第14話

私は身体能力が低い。


いや、日本人としてと言うか今の体格で考えると普通だとは思う。

でも、それはあくまでも一般人としてはって言うことなのね。


能力のお陰で大抵の相手に苦労することはないだろうし、実際王城に来るまでの生活でもそうだった。


ただ、やっぱり突然襲われたりしたら反応は遅れるし、対応し切れないこともあると思う。


そんな私の弱点を補うために近くに常にいてくれているのがカレンなんだよね。


任務中、何時でも私の側近くにいて、常にあらゆる方向へと最大限の警戒をしてくれている。

だからこそ、私も安心して自分の目の前の相手に集中して能力を使えている訳だ。


それもあってカレンのことは頼りにしてるし、人柄もすごく良い人だと思う。

騎士とは思えないくらい美人だし。


でも……ねぇ?


「もう、いい加減にしなさいって。

そもそもカレン。私貴女と年齢ほとんど変わらないからね?」


子ども扱いしていつまでも頭を撫でるのを許す訳にはいかない。

24歳のカレンとは一つしか年齢差はないんだ。

40代のヒギンスに子ども扱いされるならまだわかるけど。


「隊長って23歳でしたっけ?

頭ではわかってるんですけど、どうしても年下の女の子みたいな気分で接しちゃうんすよねぇ」


訓練に戻ったとばかり思っていたジェイクが、いつの間にか近くまで来ていて、私とカレンがじゃれ合っているのを眺めている。


ちなみにジェイクは21歳だから、私より本当は年下だ。


「それは確かにわかるな。

失礼ながら、隊長は儚げであられるから、騎士としてお守りせねばと日々思っております」


丁寧な言葉でジェイクに同意しているのは、焦げ茶色の髪をした30代の逞しい体付きをした騎士。

ヒギンスに次いでの経験があるアレクだ。


まだまだ色々経験不足な面もあるジェイクの教育係も兼ねているから、この二人は一緒にいることが多い。


「そう思うなら、カレンを何とかしてよ」


ジト目で(実際は無表情のままだろうけど)言う私に、アレクが苦笑している。


アレクもわかってるんだよね。

私が本当に心から嫌がってるわけじゃないってこと。


だって、能力を使えばカレンを振り払うのは簡単なんだもん。

でも、私はそうしていない。


アーシャや執事長も私にはある程度気安く接してくれてるけど、あくまでも主人と使用人という立場は崩さない。


私にこんな風に接してくるのは、部隊のみんなくらいで、私はそれを心地よく感じてしまっているんだ。


こんな壊れた人間にそんな資格があるのかわからないのに。

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