第13話

「隊長もたまには一緒にどうっすか?」


「いや、いい。いつもみたいに見てる」


ジェイクが訓練に誘ってくれるけど、私はそれを即答で拒否。

なんせ、私は近衛の部隊長って言っても剣なんて全く使えない。

そもそもの腕力がないから、剣とか重くて振り回せないしね。

任務の時は一応帯剣するし、公式行事に駆り出される時にも見栄えの為に帯剣したりすることはあるけど、実際には剣を抜いたこともないし。


「たまに体動かすのも気持ちいいっすよ?」


「そうかもだけど、絶対無理ー」


そんなやり取りをしながら訓練場へと入ったところで、それまで私達のやり取りを暖かい目で見守っていたヒギンスが表情を引き締める。


「近衛特別隊!全員集合っ!!」


訓練場全体へと響き渡るようなヒギンスの大きな声に、中で訓練中の騎士のうち数人が反応する。


あっという間に私の元まで駆け寄って来た騎士達が綺麗に並ぶのを見ると、ヒギンスが再び声を上げる。


「隊長がお見えである!全員……敬礼っ!!」


ヒギンスの声に合わせ、ビシッと音のなりそうな勢いで敬礼をする特別隊の騎士達に、私もきちっと敬礼を返す。


ヒギンスに教わりながら練習したから、たぶん綺麗に出来てるはずだ。


「みんなおはよう。楽にして」


私の言葉に敬礼を解く騎士達の顔をゆっくりと見渡す。


「公爵家の件はお疲れ様。次はいつどんな任務が来るかはわからないけど、その時はまたお願いね。

今はそれに備えて英気を養ってちょうだい」


「「「「「はっ!」」」」」


私の言葉に、元気よく答えてくれる騎士達。

私にヒギンスとジェイク。そしていま目の前にいる五人。

以上の八名が近衛騎士団特別部隊の全員だ。


第一から第五まである他の近衛騎士団の各部隊は、通常30名からの騎士で構成されている。


そんな中で特別部隊の八名という人数は異例の少さだけど、それは任務も特殊だからだ。

うちの場合、実戦=暗殺になる訳だけど、そんな大人数で暗殺になんか行かないしね。


それに、この八名それぞれがめちゃくちゃ強いし。

たぶんこの人数でも他の部隊に勝てちゃうんじゃないかな?と思うくらい。


「たーいちょ!今日も可愛いですねぇー!」


そんなことを考えながら訓練に戻る騎士達を眺めていると、唐突にムギュっとされる。


「ちょっとやめなさい、カレン。

私は子供じゃない」


抱き着いたまま、満面の笑みで私の頭を撫でている騎士、赤髪が鮮やかな部隊唯一の女性騎士であるカレンを睨み付ける。


「それはわかってますけど……。隊長が可愛いから仕方ないです!」


全く頭を撫でるのをやめる様子のないカレンは、女性騎士ということもあり、私と行動を共にすることが多い。

暗殺任務の時なんかは、ずっと一緒だ。

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