第42話
「実は、やっぱりあたしもクラリス様を皆さんと一緒に助けに行きたくて。
それで今日の朝、王妃様に改めてお願いしに行ったんです」
簡単には諦めそうにないと思ってたけど、予想通り諦めてなかったかぁ……。
それに、陛下じゃなくて王妃様に話に行くあたり、周りの人をよく見てる。
昨日の感じだと、陛下に直接話しても即反対されるだろうし。
「そうしたら、王妃様にまずは一度サキさんときちんと話してみなさいって言われて。
あたしとしてもサキさんとは日本のこととか色々話してみたいっていう気持ちはあったんで、突然で悪いかなと思ったんですけど、こうして訪ねて来てしまいました……」
「なるほどね」
私と同じことを王妃様から言われたわけだ。
それですぐにうちまで来るなんて、ヒマリは見た目とは違ってかなり行動力あるな。
いや、そもそもクラリスを助けたくてうちの国まで来てるくらいだもんね。
このくらい何でもないのかもしれない。
私は朝からずっとうじうじ悩んでたのに。
「それで、その。
気を悪くしないでほしいんですけど、サキさんて本当に20代なんですよね?」
ヒマリがすごく申し訳なさそうに言ってくるけど、私としては慣れたもんだから何とも思わない。
「あぁ、この見た目でしょ?
なんでかこっち来たらこうなってたんだよね。
過去にこっちに来た『招き人』にも『流れ人』にも同じようなことになった人はいないみたいなんだけどさ。
ヒマリは私みたいなの聞いたことある?」
「いえ、ないですね。
でも、あたしも自分とサキさん以外にはこっちに来た人知りませんし……」
うーん、やっぱりそうか。
比較的頻繁に『招き人』を聖女として召喚してるっていう神聖王国でも聞いたことがないってなると、本当に私だけなのかもしれない。
「まぁ、今のところこうなったせいで困ってるようなことも特にないから良いんだけどね」
「すみません、あたしが聖女として神聖王国にいれば何か調べられたかもしれないんですけど」
「そんなの気にしないでいいってば。
ヒマリが神聖王国にいた時は私がこうなってるの知らなかったんだし、もう聖女としては戻りたくないんでしょ?」
私の言葉に、ヒマリはこくりと頷く。
全く、何も悪くないのになんで謝るんだか。
良い子過ぎない?大丈夫?
「そんなことよりさ。
日本にいた時のこととか、こっち来てからのヒマリのこと教えてよ」
「あたしのことですか?」
「うん。
ほら、私はもうこっち来てから三年過ぎてるし、最近の日本がどんな風なのかも聞きたいし」
たかが三年。されど三年。
何もかもが目まぐるしく変化していくあの国は、今どうなっているんだろう。
そして、そんな国で生まれ育ち、突然この世界に招かれてしまったこのお人好し過ぎる子は何を思って今日まで過ごして来たんだろう。
私と同じような境遇にいるようで、実際には似ても似つかない日々を過ごしてきたであろうこの子のことが、私は案外気になっているみたいだ。
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