第31話
「私に話ですか?聞かなくていいですか?
てか、絶対聞きたくないです」
陛下がわざわざ、しかも極一部の人しか出入り出来ない王妃様の部屋までわざわざ出向いての話なんて、絶対に厄介事だ。
絶対に聞きたくない。
爵位と領地の話から逃げたくて陛下に話振ったのが間違いだった。
うん、陛下は無視しよう。
「王妃様、このお菓子なんですけど……」
「実はな、ライオネア神聖王国から客人が来ている。
いや、客人というのは少し違うか」
「……」
陛下め、私の意思は無視する気か。
勝手に話し始めやがった。
「よし、私はそろそろ帰り……」
「隊長ー?」
こうなったら逃げようと思って立ち上がろうとしたら、後ろに立っていたカレンに肩をガシッと掴まれた。
「カレン、私を裏切るのね?よくわかった」
「え……」
カレンの顔が真っ青になり、ダラダラと汗を流しているけど関係ない。
裏切るなら、相応の対応をするまでだ。
「カレン。『貴女は全身の……』」
「わー!!待って!待ってくださいってば!!」
「あらあら」
私が力を使おうとしたことに気付き、大慌てで言葉を遮ろうとするカレン。
そして、それを微笑みながら見ている王妃様。
「あー、話していいか?」
すっかり放置されている陛下が、なんか寂しそうにボソボソ言ってる。
「はぁ……。んじゃ一応聞きます。
なんですか?」
どうにも話を聞かないと帰れそうにない。
カレンが半べそと言うか、ほぼ泣いてるけど、それは放置しておく。
たぶん誰かしらが慰めるでしょ。知らんけど。
「うむ……。ライオネア神聖王国は知っているな?」
「まぁ、一応は」
この世界について勉強した時に聞いた名前だ。
たしかこの国の隣国で、ライオネア教とかって言う宗教がすごい力を持っていて、その教皇が国家元首も兼ねている宗教国家だったはず。
ライオネア教の創始者とされている初代聖女への信仰が盛んで、その聖女が『招き人』だったことから今でも他国に比べると頻繁に召喚を行ってるとかだっけ。
「その神聖王国が半年前に聖女召喚を行ったことは話したな?」
「え?聞いてませんけど?」
陛下は何を当然のような顔をして話してるんだ。
全く記憶にないけど。
「隊長?」
「ん?」
復活したカレンがきょとんとしている。
「以前、任務の報告にご一緒した時に陛下が話されてましたよ?」
「……」
いつだ。
全然覚えてない。
「まー、隊長って真面目に話聞いてると見せかけて、実際は聞いてないこと多いですもんねえ」
カレンがケラケラと笑いながら失礼なことを言ってる。
お仕置したいとこだけど、本当のことだから……うん、今回は許そう。
「ま、まぁいい。とにかくだ。
今、ライオネア神聖王国には『招き人』である聖女がいるのだ」
「へー」
『招き人』なら同じ日本人かな。少しだけ気にならないこともない。
「本来なら、聖女はライオネア神聖王国の大神殿から出る事はほぼない。
だが……」
陛下が難しい顔をして言葉を切る。
あ、ここまでの話を考えるとめっちゃ嫌な予感がする。
どうしよう、本気で聞きたくない。
「その聖女が我が国に来ている。
そしてサキ。お前に助けを求めている」
ほら、やっぱり。
予想通りめんどくさいことになったじゃん。
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