第44話
「どうかしました?
出来ればその辺を是非詳しく!」
私は日本での生活で毎日何を感じていた?
楽しかったことも悲しかったことも、色んなことがあったはずなのに、それがわからない。
今覚えてることが、本当に自分の記憶なのかとすら思えてくる。
「んー……。
まぁ良いじゃないの、その辺は。
とりあえず、ヒマリと同じ。どこにでもいそうな普通の女子大生だったよ」
「うぅ……めっちゃ気になる。
でも、そうですよね。彼氏さんとの思い出はサキさんにとって大切なものでしょうし、軽々しく聞いて良いものじゃなかったですね。
ごめんなさい」
どう返せばいいかわかなかった私の返事を、どうやらヒマリは私にとって都合のいいように解釈してくれたみたい。
ヒマリが引き下がったことで、他のみんなもこれ以上このことを聞いてくることはないよね。
お年頃コンビはまだ気になるみたいだけど。
「全然いいよ、気にしないで。
それで、ある日突然こっちに来た訳なんだけど……この先本当に聞く?」
改めて確認する私に、ヒマリは先程までの楽しそな表情を消し、真剣な顔で頷く。
「そう……。じゃあ、話そうか。
あぁ、二人は出ててもいいよ?」
私が声を掛けたのは、レイシアとソフィアだ。
二人の家の事件のことを直接話すつもりはないけど、これまでどんな任務をして来たかを話せば二人が自分の家や家族のことを思い出してしまうのは避けられないと思う。
それはキツいんじゃないかと思ってのことなんだけど。
「いえ、わたくしにも是非聞かせてください」
「私も聞きたいです」
真っ先に答えたレイシアにソフィアも続く。
何を思って二人がそう言ったのかは私にはわからないけど、聞きたいと言うのなら止める理由もないか。
「わかった。そうだな……まずは最初に森の中にいた頃のことから話そうか」
山賊紛いのことをして過ごした森の中での生活。
とにかく生きることに必死で、そのためなら何でもやった。
この国に引き取られてからは、それが任務という形に変わったけど。
森の中で盗賊達を襲うのも、罪を犯した貴族を暗殺したり拷問したりするのも、結局のところやっていることは同じだ。
必要なら殺すし、知りたいことがあれば拷問をしてだって聞き出す。それだけのこと。
そして私は、それらを自分の意思で、自分のために。
楽しんでやっていた。
「まぁ、私はこんな奴なんだよ。怖くなった?」
私の話を聞いているうちに、ヒマリは顔を真っ青にして俯いてしまった。
家族の拷問を私が楽しんでいたと聞いたレイシア達は表情こそ変わってないけど、どう思っているかはわからない。
「私はね、壊れた化け物なんだ」
自虐でもなんでもなく、真実そう思っている。
命を奪ったのも拷問したのも、全部私がしたことだし、それに対する後悔なんて全くない。
私は化け物だし、怖がられて避けられるのが当たり前だもんね。
それでも……うん。
この子達にもそう思われるのは、ちょっと。
本当にちょっとだけ。
悲しいかもしれない。
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