第5話 誰かが帰りを待っていてくれる
領主様の邸宅の警備をしていた衛兵さんに伝言をたくして、一先ず去った。
返事はルウさんが年貢を納める時に聞かせて欲しいとの希望も伝える。
日曜はコビーと都市を散策してほぼ終わり。
最後にコビーのお母さんに調味料をほんの少しおすそ分けさせて頂いた。
「ありがとうねリョウマくん、すっごく助かるわ」
ポンポンと肩を叩かれ、俺は気をよくした。
「……コビー、お願いがあるんだけどさ」
「なになに?」
彼女の黄金色に輝く毛髪から、シャンプーの匂いがした。
出会った当初は獣臭いと言ってしまったらしいけど、今は普通にいい匂いがする。
「俺、明日から仕事があるから、こっちに足を運べなくなるんだ」
「そっかー、仕事ならしょうがないよ」
「だから何か用事があったら、俺の部屋を訪ねて欲しい。特に領主様との面会が可能なら俺もスケジュール合わせるよう努力するからさ。俺のいない間はコビーが頼みだから、よろしくな」
と言い、コビーの頭をポンポンと叩く。
かたわらで見ていたお母さんが頬を膨らませて笑っていた。
その後は家に帰り、浴槽につかって土日の騒動の疲れを癒して寝た。
家の壁にはコビーの実家とつながる門があって、明朝それを目にしたことで夢じゃないことを改める。そうするとなんか気分が良くなってさ、開放的で毎日が楽しみになって来る。
会社への出勤も門一つで解決できちゃうし、これは俺の人生軌道に乗ったんじゃないか?
会社の業務をこなしつつ、今の内から色々と調べておく。
例えば金を売って利益が出た場合に掛かる税金についてなど。
週初めの仕事はルンルン気分であたることができた。
退勤して家に帰る時も門を使って一足でマンションの前まで帰る。
玄関から扉を開ける前、中で物音がしていた。
また農村の子供たちが悪戯しているのか、と思いきや、コビーがいた。
「あ、おかえりリョウマ」
「ただいま、早速用事ができた?」
聞くと、彼女は首を横に振る。
「私の家よりもこっちの方が過ごしやすいから、いさせてもらってるだけだよ」
「まぁそうかも知れないな」
「邪魔だった? 邪魔なら出て行くから、そう言ってよ?」
邪魔だなんて思えないよ。
一人暮らし特有の寂しさを痛切に感じていたし。
誰かが帰りを待っていてくれるっていうのは、大切なことなんだと知った。
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