第12話

「おはよう、ジェイク。みんないる?」


「ええ!みんないますよ!呼んで来ます?」


にこやかにそう提案してくれるジェイクに、やんわりと首を振る。


「いや、いいよ。そのまま続けさせて。

あ、副隊長だけは呼んでくれるかな?」


「わかりました!ではすぐに……っと。

もう来たみたいっすね!」


踵を返そうとしたジェイクがすぐ立ち止まったので、私も釣られるように彼の見ている方へと顔を向ける。


すると、そこにいたのは若干白髪まじりの灰色の髪をきちっと纏めた壮年の騎士。

近衛の制服もビシッと着こなしている、頼れる我等が副隊長のヒギンスだ。


正直、見た目13歳くらいで身長も150センチと低い私より、ずっと隊長っぽく見えると思う。

ちなみに、拷問で素直になった公爵から詳しい話を聞き出してくれたのもヒギンスね。


「隊長、おはようございます」


「ヒギンス、おはよう」


柔らかく微笑みながら挨拶してくれるヒギンスに、私もなるべく優しく聞こえるように意識して返事を返す。

まぁ、相変わらず表情筋は壊れてるから無表情でめっちゃ無愛想に見えるだろうけどね。


「何か任務の話は来てる?」


「いえ、現在は特に何も」


「そっか。了解」


うちの部隊への任務は、王城へ常にいる訳ではない私へではなく、まずはヒギンスのところへ話が行くことが多い。

この前の公爵の時みたいに、緊急かつ重要だと私の屋敷に急使が来たりするけどね。


だから、王城へ出勤するとまずはヒギンスに任務についてを確認するのが毎回のお約束だ。


あとは、本来なら細かい事務仕事とかもあるんだけど、それはほとんどヒギンスが処理してくれている。


ちょっとだけ申し訳ない気もしなくはないんだけど、任務がない時はヒギンスも時間が余るらしいからちょうど良い時間潰しになるそうだ。

それに、私には細々とした事務仕事とかよくわかんないしね。


私がやるのはどうしても私のサインが必要な書類を確認してサインをすることと、ヒギンスが処理済みのやつを後から確認することだけ。


だから、みんなの訓練を見学しつつ処理済みの書類を何となく眺めて、その後に一時間か二時間くらいだけ自分の執務室でサインを書くだけで全部終わる。


しかも、これを三日に一度しかやってない。

なんて楽な仕事なんだろう。


任務に出ると何日も帰れなかったり、徹夜で拷問とかも普通にあるけど、あれも私には遊びみたいなもんだしね。

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