エースナンバー

天見レイ

試合直前_あの夏のこと

 嫌なくらい晴れ渡った青い空、ジリジリと照りつける太陽、そして、マウンドに立ち、構える自分。

 この日のことはよく覚えている。去年の夏の少年野球大会、地区大会決勝、同点で迎えた、10回裏タイブレーク。5回からマウンドに立ち、俺は、ここまで無安打で抑えている。一応、自分の技術に自信はあったし、打たれるわけがないとも思っていた。

 だからこそ、このあと打たれたことは、強く心に刻まれている。

 2ストライクまで追い込んだ状況から、内角低めに決まる120キロのストレート。これで俺は、数々の打者を抑えてきた。

 だが、今回は違った。

 その位置に決まったストレートを、容赦なくレフト線へ持っていかれた。

 自分の球が悪かったわけではない。むしろこれまでの好投でボルテージが上がりきっていた状況であり、最高の球だったと思っている。

 当時は悔しかったが、同時に少し、清々しい気分でもあった。正面から堂々勝負して、負けたのだから、悔いは無い。そう思っていた。

 そうして月日が立ち、春、俺、桐原きりはら聖良せらは中学生になった。


 

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エースナンバー 天見レイ @rei-amami

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