パックを剥いてカードをかき集めて、公園で戦ったり。プラスチックと鉄のベーゴマで戦ったり。

 男子小学生のあるべき姿は、それであると。私は疑わなかったし、結果的にその道を逸れる事はなかった。私がアイドルに憧れてカードを集める彼女らと肩を並べ、同じ話題で会話ができるのか。無論、自分のクソみたいなプライドが許さなかっただろう。現に、そうして己の感情を押しつぶしていたのだから。

 

 くだらない。実にくだらない。

 

 当時の世間の目は厳しかった。好き嫌いを異常と弾き飛ばす事に躊躇のない世界だった。私の選択は、間違っていない。時代が悪かっただけなのだ。

 

 先日、前述の女児アニメ十周年記念映画の再上映が行われていたので、観に行ってきた。観客はやはり私と同じくらいの年の女性が多かったものの、男性もそこそこといった具合。休日だったので、人はとても多かった。しかし、そんな我々を穢らわしいと眉を顰める人は居なかった。これが多様性にうるさく叫び続けた結果生まれた時代だろう。私は生きやすいので、この時代には感謝している。

 

 

 話がずれてしまった。

 

 要するに。私の中には当時、今の継続を欲する自分と、変化を求める自分の二人がいたのだ。

 もし自分が女だったら、周りの目を気にする事なく友人らと対等に昨日のアニメについて話ができただろうか。だが、そうなれば、私は今いる男友達と対等に遊べなくなるだろう。

 

 二人の自分を求めていた。

 しかし時が経ち、中学生にもなれば、そんな悩みもくだらない。共通の話題を作らなくとも疎外感なんて感じないくらいに、人間関係は固まっていった。当時は、男友達も女友達も、大体半々といったところか。

 

 そんな、かつて自分の中に存在していた悩みの種。そいつを少しいじって出来上がったのが、八雲日向という人物だった。

 日向は、女性の身体を持ちながら、男として桜御影という女性に恋をする。しかし、私がこの作品において書きたかったのはありがちなラブコメやラッキースケベだとかではない。こいつらは、エッセンスだった。

 自分が自分でないという悩み。うまくいかない人生だとか、そういったものを書きたかったのだ。

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