花鳥風月という言葉も美しい
明鏡止水
第1話
昔は「明鏡は説明がうまい! わかりやすい!」と中学生の頃の同級生が褒めてくれた。
私が中学生の頃は「学校へ行こう!」という番組があって、V6が教室で出来そうなミニゲームをやっていた。そのゲームのルールを身振り手振りを交えながらだが友達に教えたら説明が上手だと褒めてもらえた。
その友達はテイルズというシリーズのゲームが好きでお絵描きもするけれど頭が良くて塾にも通っていて、吹奏楽部でクラリネットか何かの担当だった。
本当はサックスという楽器がやりたかったらしいけれどどうしてサックスがいいのかはわからない。
私は音楽が苦手で歌うのは好きだし、歌番組も好きだけれど演奏は音符も楽譜も分からずちんぷんかんぷんだった。
イジメでテニス部を辞め、クラスでもイジメられ、進級して新しいクラスに馴染めない私を、その友達は熱心に部活に誘ってくれた。塾だって他の中学校の奴らと話すと良いことがあると教えてくれた。
でも。我が家は父が長年勤めた会社を辞め、退職金を使い自営業を始めるも上手くいかなかったり。当時のブラック企業の多い運送業界で働いた時には過重な労働と運の悪さなのか事故にも遭い、収入は母のパート代や障がいのあるきょうだいの障害年金でまかなっていた時があったらしい。
ただでさえ引っ越してきて都会から来た割にはダサいとイジメられ、知ってる店や道や街全体が不良の先輩達とエンカウントする場所で。
お金もなくてご飯もなくて、父は車の運転が怖くなって、私が友達と遊びに行くと言うと父が五千円持たせようとしてくれた。そうした時、母が「お母さんの働いた金で遊びに行くの?」、「お母さん、体で稼ぐから……」と暗く半ばオカシクなって発言してきた。
それ以前にしまむらでダサい服しか買ってもらえないのでみんなとボーリングやお祭りに行った時、電車で二回遠出した時は浮いて。
何の縁のない見知らぬ都会の若いお兄さんに、「あの背の高いのだけダサい」と呟かれた。
誰も彼もダサいダサい、ダサい、ダサい。
外では見知らぬ人によくダサいと言われ、流し目で見られて、友達と一緒に撮ったプリクラは壊滅的なお絵描きセンスで可愛くできない。
もういやだった。
テニス部でいじめに遭っていた時から、毎日死にたかった。髪型も初めて美容室に連れて行ってもらえたのに、男子みたいな髪型にされた。
自分に主張が無いせいだった。お金がないから「わがまま」ではなく「個性」と「願い」を優しく育てたり大切にはできなかった。
私の欲しいものはダサくない自分ではなくダサいとイジメてくるいじめっ子が死んでくれてこの世から消えてくれる、平和な世界。
ヤンキーも一つのクラスに集めて1番怖い先生が見ればいい。勝手に真面目に素直になる奴もホントのワルは「矯正」も効かないで卒業しても学校に愛車で乗り入れてくる。
私が卒業した後、いじめで生徒がしんだ。
じぶんから。
亡くなった。
誰かが死ななきゃ終わらなかった。
死ぬほど辛かった。
みんな思ってるの?
やっと、だれか、死んでくれた……。
ばたばたと、電車の未成年の人身事故、飛び降り、伊吹文明様への手紙。やっとニュースが多く取り上げるようになった。
人一人追い込んで殺しておいて、39人のクラスメイトが社会に放たれて、中には成績優秀なくせにひでー性格で派手に人のカバンをチョークの粉で真っ白にして汚す奴。普段はおとなしいサッカー少年なフリして数日前の給食の牛乳と当日の牛乳をすり替えるやつがいた。
普段こんな言葉は使わないけれど。
「クソだらけ」だった。
どんな思いで、人が生きてきたかも知らないくせに。
どんな思いでこの地に引っ越してきたかも知らないくせに。
先生までクソだったときは、
「明鏡おまえ、疲れてるんだ!」
そう言って家庭訪問を引き上げて行った担任教師がいた。
疲れてるんだ?
初めて言われた。
こどもに、死にたい思いが口から出せない子供に、お前は疲れてるんだ、なんて、バカが言う言葉じゃないか。
大人同士で使ってろよ、そんな曖昧な言葉。
あの時して欲しかったのはいじめっ子を追い出す事と、更生させるとか、盗まれた物品の弁償と。
何より「人の心のわかるやつ」だよ……。
休み明けも、進級も、進学も、これからのことだって。
大人になれて、就職だって、結婚だって、おひとり様だって、
ころされずにいきていきたい。
花鳥風月という言葉も美しい 明鏡止水 @miuraharuma30
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