第3話 五十音のすれ違い

「マルさん、クレヨンなんか出してきて、何を書いているんですか?」


 家主さんのお名前です!


「『や・ぬ・し・さん』、上手に平仮名が書けていますね」


 ほんとうですか!うれしいです。


「平仮名って五十個たらずしかありませんが、組み合わせると

いろんな言葉が作り出せますよね」


 家主さん、ごはん、クレヨン? いっぱいありますね。


「作り出された言葉も、それを使う人たちがそれぞれの気持ちを込めることで

別の意味になったりするしね」


 あつい、さむい、大きい、小さい、いたい、大丈夫、

 ぜんぶ、ぼくと家主さんでは違うのですか?


「そうだね。違うね。

 私は転んだらすぐに痛いって言うけど、

 マルさんは痛いって言わずに、大丈夫ですって言うでしょ?

 同じように痛いはずなのにね。

 言葉はとても便利だけど、すれ違いの始まりなのかもしれないね」

 

 

 だから、話し『合う』んですね。

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