【短編/1話完結】乾燥とささくれに混じる感想

茉莉多 真遊人

本編

 昔、ささくれができたときに「どうして、ささくれができるのか?」を調べたことがある。簡単に言うと、皮膚が乾燥してしまうとできてしまうらしい。


 ささくれはとかく気になる。


 ぴょんと出ているのもそうだし、何かと引っ掛かってよりひどくなるのもそうだ。子どもの頃には噛み千切ろうともしたこともあるけれど、結局、少しばかり残ってしまって、その残ったわずかなささくれが何かに引っ掛かって悪化する。


 そんなこんなで血が出てしまったら最悪だ。


 手に触ったものに血が付くことも多いし、お気に入りの服にピッと血がついてしまうことだってある。それに手を洗う時に血の出た部分が水や石鹸に触れるとしみて痛い。


 とかく、ささくれにいい思い出などありもしない。


 どうして急にそんなことを考え始めたのか。


 ささくれは皮膚に限らないとふと今思ったからだ。これだけでは要領を得ないだろうから、もう少し詳しく説明すると辞書で「ささくれる」を引いてみると分かる。


 ささくれるとは、「木や竹の先端とか表面とかが細かく裂けてしまう」という意味のほかに、今思い出したような「爪の生え際の皮がめくれたりさかむけたりする」というものもある。


 さらに、3つ目があって、それは比喩表現で、「感情がすさんでしまってとげとげしい」というものだ。


 今の説明だけではまだまだ分からないだろう。


 ここからが本題で、目の前にいる先輩のことだ。


 先輩は上司やさらに上の先輩から認めてもらえず、ああだこうだ言われて、仕事に対して心に潤いがないようで、年々愚痴が多くなっている。今聞いている愚痴もかれこれ1時間になるかというくらいに長々と続いていた。


 先輩は自分がされているからか、周りの言葉や行動にも引っ掛かって指摘をしていた。


 まさにささくれだ。とかく引っ掛かるし、状況が悪化する。


 結局のところ、残念ながら、皮膚のささくれのように切り飛ばすわけにもいかず、このささくれはずっと放置するほかなかった。

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