第34話

「不思議でしょ。20代なのにこんな見た目で」


「え!?

あ、いえ、その、すみません。じろじろ見ちゃって」


私が気を悪くしたとでも思ったかな?

聖女が頭を下げてくる。

でも私だって大人。その程度で気を悪くしたりはしない。

まぁ、ヒソヒソ貴族共は別だけど。


「気にしなくていいよ。気持ちはわかるし。

それより、私に助けて欲しいんだって?

神聖王国で何かされたの?」


早速本題に入ろうとする私に、聖女は私が本当に気にしてないと思ったのか、あるいはその話題を避けたいと思ってると感じたのか。


姿勢を正すと口を開く。


「えっと……はい、そうなんです。

あたしは、半年くらい前にライオネア神聖王国にいきなり召喚されました」


そのことは既に陛下から聞いていたから、頷くことで話の先を促す。


「教皇様達が言うには、神聖王国内に瘴気って言うのが発生しちゃった場所が何ヶ所かあって、それを何とか出来るのが召喚された聖女しかいないからってことらしいです」


「瘴気?」


「瘴気というのはな……。

何と説明するべきか。

実はまだ詳しい発生理由はわかっていない。

ただ、放置すると際限なく広がり、土地を殺し動植物を殺し、やがては一国をも飲み込むと言われている。

神聖王国で昔から起きている災害だ」


耳慣れない言葉に首を傾げる私に、陛下が説明してくれる。


「え、それってこの国は大丈夫なんですか?

だってここ聖女なんていませんよね?」


そんなものがこの国でも発生したらたまったもんじゃないんだけど。

騎士団でどうにか出来るものでもなさそうだし。


「あ、それは大丈夫らしいです」


「そうなの?」


「はい。何でも神聖王国でしか瘴気は発生しないらしくて」


「あぁ。過去に神聖王国以外で瘴気が発生した例はない。

理由はわからないがな。

ただ、周辺諸国で大きな争いが起きた後に瘴気が発生することが多いとは言われている」


聖女も陛下もそう言うのならそうなんだろうけど……。

でも、大きな争いの後に発生するって、それ今回のはこの国がやってた先の大戦のせいなんじゃ?


何となくだけど、陛下が聖女に積極的に協力しようとしてる気がしてたけど、そのせいかな?


「つまり、我が国も瘴気の発生に無関係とは言いきれないのだ」


じっと見てたからか、陛下も私の考えていることに気が付いたみたいで肯定してくる。


「つまり、その瘴気ってのを聖女さんが何とかしないといけないから手伝って欲しいってことかな?」


話の流れ的にそんな感じ?

私の能力が有効とも思えないけど。

まぁ、同じ日本人だし手伝ってと言われたら断るのもあれだし。


そう思って問い掛けた私に対し、聖女の反応は予想外なものだった。


「いえ、それは大丈夫です。

浄化……あ、瘴気を消すことなんですけど。

それは終わらせましたから」

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