第18話『八尺様』【怖さ★★☆】
「ポポポ……ポ……ポ……ポ」
2メートルを越える高身長の女性が機械音のような奇妙な声で叫びながら悠然と立っていた。
「くっ……全滅か……」
あまりの惨劇にフロラディーテは目を瞑る。
俺達がサンインチホウ村に着いたときにはもう、村は焼け野原になっていた。たぶん、生き残りはいないだろう。
「マスキ部隊長!あれが八尺様ですか?」
ハナが双剣を構える。
「いや、確かに身長は8尺(2メートル40センチ)ほどだが、八尺様は白か黒のワンピースを着て、赤色の帽子を被っている。奴は……オークジェネラルクイーンだ!」
オークジェネラルクイーンは災害級の魔物だ。すべてのオークを従えるオークの王。しかも、雌のクイーンは狂暴で討伐ランクも跳ね上がる。国家戦力で討伐するような個体だ。一度、引いて体制を整えた方が良いだろう。
「フローラ!ここは一度引いて――!!?」
彼女の方を振り向くと、彼女は虚ろな表情をしてブツブツ喋っていた。
「ポ……ポポポ……ポ」
「まずい!洗脳もできるのかよ!フローラ!ごめんよ!」
俺は懐からお札を取り出すと、彼女の額に貼り、呪力を込める。
「尊星護符!急急如律令!解!」
トン!トン!トン!
俺は呪力を彼女の頭、胸、腹に流し込む。
「ポ……――」
ドサッ!
彼女は気を失った!
「フローラを置いて逃げれないな!ハナ、なんとかあれを1分足止めできないか!?」
「あれをですか!?マスキ部隊長の頼みであれば!!ハナちゃんがんばります!」
ハナは腰にくくりつけていた袋から、何やら取り出す。
「ハナ、それは?」
「身体能力増加のS級呪具です!……ごくん!」
明らかに『指』のようなものを飲み込む。
あれは
なんにせよ、フローラが起きていたら、きっと気を失っていただろう……。
「力が沸いてく~る~!!チャージ完了!行ってきます――……」
ハナは音もなく消えた。
ガッ!ガキン!ガン!
ハナの見えない斬撃がオークジェネラルクイーンを足止めする。
「ボォ――!!ボボボボボォ――!!」
オーククジェネラルクイーンが怒り狂う!
バキィ!
「きゃあ!!」
適当に暴れた拳がハナに命中する!
「あはは……失敗しちゃいまし……た」
「ハナ!……よくやった!」
気絶するハナを見て、魔物に怒りの感情を抱く。ハナのお陰で準備は整った!
「待たせたな!急急如律令!開け!
ボゥゥ――……ン……。
オークジェネラルクイーンの上空に魔方陣が出現し、手のひらサイズの正方形の物体が現れる。
「俺の取って置きの封印アイテムだ!」
オークジェネラルクイーンが獄門疆に吸いせられる。
ジュルゥ――!!
「ボォ!!ボボボボ!!!ボボボボ!!!」
暴れながら抵抗する。
「くっ!封印の力が弱いか!?」
次の瞬間、俺の横を高速で駆ける人影があった……フローラだ!
ビュン!!
フローラは飛び上がり、オークジェネラルクイーンに向かって剣を振り下ろす!!
「神殺しの剣!ゴッドスレイヤー!!」
ズバァ――ン!!!!
「ボォ――!!!!!!!!!」
ギュルルルルルルル……スポン!
深傷を負ったオークジェネラルクイーンは獄門疆に吸い込まれた!!
「やった!!」
すごいぞ!たった3人で災害級の魔物を討伐した!呪具を使っただけの俺だが、ものすごい達成感を覚える。
「マスキ殿……すまぬ!どうやら正気を失っていたようだ。マスキ殿の力が体に流れてくるのを感じた。助けてくれたのだろう?」
フローラは戻ってくるなり俺に頭を下げる。
「ああ、呪力という魔力とは違う力を流した。勝手にやって、俺こそすまなかったな」
「マスキ殿……その……む、胸の辺りが熱いのだが……」
フローラは顔を真っ赤にして胸を両手で押さえる。
「あ!い、いや!!呪力は……頭とか胸とかに流すと循環が良くてな……はは……ごめんなさい」
俺は素直に胸を触ったことを謝った。
「マスキ部隊長~……フロラディーテ団長~……」
目を覚ましたハナが足を引きずりながら歩いてきた。
「ハナ!大丈夫か!?」
「はい!呪物のおかげで防御力もアガッタ……ケケケ……」
突然、ハナの頬っぺたに口が浮かび上がり「ケケケ……」と喋った!
「あ、これは呪物の後遺症で……ケケケ……すぐに治りますので……ケケケ……ご心配なく」
「いやぁぁぁぁぁぁ――!!!!!!!!!」
バタン!!
その様子を見たフローラは目を回して気絶した。
「ありゃ?」
不思議そうな顔を見せるハナ。
「こりゃ、しばらく起きそうもないな……やれやれ」
俺は気絶したフローラを町までおんぶして帰る羽目になった……。できるだけ、あまり触らないように気をつけながら……。
「んん……」
おんぶされているフローラが呟く。
「おや?団長!セクハラですか!?」
ニヤニヤするハナに、俺は「勘弁してくれ……」と呟いた……。
<つづく!>
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