第17話『暗殺者』【怖さ★☆☆】
「フロラディーテ団長!マスキ部隊長!よろしくお願いします!トイレット・スリーノック・ハナフォサンと申します!ハナと呼んでください!」
元気よく挨拶をした娘は、オカッパ頭で赤いスカートを履いた可愛らしい女の子で、所属は双剣ギルドに属しているらしい。
「えっと、どういうこと?」
フロラディーテに答えを求む。
「どうやら、八尺様は子供をターゲットにして襲うそうだ。かといって、子供を囮に使うわけにはいかない。だから、ギルドに相談して、腕のある子供っぽい子を手配したら彼女が抜擢されたというわけだ。なんせ、騎士団は屈強な男しかいないからな……」
「これでも双剣レベル32!B級ハンターでっす!ちなみにおっぱいもBでっす!」
ハナは「えっへん!」と胸を張る。
おお……苦手なタイプだ……。俺はギルドに属してないので、B級がどれ程の腕前なのかはわからないが、双剣をお手玉のようにして遊んでいるハナを見ると、俺よりは役に立つことは容易に想像できる。あと、たぶんだけどバストサイズはAだな……言えないけど。
「ま、マスキ殿……わ、私はS級なのだが、お、お、おっぱいはFなんだ……ハッ!私は何を言って!!?」
フロラディーテが勝手に喋って、勝手に照れて、勝手にうずくまっているが、見ないでおいてあげよう……。
「ハナ、俺は肩書きは部隊長だが、戦闘はからきしダメでな。ちょっとだけ、心霊現象に詳しいだけだから、あまり期待せんでくれ」
俺も軽く自己紹介をしておく。
「またまた~魔術師団との大将戦を見ました!見事な魔法(?)というか技(?)でした!見たことがない……呪いのような?とにかく素敵でした!」
ハナは目をキラキラさせて俺を見る。転生前に覚えた陰陽道なのだが、呪力は魔法と違うので、この世界では使わないようにしていた。そういえば、決勝の相手、陰陽道の技のようだったが……それにどこか懐かしい感じが……ま、気のせいか。
「私、呪物とか集めるの好きなのです!もし宜しければ今度、呪いの術などあれば教えてください!」
フロラディーテが俺とハナの間に割り込んで叫ぶ。
「ダメだ!」
ハナは俺に質問をしているのに、何故かフロラディーテが拒否をする。
「あ、いや……マスキ殿は忙しいのだ!ハナフォサン、任務は遊びじゃないのだぞ!」
「はい!フロラディーテ団長!気を引き締めて勤めます!」
ハナはフロラディーテに向かって敬礼をした。
「では、対象の『八尺様』とやらを討伐しに行くか。確か、サンインチホウ村の辺りで目撃されたんだよな。行ってみるか」
俺たちは数キロ先の村に向かって歩きだした。
「まずいわね。オークよ」
フロラディーテが木に身を隠し様子を伺う。
オークは小降りなゴブリンの3倍ほどの体格で、力も強い。C級の4人のパーティーでも苦戦するレベルだ。
「フロラディーテ団長!いい機会です。私にやらせて下さい!」
ハナが手を真っ直ぐに上げる。
「いいけど、相手は強敵よ。危なくなったらすぐに加勢するわね」
「ありがとうございます!がんばります!」
フロラディーテの許可をもらってハナは双剣を構える。
「行ってきます――――……」
次の瞬間、ハナの姿が消えた!
ドサッ!
「――え!!?」
俺は目を疑った。一瞬の間にハナはオークの背後に回り込み、首に双剣を突き立てた!
「ハナは……アサシンのようですね」
フロラディーテでさえも、目で追えなかったようだ。双剣の上位職『アサシン』それは、暗殺者を意味し、音もなく相手に死を届ける隠密部隊。恐らくハナの実力はA級もしくはフロラディーテと同じS級なのではないだろうか?オークを一人で一瞬で葬る実力者がB級のわけがない。
「グガガ……」
オークが悲痛な叫び声を上げる。どうやら、まだ息があるようだ。
「……あら?」
急にハナの目の焦点が合わなくなり、不気味な雰囲気を醸し出す。
ザクザクザクザク!
ハナはオークに双剣を数十回刺す。
「ダメでしょ!潔く死ななきゃ!せっかくフロラディーテ団長と!マスキ部隊長に!いいところを!見せようと思ったのに!もう!もう!もう!」
「……ハナ?」
俺はブツブツ言いながらオークに双剣を刺し続けるハナに声をかける。
ザクザクザクザク!ザクザクザクザク!
「ねぇ?誰が息をしていいって言ったの?ねぇ!誰?誰?誰?誰?誰?誰?誰?誰?誰?誰?誰?ねぇ!誰!?」
「……ハナフォサン?」
フロラディーテは、もはや怖がって俺の後ろに隠れながら、ハナに声をかける。
ザク!ザク!ザク!ザク!ザク!ザク!ザク!ザク!ザク!ザク!ザク!ザク!ザク!ザク!ザク!ザク!ザク!ザク!ザク!ザク!
「グアアァァァァ………………………………」
「早く死んで!早く死んで!早く死んで!早く!早く!早く!早く!早く!早く!早く!早く!早く!早く!早く!……あ、もう、死んでる」
ハナは血だらけの双剣を持ちながら、こちらへゆっくりと歩いてきた。
ヒタヒタヒタヒタヒタヒタ……。
「えへへ!倒すのに時間かかってしまいました!いつもはもっとスムーズに殺……倒すのですが、お二人に見られて緊張しちゃったかもです!次はもっと上手くやるので期待してください!えへ!」
血の滴る双剣を笑顔で持ちながら、ウィンクとピースをするハナ。
「ひぃ!!」
フロラディーテが俺の後ろでビクビク震えている。無理もない。
「あ、ああ!大した実力だったぞ……。よ、よろしくな!!」
俺は満面の作り笑いで彼女の機嫌を損ねないように注意した。彼女がB級止まりの理由がわかったような気がした。性格に難があるからだな……。
<つづく!>
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