第41話

「実は……聖女様がお見えになっております」


「聖女が?」


セバスチャンの言葉に、驚いてオウム返しで聞いてしまった。

まさか聖女がうちまで来るなんて思ってもみなかった。

そりゃセバスチャンも慌てるわけだ。

て言うか、陛下や王妃様がよく外に出るの許可したな。

うちの国にいること自体が機密扱いなんじゃないの?


「現在は応接室でお待ちになっておりますが、如何なさいますか?」


「さすがに放っておけないよねぇ。すぐ行く」


「お嬢様、お着替えはなさいますか?」


私の言葉を受けて、足早に戻って行くセバスチャンにちらりと視線を向けながらアーシャが聞いてくる。

確かに今日の服装は完全オフモードだから、面会する相手によっては着替える必要はあるけど。


「いや、このままでいいよ。

たぶんあの子は気にしないと思うから」


しかし、どうしたもんかな。

聖女が待つ応接室に向かいながら、内心頭を抱えたくなる。

昨日色々言っちゃったから少し気まずいし、何より今後どうするかまだ全然決めれてないのに。


そんなことを考えている間に、応接室に着いてしまった。

まぁいいや。とりあえず世間話でもして誤魔化そう。うん、それが良い。


「お待たせ」


応接室に入ると、私に気が付いた聖女が慌てたように立ち上がりぺこりと頭を下げる。

その後ろでは、ジェイクとアレクが敬礼している。

あぁ、この二人は護衛兼お目付け役ってとこかな。


「あ、あの!突然来てしまってごめんなさい!」


「いいよいいよ、そんなに謝らなくて。

でも、よく陛下が許したね?」


ものすごく恐縮してる様子の聖女を座るように手で促しながら声をかける。


「えっと……。国王様は反対なさったんですけど、王妃様が口添えをして下さったんです」


王妃様……。何してんの。

まぁ、考えてることは予想出来るけどさ。


聖女に向かい合うようにソファに腰を下ろすと、すかさずレイシアがお茶を持って来てくれる。


「そうなんだ。

それで聖女さんは今日はどうしたの?

あ、ジェイクとアレクも座りなよ」


「いいんすか?それじゃ遠慮なく!」


「ジェイク、お前は……。

隊長、それでは失礼致します」


迷わず腰を下ろすジェイクと、それに呆れながらも私に丁寧に礼をしつつ座るアレク。

この二人は相変わらずだな。


「あの、あたしサキさんともっとお話してみたくて。

それで、もし良ければあたしのことはヒマリって呼んでください」


「うん、わかったヒマリ」


「へへっ……ありがとうございます」


私が名前を呼ぶと、聖女……ヒマリは嬉しそうに微笑む。

おぉ……可愛いな。

いかにも聖女様って感じの笑顔だ。

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