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随分と涼しくなり。ていうか、寒くなり。
十一月辺りだろうか。松葉杖もとうに無くなり、鬱々とした気分もなんとなく和らぐ頃。いつも通りクッソつまんねえなと呟きながら学校行って帰ってを繰り返していた私は、何かをする気にはなれなかった。あるとすれば、配信ごっこしていた元友人をイジることくらいか。
名前も知らないアプリで配信者ごっこしていた奴が居た。今は絶縁という形になってしまったが、一応小学校からの仲である。当時のネットコミュ症を不治の病として患っていた私にとっては、あのクソみたいな空気は少しばかり居心地が良かったのかもしれない。
勿論底辺配信者、てか配信者と呼んでいいものか。そんな小さなコミュニティで自身の創造物をひけらかすのは、とても楽しかった。当たり前だろう、その時の流行りを少し弄ればそれは笑いのタネになってくれるのだから。リアルに居場所を見出せなかった私がそこに定住したのは、必然だったかもしれない。
そんな環境で私が書いたのが『○○○○の異世界英雄譚』という、この配信者を異世界転生させてボコるという名目のゴミクソである。あまりにも過激すぎるパロディ、誰も分からないパロディ、そしてパロディ自体を伏線にするといった横暴すぎる展開に、もはや自分ですら何を書いてたのか分からなくなった。当然、パロディしすぎてカクヨムには載せられなかった。コイツもコイツで、別名義で活動をリスタートしたことにより、結果的には全てが無に帰したわけだが。
六万字か八万字か忘れたが、それくらいは書いた気がする。何故かしっかりと完結したし、伏線もしっかりと回収していた。だが、根本的な問題があった。
主人公のモデル本人が、一切読んでくれない。
まあ正直、私が勝手に始めたものだからどうこういう権利はなかった。だがやはり、どこか辛かった気がする。しかしまあリスナーは読んでくれてたし、なんなら続編まで書いてくれたのだから、私がこの謎の物体を書いた意味はあっただろう。書いた経験は無駄にはならない筈だ。
ただ、彼との絶縁に至る経緯はこれが原因ではない。もう誰も興味ないと思うが、細々と書き記させてもらう。色々あったのだ。めちゃくちゃくだらないと言われて仕舞えばそれまでだが、本当に色々あったのだ。
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