第16話『消えた花嫁』【怖さ★★☆】

 【消えた花嫁】

 祖母の家で結婚式を開いた新郎新婦と参列者たちが式の余興で『かくれんぼ』をしたんだ。


「もう、い~よ」


「あれ?花嫁が見つからない……」


「お~い!どこに隠れた~!!出てこ~い!!」


 途方に暮れる新婦。花嫁がいつになっても見つからず、異変に気付いた式の参列者たちも家中を必死に探し回ったが、結局花嫁は出てこなかった……。

 失踪から数年後、花嫁の妹が結婚することになり屋根裏部屋にある衣装を借りようと大きなトランクを開けたところ――。


「きゃぁ――!!お、お姉ちゃん……」


 中にあったのは花嫁衣裳を着た姉の遺体だった――。


「ひぃぃぃ!!!!!!!」


 怪談小屋にいつものように悲鳴が響き渡る。


「花嫁は、かくれんぼでトランクに隠れた時に誤って鍵がかかり、出られなくなってしまったんだね。はい!本日はお仕舞い!さぁ~帰ろうね~」

 俺はいつも通り、終わるやいなや観客を出口に誘導する。


「ねぇ~ねぇ~マスキは剣聖様といつ結婚するの~!?」

 子供の戯れ言に部屋の隅で体育座りをしていたフロラディーテが驚く!


「なぁ!!」

 大声を出してこちらを向いた後、すぐにフードを深く被り直す。


「だって、この前の模擬戦で何度も抱き合っていたから、てっきり恋人なのかと?」

 あれは、彼女が驚く度に俺に抱きつくからで……。


「こらこら、大人をからかうもんじゃないぞ~。剣聖様は忙しいんだ。遊んでたら、この町は魔物だらけになっちゃうぞ~」


「え~!魔物だらけやだ~!」


「やだね~。さ~帰ろうね~」

 俺は適当に厄介払いをする。


「……」


 さて、問題は部屋の隅で体育座りをしたまま固まっている剣聖様だ……。


 俺は彼女のそばに近づく。


「お~い、忙しい剣聖様~今日はお仕舞いだよ~」


 バッ!!

 勢いよくこちらを向いた彼女は、フードが取れて耳まで真っ赤な顔を見せる。


「婚姻など!まだ早い!!」


「お、おう……」

 いきなり大声を出され、ビックリする。「まだ」という部分が引っ掛かるが、俺は転生前から数えると結構な年齢になるので、恋だの愛だのだいぶ疎くなっているのだと思う。


「実は任務を持ってきたのだ!けけけ、結婚の話しはおいおいするとして……」


(おいおいするの?)

 俺は慌てて話すフロラディーテを見て困惑する。


「と、とにかく!!次の任務は身長2メートル以上の女の化け物「八尺さま」の討伐だ!!支度ができたら騎士団総本部まで来てくれ!!」

 フードを被り直し、真っ赤になった耳を出しながらフロラディーテは足早に怪談小屋を出ていった。


「ちょっと……可愛かったな」

 俺は久しぶりに胸がチクンと痛んだ。


 <つづく!>

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