③
小学五年生。私は当時、伝説級の黒歴史として名高いあの作品の沼に落ちる。白いイヤホンを耳に当て、少しニヤッとして合図するフード被ったあいつらである。それに少なからず関わった、機械音声の歌姫にもズブズブと沼っていったわけだが。
始まりは、あのメモ帳のゲームである。世間の流行に遅れまいと、我が家にインターネット環境が揃ったことで、世界中の人々が描いた絵やアニメーションを見ることとなった。
そして、当時の世間から見ると少しディープな方へと。幸いなことに趣味の合う友人は多かったし、一つ下の後輩たちも続くように沼っていった。
シリアスな物語。簡単に人の命が終わってしまうような、不条理な物語。私の作風を現代ファンタジーへと変化させたのは、確実に、八月十五日を繰り返す彼らの影響だったと思う。
そんな私が書いた作品。今も、大学ノートに描かれた漫画を保存している。
『組織の日常』という、オムニバス形式の日常ストーリーである。人生を他者によって狂わされた人々が集められた組織が、世界中の犯罪と戦いつつもバカなことをして楽しそうに過ごしていく。そういった設定だった。
主人公は親に捨てられたという過去を持っていたらしい。悲壮感を無理に出そうとした、小学生の脳の限界だったのだろう。五十に近いキャラが居たが、途中で組織にいる理由を考えるのが面倒くさくなった記憶がある。ただ描きたいものだけを描いていた、そういったものだった。
当時は既に某メモ帳はネットサービス終了を眼前に控え、作られたストーリーを他者に見せる機会など無かったのだ。低学年の頃一緒になって漫画を描いた友にも、これはなんだか恥ずかしくて見せる気にはなれなかった。未だ続いていた己の創作はうちに秘め、一緒に妖怪と友達になるゲームばかりしていた記憶がある。
そうしたまま、小学生時代の創作は終わっていく。
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