシーンは見たことないが、随分と凶悪なものを持ってきている。
「トウカは――戦争でもするつもりかよ」
「ふふ、戦争をしに行くのですよ」
色んな感想を飲み込んで、ようやく出たのがこの言葉だった。
上品に笑うトウカだが、その姿は上品とか下品とかそういう次元じゃない。一言で表現するなら――SF兵士。
無骨な重機をそのまま人間の外側に張り付けていったようなデザイン。腰回りにバカでかいユニットがついており、足の外側に沿うようにユンボのアームみたいなのがついて、体重を支えている。腕にも同様のパーツがついており、右腕からは杭のようなものが飛び出している。
「え、それがパワードスーツで合ってんのか?」
「はい。火力と体重の不足を補うために、特別に用意いたしました。右腕のこれは、メイスの代わりに
俺は絶句した。
1人だけ何か違いすぎる。
確かに25年前時点で、実用的なパワードスーツは幾つも販売されていたし、軍用の試作品では、こういったごっつい代物も作られていた。だが、いくらなんでもこれは……。
「男の方って、こういうのがお好きなんですよね?」
「間違っちゃいねえが……」
恐ろしいポイントその2が、パワードスーツの表面に
「ナガもちょっと装備変わったね」
そうだ。俺自身も少しばかり装備を変えている。
メイン武器はツヴァイハンダー。これは変わらずだが、ちゃんと手入れをしたことで、切れ味なんかは上がっている。
服装は変わらずの戦闘服だが、体の各所にプロテクターを仕込んでいる。強化樹脂製の軽くて頑丈なやつだ。それと、腰の後ろ側にククリナイフを取り付けてある。
「今回は本気出さねえとな。山里たちは完全武装だが、もしかして手伝ってくれんのか?」
「おう。貸しイチな」
本当に助けに来てくれたらしい。そこまで深い付き合いでもないのに、良い奴らだ。
「今度ご馳走を用意してやるよ。俺の手料理だ」
山里は顔をくちゃっとさせた。どういう感情の顔だ、それは。
シャベルマンも気合が入っているのか、今日はシャベル二刀流。なんか怖いから触れないでおく。
俺は鬼翔院の兄妹に声をかける。出発のこの瞬間、憎まれ口は無しだ。
「よお、俺はお前らの戦い方も実力も知らねえ。道中で適当に戦って判断させてもらう」
「勝手にしろ」
「よろしく。僕も永野さんの戦いを生で見られるのを楽しみにしているよ」
俺は隼人だけと固い握手を交わした。
んで、
「支度に必要な金の前入金、助かったぜ。給料の払いが早い雇い主は、良い雇い主だ」
「私は――正直、あなたがロボを討伐する必要は無いと思っています」
「なんでだよ。俺ほど理由がある奴もいねえだろうが」
「はっきり言いましょう。あなたは人生の半分をダンジョンに囚われました。そして持ち帰った情報は、多くの探索者が一生を費やしても足りないほどのものです。あまつさえ、今回のロボの件でも既に十分な貢献をされています」
「――――いっぱいがんばって、かわいそうだね。やすんでなさい。ってことか?」
支部長ちゃんは唇を噛んだ。
「俺を侮るな。借りは返すもんだろ」
俺は支部長ちゃんの返事を待たず、背を向けた。
これ以上の話は要らねえ。支部長ちゃんも、蓮君と康太君も、田辺巡査部長も、視聴者のみんなも、あとは地上のことに専念すればいい。
俺がダンジョンの階段に足を踏み入れると、仲間の3人がすぐ後ろに続いた。さらに後ろから、ぞろぞろと一緒に潜るメンバーが続く。
目標は狼の王、ロボの首。
ダンジョンアタック開始だ。
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