第6話 四千万円相当
月曜日から仕事を再開し、週末の金曜日まで俺は駆け抜けた。
月曜日はおだやかだった表情も翌日から険しくなり。
水曜日の朝になると無性に暴れたくなって。
木曜日は明日になれば生存率も高くなるなどの訳のわからないことを考え。
そして金曜日、残った仕事は来週の俺がなんとかしてくれるとの理想を掲げ退勤した。
家に帰るとコビーが俺のベッドで惰眠を貪っていた。
「ふぁ……おかえり、リョウマ」
「寝てていいよ、明日から俺も休みだしな」
「ん……あ! そうだ! リョウマ、領主様がリョウマに会いたいって言ってたよ」
おー、マジか。
こちらから打診していたが、タイミングがいいな。
「領主様はいつ会ってくれそうだった?」
「明日、明日ならリョウマも都合つきそうって言っておいた」
「わかってるねぇコビー、ありがとう」
じゃあ、今日はさっさと食事摂って、お風呂入って爆睡するか。
すると門からコビーのお母さんが出てきた。
最近はルウさんやお母さんも俺の部屋に訪れてくれるようになっていて。
「ごめんねリョウマくん、おトイレ借りるね」
トイレを借りたり、お母さんは俺の台所を使って手料理を振る舞ってくれたりする。
コビーの両親はだんだんと俺の部屋に抵抗がなくなっているみたいだ。
◇ ◇ ◇
翌日、朝六時きっかりに起床。
朝六時に起きる習慣だけはなまけたくない。
なぜなら月曜から始まる仕事が辛くなるから。
今日は領主様と面会する日だ、服装はお父さんから頂いたものでいいとして。
交渉材料の調味料をちゃんと確認し、コビーを連れて例の領主邸宅に向かった。
領主邸宅の門前で待っていると、執事服の人が門を開けて中に通してくれた。
そのまま正面玄関から左に曲がり、廊下手前の豪華そうな部屋の椅子に座った。
しばらく待っていると、領主様がやって来た……ほう、女性だったのか。
燃え盛る赤い毛髪は肩甲骨あたりまで伸ばして、右肩に吊り下げている。
金色の瞳とあいまって、領主様の容貌は美しさがきわだっていた。
「初めましてリョウマ殿、私がラムゲイム領の領主のシトリーだ」
「お初目に掛かりますシトリー様、今回は急なお話に聞いて頂き感謝いたします」
彼女の来室と共に席を立ち、彼女が対面席に座ると同時に俺も腰掛けた。
「こちらが領主様に購入して頂きたい調味料になります、どうぞお納めください」
そう言うと同時にコビーが下に置いていた麻袋をテーブルの上に乗せる。
領主様は袋の中にあった調味料をうかがい、俺の目を覗き込んだ。
「……いくら欲しい?」
「出来れば金貨で買い取って頂きたいのですが、その場合ですとどのくらいになりますか?」
「リョウマ殿は金貨というよりも、金そのものが欲しいんだったよな?」
ええまぁそうです、でないと日本で換金できないので。
領主様は俺の事情をあるていど知ったうえで、俺の手に両手を重ねた。
女性特有の
「折り入ってリョウマ殿に国策を頼みたいのだ、調味料自体は金のインゴットで取引しようじゃないか。私が国に具申している内容を遂行してくれれば、金のインゴットをさらに提供しよう」
「……? とりあえず金のインゴットって一つ何キロぐらいでしょうか」
「一キロだな、それを二つ、調味料の代金として支払おう」
つまり金二キロ!? ふぉおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!
ありがとう異世界小説!! お前たちのおかげで二千万ぐらい換金できそうだぜ!
「あ……でも困ったな」
「どうした?」
「金のインゴットは素晴らしく喜ばしい代物なのですが、出来れば金の調度品の方が都合よくて」
恐らく、その方が怪しまれず換金できると思う。
「ならば職人にいって金細工にしてもらおう、他に何かあるか?」
「あ、えっと、シトリー様がさきほど仰った国策ってなんです?」
尋ねると、隣にいたコビーが耳にひそひそと語り掛けてきた。
「シトリー様はね、リョウマが作った村と街を結ぶ門で国の主要都市をつなぎたいんだって。そうすることで無駄な旅費や経費、時間をおさえたいんだって」
ふむふむ、俺の門を移動用として使いたい訳なんだな?
シトリー様はいぜん、俺の手を握りしめている。
すべすべとしていて、極上の肌触りではある。
そんな彼女に今度は化粧品でも持って行って買ってもらおうと想起した。
「シトリー様、どうぞお手をお離しください」
「す、すまないリョウマ殿。国の主要都市をあなたの力でつなげることが出来れば、それは国にとって大きな財産となる。今までもあなたの力のような魔法が出来ないか研究されているほどだ……もし、あなたがこの提案を引き受けてくれるのなら、私の名に誓ってあなたに称号を与えていただくよう国王様にお頼みする」
そこで俺は急きょ、コビーに日本に行って化粧品を購入してくるようにお願いした。ここ最近のコビーは日本でいけるテリトリーをじょじょに広げていたので、化粧品売り場も把握している。
「小間使いにするようで悪いけど、頼んだ」
「わかった、じゃあ行って来るね」
コビーが退室すると、シトリー様は眉尻を下げて不安そうにしていた。
「私の提案は聞き入れてもらえないのか? そ、そうだよな、その力はリョウマ殿の唯一無二のギフトだろうし、そう安売りはできないか……」
たしかに安売りはできない。
彼女の言う国策である主要都市を結ぶ門をつくったとして、その後はどうなる。お役目ごめんとばかりに捨てられるんじゃないか? 元来お国ってあんま人一人のことまで考えないものだし。
そのための称号授与の提案なんだろうけど。
称号を貰えれば国に何かしら発言できることにもなるだろうし。
「具体的に称号を頂くと、どんな生活が保障されるのですか?」
「称号の位によってさまざまだが、その年に応じた給金が出される。リョウマ殿一人が暮らしていくのは余裕だ」
ふむ! であればその話乗った!
称号は頂けるかどうかわからないので、シトリー様には金を倍プッシュしてもらうように交渉した。彼女は少しためらったけど、今すぐには用意できないが、一週間後までには用意してくれるとのことで交渉終わり!
やったね、これで俺達は四千万円そうとうの貯金が出来そうだぜ。
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