第1話 カエル場所

 ぼくの名前はマル。

 家主さんのご厚意で、少し前からこの家に居候しています。


 ぼくと家主さんの二人暮らしなので、のんびりした毎日ですが、世の中のことをなにも知らないぼくに、家主さんはいろんなことを教えてくれます。



 例えばですか・・・・?



 少し前のことですが、今日みたいな雨上がりの日、ぼくは小さな生き物に出くわして、びっくりしたことがありました。


 家主さん家主さん、あれはなんですか!


「どれどれ、ああ、あれはカエルさんだね」


 かえる?どこに帰るのですか?


「ふふ、帰るじゃなくて、名前がカエルさんなんですよ」


 へえ、カエルさんですか。

 どこかに帰りたいからカエルさんなんですか?


「さあ、どうだろうね。

 もしかしたら、帰りたいのかもしれないね」


 どこにですか?


「どこだろうね。カエルさんは話してくれないからわからないね」


 お話してくれないと、わからないのですか?

 わからないと、帰るお手伝いができないのに。


「話してくれないことを他人が理解するのは難しいね。

 でも、教えてほしいって伝え続けたら、いつか話してくれるかもしれませんよ。

 帰るお手伝いがしたいんだって気持ちが、カエルさんに伝わるようにね」



 お話してもらうって、むずかしいんですね。

 でも、カエルさんにお話ししてもらえるように伝え続けてみます!

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