第8話 早速弟子

「皆の者、この者の顔と名前をよく覚えておくように。彼の名はリョウマ、まだ爵位こそないにしろ、彼は我が国始まって以来の大器の持ち主かもしれない。驚くべきことに、リョウマは転移門を自由自在に出すことができるのだ。その力で是非とも我が国に貢献してもらいたい。皆においては努々そのことを忘れるでない」


 シトリー様に強引に連れて来られた夜会の主役は俺だったみたいだ。何しろたった今、国王から直接紹介に預かり、俺の顔と名前は夜会に集った貴族達に広く知れ渡ったのだから。


「リョウマからも皆に向けて一言頂けないか」


 ふぇええ!? そんな急にスピーチ求められても困る……。


 吹き抜けの大きな一室である会場のシャンデリアは、夜会に出席した気品あふれる面々を俺の視界に映し出している。みんなこっちを凝視してて、沈黙がかなり痛い。


「えっと、国王様直々にご紹介に預かり恐悦の極みだと思います……皆さんが何かお困りのようでしたら、お金との要相談になりますが――俺もバルハート国のお役に立てるよう努めますので、なにとぞよろしくお願いします」


 短いスピーチと共に頭を下げると、会場から拍手を送られた。

 その後、国王様は「では皆の者、今宵の夜会を堪能していってくれ」と祝杯をあげた。


 会場中央からシトリー様やコビーの待つテーブルに戻る。

 すると、周囲にいた貴族たちが交流を持ちに挨拶してくるのだ。


「みすぼらしい輩がいるなと侮っていたが、いざ着替えてみると様になっていますな」

「はは、ありがとうございます」


「リョウマ殿、私は商社を営んでおりまして、貴方の助力をぜひ仰ぎたい」

「ご依頼の請求はすべて金貨になりますが、よろしいですか?」


 こんな感じに、次々と依頼が舞い込んだ。

 シトリー様の計らいあって、俺はもうこの世界で食うに困らないだろう。


 なら、後はコビーとのんびり余生をすごしたいな、なんて考えていた時だった。


 ある貴族家の当代が、コビーと同じ年頃の息子さんを連れて挨拶にやって来た。


「リョウマ殿、内の息子があなたに聞きたいことがあるようでして」

「ああはい、なんでしょう?」


 紹介された息子さんに目をやると、彼は意志の強そうな瞳で言ったんだ。


「俺を貴方の弟子にして頂けませんか!」

「……面目ございません、私は未熟な身ですので、弟子を取るなど恐れ多くて」


 緑髪のショートカットとブルーの綺麗な瞳を持った彼は弟子にしてくれと一点張りだった。弟子って、どういった方面で教えて欲しいのだろう。なんとなく偉くなれそうだから弟子にしてくれ! みたいな感じだろ?


 全力でお断りさせて頂きます!


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